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玄英とホムパと愉快な仲間達

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 住む世界が違いすぎて壁の花になる事も想定していたので、ありがたいにはありがたいのだが。ヤンキー時代のお礼参り以外で人の輪の中心になんかいたことないため、四六のガマ状態でどんどん挙動不審になる俺。

 どうしてこんな「平凡」とか「十人並み」の代名詞みたいな中肉中背の……美青年でも可愛い系でもない、啖呵切りだけが取り柄の元ヤン寄りの地黒のアラサー現地人がうちのボスのパートナーなんだろうなんて、みんな思ってないかな。
 玄英のボスとしてのイメージにも関わるから、彼に似合うような社交的な好人物だと思われたいのに(無理)

 つか、これが今日の俺の仕事なんだから、作業くらいさせてくれえええ!

「恒星、格好いいでしょう」

 上機嫌な玄英がグラスを片手にキッチンに入ってきた。ボタンを二つ外したトレボットーニのドレスシャツの腕をまくり上げてアームガーターで留め、シルクのベストを着た彼は凄まじく男前で、ついぼうっと見惚れてしまった。

「寡黙なところに惹かれたんだ。はい、これ君の」

 玄英は大理石製の調理台の上にノンアルコールのカクテルを置いた。

『ボスって尽くすタイプ?』『意外な趣味』

『てか、ずいぶん若い子ね』『ミステリアスでもある……』

『アジア系はみんなそう見えるのよ』

『彼はサムライなのでは?』

「準備よろしくね」

 周囲のガヤ(英語)をものともせず、優美に微笑む玄英。

「あ、ありがとう」

『皆にも作ってあげる。アルコールでも、ノンアルコールでも何でも注文して』

 玄英が皆に呼びかけると、一同は歓声をあげてバーカウンターに移動して行った。

 よし、この隙に準備済ませちゃおうっと……
 この空気読みの才覚、スパダリか(知ってた)

 俺が酒を止める決意をしたため、一緒の時は玄英もつき合ってくれることになった。今も、部下達のためにせっせとお手製のカクテルを振る舞いながら、自分は俺につき合ってノンアルだ。
 それにしてもキッチンのすぐ外で、華麗な手つきでシェイカーを振る玄英は圧倒的に絵になる。料理は壊滅的だが、飲み物作らせたらプロはだしだ。

 そして彼の周囲にはいつも人が集まっていて、我も我もと彼に話しかけるのに忙しい。
 取引先(俺の会社)でも全方向に人を魅了しまくりな人気者の玄英だが、いわんやホームをや……って感じだ。上司として慕われているんだな。
 何だか自分の事のように嬉しい。

 業界にもうすぐ革命を起こす新素材を世に出した、少数精鋭のスーパーエリート集団なんてどんな自我の強い人達だろうと思っていたが、思った以上にアットホームな職場みたいだ。玄英が良いリーダーである証拠だろう。

 それにしても上司のプライベートなんて俺なら「へえー」くらいの感覚だけどな……
 仕事とプライベートは別!みたいな文化なのに、今回は任意だけど「パートナー同伴必須」のセレモニーやパーティがあったりするってのもよくわからん。
「自分を強く主張しないとやってけない会社ですからね。感情表現もストレートだし、面食らうでしょう?」

「古賀さん」

 カウンターから押し出された古賀さんが、グラス片手に僕の所にやって来た。

「まあ、そうですね。でもみなさん、いい人です」

「皆、恒星君には感謝してるんです。ボスがずいぶん丸くなって、労働環境が向上しました」

 え、そうなの?
「ボスはプライベートと対外交渉の時は好人物だけど、仕事の時はまるで別人なんです。自分にも他人にもめちゃくちゃ厳しくてワーカホリックで」

「へ、へえー……」

 どこぞの課の課長みたいだが(笑)普段の奴からは想像つかないな。

「アイディアに没頭している時は、人をまるで寄せ付けないし……恋してるような気配なんてまるでなかったから、打ち明けられた時はかなり驚きました」

「あ、そうだ。あの、古賀さん。俺と玄英の事はここ以外ではどうか内密に……特に俺の会社には」

 古賀さんは深々と頷いた。

「もちろんです。うちの社員は同性婚も事実婚も普通にいるけど、日本の企業ではまだ色々難しそうですしね」
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