51 / 144
6
俺の玄英が全てを凌駕するーー新自由主義やAIさえも
しおりを挟む
「地球に優しい」が商品の付加価値として市民権を得てかなり久しい。近年ではSDGs(持続可能な開発目標)も一般名詞として市民権を得てきた。
便利で快適な大量消費社会を支えてきたプラスチックやポリエステルなどの石油製品も今、生分解性原料やリサイクル素材への転換が求められている。
だが、紛争の長期化や経済競争優先の元、地球規模での取り組みは追いつかず、気候変動やマイクロプラスチック汚染問題は年々深刻になりつつある。
だがここに画期的な技術がまた一つ誕生した。
日本とイギリスのクォーターである天才科学者、遠山玄英が学生時代に発明した画期的な素材「D'sアース」シリーズである。
エコ素材の抱えがちな使用感や耐久性、特にコスト面の課題をほぼクリアしたこの素材は、彼が自ら起業した「D’s Theory」社により爆発的に普及した。
彼は次いで化石賞受賞と先進国きってのプラスチック消費大国の不名誉を持ち、自らのルーツでもある日本に新支社を設立、自ら支社長を兼任しながら国産の間伐材や竹素材に再生ペットボトルを掛け合わせた新素材「D-クロエ」を開発した。
この度、首都圏を中心に園芸・緑化用品の製造・販売を手がける「ガルテン松山」と独占使用契約を結び、使用後自然に還る家庭園芸用品のシリーズを全国的に売り出す事となった。この試みに業界内外で注目が集まっているーー
「読んだか?『日本園芸新聞』の記事。トップに取り上げられたんだぞ」
毎度ハイテンション堀田がさらにテンション高く、件の新聞と雑誌を片手に油を売りに、俺のところに顔を出した。
「『月刊私の庭』も大きく取り上げてる。『日本園芸新聞』は業界新聞だがこっちは趣味の一般誌だからな。一番バズってんのはこれ」
「『ウーマン・エコノミスト』?」
「そう。キャリア志向の女性がメインターゲットの経済誌だ。今月号に遠山社長のインタビュー記事が写真入りで載ってるんだ。こんなの初めて自腹で買ったぞ」
「『ウーマン・エコノミスト』なら私もWEB版で毎月読んでるわ」
遠山社長のオーラにアテられない希少な最終兵器系女子、水島課長が会話に加わった。
「知ってます。SNSでトレンド入りしてました!」
「あの見た目とハイスペックぶりは男でも憧れます」
「日本生まれ日本育ちじゃ、なかなかああいう人は現れませんよね」
俺も諸般の事情から精一杯、興味ない風を装ってはいるものの、内心はワールドシリーズで大谷優勝!ばりのハイテンションだ(←ドジャースな)
ーー『ウーマン・エコノミスト』なんて発売日にダッシュで書店巡りして買ったわ!とかめっちゃメジャー誌じゃん!
ーーそれからそれから、今朝、日本の環境保護団体がインタビューした記事がアップされたんだ!マイナー記事だからきっとこれからバズるんだろうけど……誰か見つけてないのかな。ヤベェ、めっちゃ教えたい!
俺は今、玄英の「隠れ推し活」に余念がない。目下の悩みは一番の情報源がすぐ身近にいるのに、彼は何の取材を受けてどこに載るとか、いちいちそういう事を俺に言わない事だ。
時々玄英が玄英自身に全く関心が無いように思える事があるーー俺にはそれが気がかりだ。
いや、彼は心身ともに健康で、それを維持する努力もしているし身だしなみにも隙が無い。が、それはあくまで自分の仕事の為であって、それ以上ではないーー上手くは言えないのだが、そんな感じがする事がある。
が、それも俺の考え過ぎで、彼にとってはあくまで「会社の広報」という仕事の一環に過ぎないのかもしれない。俺達はお互い、プライベートで仕事の話はしない。
あれだけの人なのだから玄英が世間に注目されて当然だし、好評価なのは素直に嬉しい。だが、ただでさえ違う世界の人がますます遠い存在になってしまいそうで、日陰の身の一般ピープルとしてはやや複雑だ。
便利で快適な大量消費社会を支えてきたプラスチックやポリエステルなどの石油製品も今、生分解性原料やリサイクル素材への転換が求められている。
だが、紛争の長期化や経済競争優先の元、地球規模での取り組みは追いつかず、気候変動やマイクロプラスチック汚染問題は年々深刻になりつつある。
だがここに画期的な技術がまた一つ誕生した。
日本とイギリスのクォーターである天才科学者、遠山玄英が学生時代に発明した画期的な素材「D'sアース」シリーズである。
エコ素材の抱えがちな使用感や耐久性、特にコスト面の課題をほぼクリアしたこの素材は、彼が自ら起業した「D’s Theory」社により爆発的に普及した。
彼は次いで化石賞受賞と先進国きってのプラスチック消費大国の不名誉を持ち、自らのルーツでもある日本に新支社を設立、自ら支社長を兼任しながら国産の間伐材や竹素材に再生ペットボトルを掛け合わせた新素材「D-クロエ」を開発した。
この度、首都圏を中心に園芸・緑化用品の製造・販売を手がける「ガルテン松山」と独占使用契約を結び、使用後自然に還る家庭園芸用品のシリーズを全国的に売り出す事となった。この試みに業界内外で注目が集まっているーー
「読んだか?『日本園芸新聞』の記事。トップに取り上げられたんだぞ」
毎度ハイテンション堀田がさらにテンション高く、件の新聞と雑誌を片手に油を売りに、俺のところに顔を出した。
「『月刊私の庭』も大きく取り上げてる。『日本園芸新聞』は業界新聞だがこっちは趣味の一般誌だからな。一番バズってんのはこれ」
「『ウーマン・エコノミスト』?」
「そう。キャリア志向の女性がメインターゲットの経済誌だ。今月号に遠山社長のインタビュー記事が写真入りで載ってるんだ。こんなの初めて自腹で買ったぞ」
「『ウーマン・エコノミスト』なら私もWEB版で毎月読んでるわ」
遠山社長のオーラにアテられない希少な最終兵器系女子、水島課長が会話に加わった。
「知ってます。SNSでトレンド入りしてました!」
「あの見た目とハイスペックぶりは男でも憧れます」
「日本生まれ日本育ちじゃ、なかなかああいう人は現れませんよね」
俺も諸般の事情から精一杯、興味ない風を装ってはいるものの、内心はワールドシリーズで大谷優勝!ばりのハイテンションだ(←ドジャースな)
ーー『ウーマン・エコノミスト』なんて発売日にダッシュで書店巡りして買ったわ!とかめっちゃメジャー誌じゃん!
ーーそれからそれから、今朝、日本の環境保護団体がインタビューした記事がアップされたんだ!マイナー記事だからきっとこれからバズるんだろうけど……誰か見つけてないのかな。ヤベェ、めっちゃ教えたい!
俺は今、玄英の「隠れ推し活」に余念がない。目下の悩みは一番の情報源がすぐ身近にいるのに、彼は何の取材を受けてどこに載るとか、いちいちそういう事を俺に言わない事だ。
時々玄英が玄英自身に全く関心が無いように思える事があるーー俺にはそれが気がかりだ。
いや、彼は心身ともに健康で、それを維持する努力もしているし身だしなみにも隙が無い。が、それはあくまで自分の仕事の為であって、それ以上ではないーー上手くは言えないのだが、そんな感じがする事がある。
が、それも俺の考え過ぎで、彼にとってはあくまで「会社の広報」という仕事の一環に過ぎないのかもしれない。俺達はお互い、プライベートで仕事の話はしない。
あれだけの人なのだから玄英が世間に注目されて当然だし、好評価なのは素直に嬉しい。だが、ただでさえ違う世界の人がますます遠い存在になってしまいそうで、日陰の身の一般ピープルとしてはやや複雑だ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
撮り残した幸せ
海棠 楓
BL
その男は、ただ恋がしたかった。生涯最後の恋を。
求められることも欲されることもなくなってしまったアラフィフが、最後の恋だと意気込んでマッチングアプリで出会ったのは、二回り以上年下の青年だった。
歳を重ねてしまった故に素直になれない、臆病になってしまう複雑な心情を抱えながらも、二人はある共通の趣味を通じて当初の目的とは異なる関係を築いていく。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【BL】はるおみ先輩はトコトン押しに弱い!
三崎こはく
BL
サラリーマンの赤根春臣(あかね はるおみ)は、決断力がなく人生流されがち。仕事はへっぽこ、飲み会では酔い潰れてばかり、
果ては29歳の誕生日に彼女にフラれてしまうというダメっぷり。
ある飲み会の夜。酔っ払った春臣はイケメンの後輩・白浜律希(しらはま りつき)と身体の関係を持ってしまう。
大変なことをしてしまったと焦る春臣。
しかしその夜以降、律希はやたらグイグイ来るように――?
イケメンワンコ後輩×押しに弱いダメリーマン★☆軽快オフィスラブ♪
※別サイトにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる