56 / 144
6
玄英のハートはノンストップモーション
しおりを挟む
そんな理由で、見切り発車の勇み足ってか。外向きにはいつも自信たっぷりでソツも隙も一ミリたりとも見せなくて、もっと小器用な人だと思ってたのに……
「恒星が嫌なら、何か理由をつけてキャンセルするよ。急な話を了解してくれた先方には、迷惑かけちゃうけど……」
世間でこれを可憐と言わないのなら、ウィキ何ちゃらやカンチャラ辞苑の方が間違っている。
さすがの俺もいたたまれなくなってくる。前言撤回でなし崩し的に抱きしめて押し倒して、じゃなかった世界遺産級の御尊顔ごとこのまま蹴り倒して全身舐め回したいーーそんな衝動を、辛うじて堪えた。
「あ……あのな?嫌とかじゃあねえんだよ?ただ、びっくりしただけっていうか……俺の短気な質はよく知ってんだろ。あんたのことは、いつかはちゃんと家のモンに話したいし紹介したいと思ってる」
俺は照れ臭くなって頭を掻いた。
「えっ……?」
「だけど、今じゃねえなって思ってるだけ。
うちの連中、基本的にゴリゴリ価値観昭和の人らだから。玄英に嫌な思いさせんのも嫌だし、かと言ってただの『友人』とか『取引先の人』して紹介するのも違うと思うし……」
ここまで言うつもりなかったんだが……ホント勘弁してくれ。
「僕のこと、そこまで真剣に考えてくれてたの……!」
ぱああ、と擬音が聞こえてきそうなくらいの、日の出とともに一斉に起床した向日葵畑が見えた。そのくらい玄英の顔が明るくなったーーうっわ。今俺絶対今、顔コクリコ畑だわ。
「いやまあ……あんたにとっちゃ大きなお世話かもしれないんだけど。長くつき合うんならそういうこともあるかと……」
「大好き!ご主人様!」
玄英が声を震わせ、立ち上がった反動で飛びかかってきた。横倒しに押し倒された勢いが余って二人ともド派手な音を立ててソファから転げ落ちた。
「痛っ!何しやがんだ!」
「だ、だ、だってまさか、ご主人様から『結婚しよう』なんて言われるなんて思ってなくて……夢みたい!」
「は?話聞け!何をどう聞いたらそうなるんだ!この馬鹿犬!」
フローリングとショットガン・マリッジさせといて何言ってやがる。頭でも打ったか。
玄英は俺を撫でくり回しながら夢見心地で続けた。
「ツン専門のご主人様基準のそれってもう、世間的には『結婚しよう』って事じゃないですか!」
……え、そ、そうなの……か?
「んな訳ねえだろ!」
うっかり納得しかけたじゃねえか。危ねえ……
「だいたい俺ら、日本の法律じゃ結婚は無理で……」
「海外でならいくらでも正式に結婚できますよ」
「さすがに『いくらでも』する気はねえわ。つか、話の論点……」
「ああ、早く気が変わらないうちに、眠りについたあなたをプライベートジェットに押し込めて手続きしてしまいたい」
「拉致誘拐密出入国犯め!婚姻届出す前に強制送還されて前科持ちだぞ」
せめてポケットに詰め込むくらいにしとけよ。可愛げねえクソセレブ。
「式は両方白のタキシードがスタンダードなんでしょうが、恒星は和服も似合うでしょうね。現地で羽織袴が調達できるといいんだけど……」
おおい、戻ってこーい。馬鹿ロミオ。
「初夜には脱がしっこしましょうね」
「ストップ!その辺で止まれ、この変態!どさくさに紛れて脱がそうとじゃねえ!」
玄英に頭突きを喰らわせて、どうにか起き直ることができた。
「痛った……酷い」
「俺だって痛えわ!」
「僕、前頭葉が商売道具なのに酷い。ご主人様、ずいぶん斜め横のプレイに目覚め……」
「まだ話は続いてんだよ!」
ソファに戻り剥がされかけた服を直す俺と、恋人座りでめげずにくっついてくる玄英。
「手だけ繋いでていい?」
「……おう」
「恒星が嫌なら、何か理由をつけてキャンセルするよ。急な話を了解してくれた先方には、迷惑かけちゃうけど……」
世間でこれを可憐と言わないのなら、ウィキ何ちゃらやカンチャラ辞苑の方が間違っている。
さすがの俺もいたたまれなくなってくる。前言撤回でなし崩し的に抱きしめて押し倒して、じゃなかった世界遺産級の御尊顔ごとこのまま蹴り倒して全身舐め回したいーーそんな衝動を、辛うじて堪えた。
「あ……あのな?嫌とかじゃあねえんだよ?ただ、びっくりしただけっていうか……俺の短気な質はよく知ってんだろ。あんたのことは、いつかはちゃんと家のモンに話したいし紹介したいと思ってる」
俺は照れ臭くなって頭を掻いた。
「えっ……?」
「だけど、今じゃねえなって思ってるだけ。
うちの連中、基本的にゴリゴリ価値観昭和の人らだから。玄英に嫌な思いさせんのも嫌だし、かと言ってただの『友人』とか『取引先の人』して紹介するのも違うと思うし……」
ここまで言うつもりなかったんだが……ホント勘弁してくれ。
「僕のこと、そこまで真剣に考えてくれてたの……!」
ぱああ、と擬音が聞こえてきそうなくらいの、日の出とともに一斉に起床した向日葵畑が見えた。そのくらい玄英の顔が明るくなったーーうっわ。今俺絶対今、顔コクリコ畑だわ。
「いやまあ……あんたにとっちゃ大きなお世話かもしれないんだけど。長くつき合うんならそういうこともあるかと……」
「大好き!ご主人様!」
玄英が声を震わせ、立ち上がった反動で飛びかかってきた。横倒しに押し倒された勢いが余って二人ともド派手な音を立ててソファから転げ落ちた。
「痛っ!何しやがんだ!」
「だ、だ、だってまさか、ご主人様から『結婚しよう』なんて言われるなんて思ってなくて……夢みたい!」
「は?話聞け!何をどう聞いたらそうなるんだ!この馬鹿犬!」
フローリングとショットガン・マリッジさせといて何言ってやがる。頭でも打ったか。
玄英は俺を撫でくり回しながら夢見心地で続けた。
「ツン専門のご主人様基準のそれってもう、世間的には『結婚しよう』って事じゃないですか!」
……え、そ、そうなの……か?
「んな訳ねえだろ!」
うっかり納得しかけたじゃねえか。危ねえ……
「だいたい俺ら、日本の法律じゃ結婚は無理で……」
「海外でならいくらでも正式に結婚できますよ」
「さすがに『いくらでも』する気はねえわ。つか、話の論点……」
「ああ、早く気が変わらないうちに、眠りについたあなたをプライベートジェットに押し込めて手続きしてしまいたい」
「拉致誘拐密出入国犯め!婚姻届出す前に強制送還されて前科持ちだぞ」
せめてポケットに詰め込むくらいにしとけよ。可愛げねえクソセレブ。
「式は両方白のタキシードがスタンダードなんでしょうが、恒星は和服も似合うでしょうね。現地で羽織袴が調達できるといいんだけど……」
おおい、戻ってこーい。馬鹿ロミオ。
「初夜には脱がしっこしましょうね」
「ストップ!その辺で止まれ、この変態!どさくさに紛れて脱がそうとじゃねえ!」
玄英に頭突きを喰らわせて、どうにか起き直ることができた。
「痛った……酷い」
「俺だって痛えわ!」
「僕、前頭葉が商売道具なのに酷い。ご主人様、ずいぶん斜め横のプレイに目覚め……」
「まだ話は続いてんだよ!」
ソファに戻り剥がされかけた服を直す俺と、恋人座りでめげずにくっついてくる玄英。
「手だけ繋いでていい?」
「……おう」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~
みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。
成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪
イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

僕の部下がかわいくて仕方ない
まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる