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⭐︎ホムパが済んで、日が暮れて……いや夜が明けて
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色々あったが(そして何やかんやライフポイント削られまくりだったが)、明るいうちに始まった玄英主催のホームパーティは夜中高くまで盛り上がり、俺もD社の社員達とずいぶん親しくなった。
玄英はあの後、着替えてホスト役をちゃんと全うした。最後の一人を笑顔で送り出した時、ホッとして全身から力が抜けた。
ガテン系の家に生まれてヤンキーに片足突っ込んでたこともある俺だが、生まれつきの性格は人見知りの内弁慶だ。
玄英や古賀さんのように海外で生活した経験も無く、「ホームパーティ」なんていうコミュ強によるコミュ強のためのコミュ強の祭典、キングオブお洒落イベントとも無縁な人生を送ってきた、井の中のジャパニーズだ。
もし陰気でノリの悪い奴だと思われたら、玄英の評価まで下げちゃうんじゃないかっていうプレッシャーもあったので、祭りの後の寂しさよりも安堵感が強い。
心配していた言葉の壁については、皆が俺に合わせて日本語で話してくれたお陰で不自由は無かったのだが、話が盛り上がると皆だんだん早口の英語になって、締めのジョークのオチに合わせてつられ笑いするしかない時の場違い感よ……
せめて学生時代に英語を捨てずにもうちょっと頑張っておくべきだった。
ーーそれにしても……
玄英が会社ではあの人達全員に恐れられている絶対君主だという事も意外だったが、古賀さんと少し会話しただけで妬いていた玄英が、他の社員ーー男女その他を問わずーーと俺が親しく話していても、スルーし続けていた事だ。
ーーついにへそ曲げて無視してた、って感じじゃ全然なくて、むしろ俺の事を褒められて嬉しそうだったよな?
ーー若い女の子もいたのにな。何で古賀さんにだけ嫉妬?やっぱり元彼……?
それにしては何かがおかしい。
俺が遠山玄英の存在を知る以前ーーD'sTheory日本支社設立準備の頃から、古賀さんとは二人三脚でやって来たという。玄英は古賀さんに全幅の信頼を置いているし、古賀さんは玄英の事をめちゃくちゃ尊敬しているーーむしろ執着に近い物すら感じる。俺の事をわざわざ調べて会いに来たりとか、本当に会社のためだけだったんだろうか?
信頼や尊敬が恋愛関係に発展した時期があったとしてもおかしくはないがーーそうだったとすれば、俺にはちゃんと話してくれるはずだ。
ちょうど結婚していた時期と重なるのも、彼らしくない気がするし……
ーーだからって過去の恋愛のことをいちいち聞き出すのもなあ……
俺は隣で眠る玄英の顔をしばらく眺め、反対側に寝返りを打った。
「ご主人様、おはようっっ!」
「わっ!」
玄英が飛び起きて、いきなり覆い被さられた。素肌の上に毛布が絡まって身動きが取れない。
「昨夜、すごくよかったようっ!愛してる!」
「お、おう……お、俺も……」
朝からこのテンションについていけないが、すっかり機嫌を直してくれたようで何よりだ。
パーティの後、今度は玄英のフォローをめちゃくちゃ頑張った。何度も玄英に言葉を浴びせて思うさま堪能し、絡み合ったまま力尽きた。気がつくともう昼過ぎだ。
「ご主人様。起きるなり難しい顔して、何考えてたの?」
「いや……」
ここで古賀さんの事考えてた、なんて言ったらまた話がややこしくなりそうだ。
「結局、休日の半分、十八禁な事に費やしちまったなー、って……」
「うふふふふ。ご主人様、変態っ♪」
玄英がごろごろと戯れついてあちらこちら触ってくるが好きにさせている。
俺のブルーともホワイトともつかない中途半端に日焼けした寸足らずのゴツい手とはまるで違う、知的労働者らしいすらりとした指と冷んやりとした掌に、無邪気に確かめられている時間が好きだ。
「あと、英会話習おうかと思って」
「英会話?English?何で?」
玄英は肘をついて上体を半分起こすと、不思議そうな顔で聞き返した。
「いや、昨日つくづく思ったんだけどよ。これからもああいったホームパーティを開くんなら、俺も英語で話せた方がいいだろうし、D社との仕事にも役に立つかもしれないし……一日にしてならずで、すぐってわけにはいかないだろうが……」
「あはははははっ!」
玄英が突然、可笑しそうに笑い転げた。
「なら、普段から僕と英語で話せばいいじゃない?」
そうか!その手があったか!
玄英はあの後、着替えてホスト役をちゃんと全うした。最後の一人を笑顔で送り出した時、ホッとして全身から力が抜けた。
ガテン系の家に生まれてヤンキーに片足突っ込んでたこともある俺だが、生まれつきの性格は人見知りの内弁慶だ。
玄英や古賀さんのように海外で生活した経験も無く、「ホームパーティ」なんていうコミュ強によるコミュ強のためのコミュ強の祭典、キングオブお洒落イベントとも無縁な人生を送ってきた、井の中のジャパニーズだ。
もし陰気でノリの悪い奴だと思われたら、玄英の評価まで下げちゃうんじゃないかっていうプレッシャーもあったので、祭りの後の寂しさよりも安堵感が強い。
心配していた言葉の壁については、皆が俺に合わせて日本語で話してくれたお陰で不自由は無かったのだが、話が盛り上がると皆だんだん早口の英語になって、締めのジョークのオチに合わせてつられ笑いするしかない時の場違い感よ……
せめて学生時代に英語を捨てずにもうちょっと頑張っておくべきだった。
ーーそれにしても……
玄英が会社ではあの人達全員に恐れられている絶対君主だという事も意外だったが、古賀さんと少し会話しただけで妬いていた玄英が、他の社員ーー男女その他を問わずーーと俺が親しく話していても、スルーし続けていた事だ。
ーーついにへそ曲げて無視してた、って感じじゃ全然なくて、むしろ俺の事を褒められて嬉しそうだったよな?
ーー若い女の子もいたのにな。何で古賀さんにだけ嫉妬?やっぱり元彼……?
それにしては何かがおかしい。
俺が遠山玄英の存在を知る以前ーーD'sTheory日本支社設立準備の頃から、古賀さんとは二人三脚でやって来たという。玄英は古賀さんに全幅の信頼を置いているし、古賀さんは玄英の事をめちゃくちゃ尊敬しているーーむしろ執着に近い物すら感じる。俺の事をわざわざ調べて会いに来たりとか、本当に会社のためだけだったんだろうか?
信頼や尊敬が恋愛関係に発展した時期があったとしてもおかしくはないがーーそうだったとすれば、俺にはちゃんと話してくれるはずだ。
ちょうど結婚していた時期と重なるのも、彼らしくない気がするし……
ーーだからって過去の恋愛のことをいちいち聞き出すのもなあ……
俺は隣で眠る玄英の顔をしばらく眺め、反対側に寝返りを打った。
「ご主人様、おはようっっ!」
「わっ!」
玄英が飛び起きて、いきなり覆い被さられた。素肌の上に毛布が絡まって身動きが取れない。
「昨夜、すごくよかったようっ!愛してる!」
「お、おう……お、俺も……」
朝からこのテンションについていけないが、すっかり機嫌を直してくれたようで何よりだ。
パーティの後、今度は玄英のフォローをめちゃくちゃ頑張った。何度も玄英に言葉を浴びせて思うさま堪能し、絡み合ったまま力尽きた。気がつくともう昼過ぎだ。
「ご主人様。起きるなり難しい顔して、何考えてたの?」
「いや……」
ここで古賀さんの事考えてた、なんて言ったらまた話がややこしくなりそうだ。
「結局、休日の半分、十八禁な事に費やしちまったなー、って……」
「うふふふふ。ご主人様、変態っ♪」
玄英がごろごろと戯れついてあちらこちら触ってくるが好きにさせている。
俺のブルーともホワイトともつかない中途半端に日焼けした寸足らずのゴツい手とはまるで違う、知的労働者らしいすらりとした指と冷んやりとした掌に、無邪気に確かめられている時間が好きだ。
「あと、英会話習おうかと思って」
「英会話?English?何で?」
玄英は肘をついて上体を半分起こすと、不思議そうな顔で聞き返した。
「いや、昨日つくづく思ったんだけどよ。これからもああいったホームパーティを開くんなら、俺も英語で話せた方がいいだろうし、D社との仕事にも役に立つかもしれないし……一日にしてならずで、すぐってわけにはいかないだろうが……」
「あはははははっ!」
玄英が突然、可笑しそうに笑い転げた。
「なら、普段から僕と英語で話せばいいじゃない?」
そうか!その手があったか!
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