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俺の玄英が全てを凌駕するーー新自由主義やAIさえも
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「地球に優しい」が商品の付加価値として市民権を得てかなり久しい。近年ではSDGs(持続可能な開発目標)も一般名詞として市民権を得てきた。
便利で快適な大量消費社会を支えてきたプラスチックやポリエステルなどの石油製品も今、生分解性原料やリサイクル素材への転換が求められている。
だが、紛争の長期化や経済競争優先の元、地球規模での取り組みは追いつかず、気候変動やマイクロプラスチック汚染問題は年々深刻になりつつある。
だがここに画期的な技術がまた一つ誕生した。
日本とイギリスのクォーターである天才科学者、遠山玄英が学生時代に発明した画期的な素材「D'sアース」シリーズである。
エコ素材の抱えがちな使用感や耐久性、特にコスト面の課題をほぼクリアしたこの素材は、彼が自ら起業した「D’s Theory」社により爆発的に普及した。
彼は次いで化石賞受賞と先進国きってのプラスチック消費大国の不名誉を持ち、自らのルーツでもある日本に新支社を設立、自ら支社長を兼任しながら国産の間伐材や竹素材に再生ペットボトルを掛け合わせた新素材「D-クロエ」を開発した。
この度、首都圏を中心に園芸・緑化用品の製造・販売を手がける「ガルテン松山」と独占使用契約を結び、使用後自然に還る家庭園芸用品のシリーズを全国的に売り出す事となった。この試みに業界内外で注目が集まっているーー
「読んだか?『日本園芸新聞』の記事。トップに取り上げられたんだぞ」
毎度ハイテンション堀田がさらにテンション高く、件の新聞と雑誌を片手に油を売りに、俺のところに顔を出した。
「『月刊私の庭』も大きく取り上げてる。『日本園芸新聞』は業界新聞だがこっちは趣味の一般誌だからな。一番バズってんのはこれ」
「『ウーマン・エコノミスト』?」
「そう。キャリア志向の女性がメインターゲットの経済誌だ。今月号に遠山社長のインタビュー記事が写真入りで載ってるんだ。こんなの初めて自腹で買ったぞ」
「『ウーマン・エコノミスト』なら私もWEB版で毎月読んでるわ」
遠山社長のオーラにアテられない希少な最終兵器系女子、水島課長が会話に加わった。
「知ってます。SNSでトレンド入りしてました!」
「あの見た目とハイスペックぶりは男でも憧れます」
「日本生まれ日本育ちじゃ、なかなかああいう人は現れませんよね」
俺も諸般の事情から精一杯、興味ない風を装ってはいるものの、内心はワールドシリーズで大谷優勝!ばりのハイテンションだ(←ドジャースな)
ーー『ウーマン・エコノミスト』なんて発売日にダッシュで書店巡りして買ったわ!とかめっちゃメジャー誌じゃん!
ーーそれからそれから、今朝、日本の環境保護団体がインタビューした記事がアップされたんだ!マイナー記事だからきっとこれからバズるんだろうけど……誰か見つけてないのかな。ヤベェ、めっちゃ教えたい!
俺は今、玄英の「隠れ推し活」に余念がない。目下の悩みは一番の情報源がすぐ身近にいるのに、彼は何の取材を受けてどこに載るとか、いちいちそういう事を俺に言わない事だ。
時々玄英が玄英自身に全く関心が無いように思える事があるーー俺にはそれが気がかりだ。
いや、彼は心身ともに健康で、それを維持する努力もしているし身だしなみにも隙が無い。が、それはあくまで自分の仕事の為であって、それ以上ではないーー上手くは言えないのだが、そんな感じがする事がある。
が、それも俺の考え過ぎで、彼にとってはあくまで「会社の広報」という仕事の一環に過ぎないのかもしれない。俺達はお互い、プライベートで仕事の話はしない。
あれだけの人なのだから玄英が世間に注目されて当然だし、好評価なのは素直に嬉しい。だが、ただでさえ違う世界の人がますます遠い存在になってしまいそうで、日陰の身の一般ピープルとしてはやや複雑だ。
便利で快適な大量消費社会を支えてきたプラスチックやポリエステルなどの石油製品も今、生分解性原料やリサイクル素材への転換が求められている。
だが、紛争の長期化や経済競争優先の元、地球規模での取り組みは追いつかず、気候変動やマイクロプラスチック汚染問題は年々深刻になりつつある。
だがここに画期的な技術がまた一つ誕生した。
日本とイギリスのクォーターである天才科学者、遠山玄英が学生時代に発明した画期的な素材「D'sアース」シリーズである。
エコ素材の抱えがちな使用感や耐久性、特にコスト面の課題をほぼクリアしたこの素材は、彼が自ら起業した「D’s Theory」社により爆発的に普及した。
彼は次いで化石賞受賞と先進国きってのプラスチック消費大国の不名誉を持ち、自らのルーツでもある日本に新支社を設立、自ら支社長を兼任しながら国産の間伐材や竹素材に再生ペットボトルを掛け合わせた新素材「D-クロエ」を開発した。
この度、首都圏を中心に園芸・緑化用品の製造・販売を手がける「ガルテン松山」と独占使用契約を結び、使用後自然に還る家庭園芸用品のシリーズを全国的に売り出す事となった。この試みに業界内外で注目が集まっているーー
「読んだか?『日本園芸新聞』の記事。トップに取り上げられたんだぞ」
毎度ハイテンション堀田がさらにテンション高く、件の新聞と雑誌を片手に油を売りに、俺のところに顔を出した。
「『月刊私の庭』も大きく取り上げてる。『日本園芸新聞』は業界新聞だがこっちは趣味の一般誌だからな。一番バズってんのはこれ」
「『ウーマン・エコノミスト』?」
「そう。キャリア志向の女性がメインターゲットの経済誌だ。今月号に遠山社長のインタビュー記事が写真入りで載ってるんだ。こんなの初めて自腹で買ったぞ」
「『ウーマン・エコノミスト』なら私もWEB版で毎月読んでるわ」
遠山社長のオーラにアテられない希少な最終兵器系女子、水島課長が会話に加わった。
「知ってます。SNSでトレンド入りしてました!」
「あの見た目とハイスペックぶりは男でも憧れます」
「日本生まれ日本育ちじゃ、なかなかああいう人は現れませんよね」
俺も諸般の事情から精一杯、興味ない風を装ってはいるものの、内心はワールドシリーズで大谷優勝!ばりのハイテンションだ(←ドジャースな)
ーー『ウーマン・エコノミスト』なんて発売日にダッシュで書店巡りして買ったわ!とかめっちゃメジャー誌じゃん!
ーーそれからそれから、今朝、日本の環境保護団体がインタビューした記事がアップされたんだ!マイナー記事だからきっとこれからバズるんだろうけど……誰か見つけてないのかな。ヤベェ、めっちゃ教えたい!
俺は今、玄英の「隠れ推し活」に余念がない。目下の悩みは一番の情報源がすぐ身近にいるのに、彼は何の取材を受けてどこに載るとか、いちいちそういう事を俺に言わない事だ。
時々玄英が玄英自身に全く関心が無いように思える事があるーー俺にはそれが気がかりだ。
いや、彼は心身ともに健康で、それを維持する努力もしているし身だしなみにも隙が無い。が、それはあくまで自分の仕事の為であって、それ以上ではないーー上手くは言えないのだが、そんな感じがする事がある。
が、それも俺の考え過ぎで、彼にとってはあくまで「会社の広報」という仕事の一環に過ぎないのかもしれない。俺達はお互い、プライベートで仕事の話はしない。
あれだけの人なのだから玄英が世間に注目されて当然だし、好評価なのは素直に嬉しい。だが、ただでさえ違う世界の人がますます遠い存在になってしまいそうで、日陰の身の一般ピープルとしてはやや複雑だ。
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【受】遠山玄英(とおやま くろえ・32歳)学生時代に開発したエコ素材の研究で会社を立ち上げた。海外育ちのエリートで青葉造園の取引先の社長。
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