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推し活最大のイベントってやっぱり、聖地巡礼ですかね。

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 遠山玄英って本当は二人いて、俺はこっちの玄英に騙されてるんじゃないか?
……そう思ってしまうくらいこの人、感情の起伏とギャップが大き過ぎて時々扱いづらい。Mのくせにメガトン級の甘えん坊だし。

 玄英は頭だけ持ち上げて俺を見上げると、全年齢の乙女がもれなく恋に落ちてしまいそうな天真爛漫かつ蠱惑こわく的な笑みを浮かべた。

「めちゃくちゃにして?そしたらちゃんと話を聞く」

ーーこ、こいつ…… 

「しない。離れろ」

 しかも知能犯で確信犯だし。これは絶対俺のウィークポイントを狙ってやってる奴だ。

 無防備にはしゃぐ玄英に一瞬ほだされかかったが、どうにか保っていた怒りの感情が辛うじて勝ったーー英雄かよ、俺。
 人間の感情エネルギーで性欲よりデカいのが唯一、怒りだって言うからな。

「座れ。難しい話じゃないからすぐ終わる」

 俺は毅然として、俺の側ではなく対面側のソファを顎で指した。

「新しいプレイ?」

「そう思って我慢しとけ」

 キレたら負けだ。玄英はするすると俺の足元に降りると床の上にちょこんと正座したーーそういう意味じゃあねえんだがーーまあいいか。

「話って何?」

 俺は俺なりにこいつの扱いにどうにか慣れつつある(と信じたい)

「あんたの会社、研修で俺の実家に来るって聞いたんだけど」

 あくまでフラットに、事務的に話を切り出す。

「そう!楽しみだなぁ。案内よろしくね」

 玄英は悪びれることなく嬉しそうに笑った。

「いや俺、会社で今日、初めて聞いたんだけど……」

「えっ、そうなの?」

 玄英は意外そうに目を丸くした。

「いや、それはどうでもいいんだ。こっちの単なる事務連絡の不手際だから。ただ普通、こういう話って先に俺に相談してくれるもんじゃないの?」

「……」

 押し黙る玄英。これはついウッカリ、などではなく確信犯っぽいな。そもそもこの人がウッカリするとこなんて見た事ないし。

「確かにお互い、仕事とプライベートは極力分ける事にしてるし、ましてやあんたの会社のことに口挟むつもりなんか一切ないけどさ」

「ダメだった?」

 わざわざ長身を屈め、潤んだ瞳で見上げられたって動じるもんかーー胸元緩め過ぎだし。あざと過ぎんぞ、くそ(可愛い)

「恒星の仕事にも家にも悪い話じゃないと思うんだよね。見学して現場を見せてもらった上で、青葉造園さんに業務用資材のモニターをお願いしたいとも思ってるし。それに……」

「わかってて論点を反らすなーっ!」

 平手でテーブルを叩いたら玄英は「ひゃっ」と飛び上がった。

「ダメだったとかあぶく立った煮え立ったとか、そういう話をしてんじゃねえんだよ!」

 俺は手のひらの激痛を押し殺して叫んだ。マホガニーのアンティークだかなんだかの馬鹿みたいに頑丈なテーブルだ。骨にヒビ入ったかもしれん……叩くんじゃなかった。

「何で今度の土曜に俺の実家に行くって、直接言わねえんだよ!ホムパのその場のノリレベルの話を、何しれっとオフィシャルな話にしてんだよ?そもそもあんたあの時、自分も行きたいなんて言わなかったじゃん!」

 落ち着いて話し合ってさっくりと終わらせるつもりだったのに、勢いに乗ってついまくし立ててしまった。

「……ええとだって僕、その場にいなかったし」

 そうだったっけ?

「僕も行きたいなんて言ったら、恒星、嫌がるかなって思って……」

 玄英はすっかりしゅんとなってしまった。

「色々理屈はつけたけど……僕、単純に好きな人の生まれ育った場所が見てみたいんだよ。恒星を育ててくれたご家族にも会って見たかったし……」

 玄英はうつむきながら、訥々とつとつと言い訳を始めた。

 ううっ……可憐だ(図体デカいけど) 

「この国で、同性のパートナーを家族に紹介しづらい事情は僕もよくわかってる。仕事絡みにでもしなきゃ、そんな機会なんて永遠に訪れないだろうと思って……」 

 何それ(きゅん)

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