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交際◯ヶ月記念にホムパとか、そういうノリ本当にやめてくれ
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それからさらに一ヶ月。
遠山玄英の「ご主人様」としての修行と非プラトニック(若干SM寄り)な交際をなりゆき任せで続けている。
いつの間にやら何だかんだでずるずるダラダラ、週の半分ほどを玄英のマンションで過ごすようになってしまった。
堀田から急に合コンづき合いが悪くなったと苦情を言われたりはしているものの、どうにかいなしている。
「さては、彼女でもできたのか?」
……彼氏ができたって言ったら、どんな反応するかな。
だが、玄英との事は当面誰にも話す気はない。万一にも会社にバレるワケにはいかないしーーLGBTQ云々以前に、女子社員全員を敵に回すのが恐ろしい。紆余曲折を経てせっかく入れた、ちょいグレー寄りのホワイト職場なのに……
第一、自分から報告してわざわざしようもない世間話のネタを提供する必要も感じないしな。
休日には気ままにあちこち出かけ、帰りにマドンナで食事をする。そしてしょっちゅう喧嘩する。
「こ……、恒星君、恒星君」
頭に来て、啖呵でしばき倒しているうちについ大声になってしまった。マスターが見かねて止めに来たので我に返った。
「また喧嘩なのかい?少し落ち着いて」
俺は口ごもり、遠山がすっと立ち上がったーー見上げるほど上背があって、やっぱり見栄えがする。
「お騒がせして申し訳ありません」
社交用の微笑をふんわりと浮かべ、優雅に会釈した。万一謝罪会見とか開く羽目になってもこの人、やっぱり美しいんだろうな。
「君たち本当、仲がいいのか悪いのかわからないよねえ……まあ僕も学生時代は悪友達とよく、コーヒー一杯で粘りながら議論を戦わせたものだけど」
マスターは眩しそうに目を細めながら、遠い日を懐かしんだ。いや、そんないいもんじゃねえわ。ただの痴話喧嘩だ。
「ちょっと今、お互いの会社で共同のプロジェクトを抱えてて、ややこしいんですよ」
「男一匹、社会に出れば七人の敵ありって奴だな。企業戦士は辛いねえ」
「今の時代、社会で大変なのは何も男性だけじゃないですけどね」
そう言って辺りを見渡し、好奇心たっぷりに見守っていた店内のマダム客達まで完全に味方につけやがった。ミスター危機管理かよ。
「恒星君はいい男なんだが、昔から短気が玉に瑕でね」
マスターは完全に身内目線で、玄英を気遣った。
「わかってます。そこも彼の魅力ですから」
「玄英君が大人で助かるよ。さすが紳士の国の人だ。恒星君も少し学ぶといい」
マスターは上機嫌でキッチンに戻って行った。
おとといきやがれ、こちとら、礼節と士道の国だわーーとは、長年の恩人に対して口が裂けても言えないけど。
つか何でお前、いつの間にか俺の保護者的立ち位置になってんの?
「恒星、そろそろ出ようか。僕の部屋で続きを話そう」
玄英は嫌味ったらしいほど流麗な所作で俺をエスコートしようとした。
「機嫌取ろうとするんじゃねえ。そういうのは女にやるもんだ」
俺は不貞腐れて立ち上がり際、テーブルに小銭を叩きつけたーーこういうところが損してるんだろうなって、自分ではわかっているんだけど。
ことの発端はこうだ。玄英の野郎が
「交際2ヶ月記念にうちでホームパーティやろうよ」
とか何とか、ふざけた事を抜かしてきやがった。しかもその記念日というのがあのワンナイトの日だと言うのだからこれがキレずにいられるかっての。
「あ。でも(ピー)したのは日付け変わってからだから、起算日変わるか……」
「そこじゃねえんだよ!この変態理系野郎!」
遠山玄英の「ご主人様」としての修行と非プラトニック(若干SM寄り)な交際をなりゆき任せで続けている。
いつの間にやら何だかんだでずるずるダラダラ、週の半分ほどを玄英のマンションで過ごすようになってしまった。
堀田から急に合コンづき合いが悪くなったと苦情を言われたりはしているものの、どうにかいなしている。
「さては、彼女でもできたのか?」
……彼氏ができたって言ったら、どんな反応するかな。
だが、玄英との事は当面誰にも話す気はない。万一にも会社にバレるワケにはいかないしーーLGBTQ云々以前に、女子社員全員を敵に回すのが恐ろしい。紆余曲折を経てせっかく入れた、ちょいグレー寄りのホワイト職場なのに……
第一、自分から報告してわざわざしようもない世間話のネタを提供する必要も感じないしな。
休日には気ままにあちこち出かけ、帰りにマドンナで食事をする。そしてしょっちゅう喧嘩する。
「こ……、恒星君、恒星君」
頭に来て、啖呵でしばき倒しているうちについ大声になってしまった。マスターが見かねて止めに来たので我に返った。
「また喧嘩なのかい?少し落ち着いて」
俺は口ごもり、遠山がすっと立ち上がったーー見上げるほど上背があって、やっぱり見栄えがする。
「お騒がせして申し訳ありません」
社交用の微笑をふんわりと浮かべ、優雅に会釈した。万一謝罪会見とか開く羽目になってもこの人、やっぱり美しいんだろうな。
「君たち本当、仲がいいのか悪いのかわからないよねえ……まあ僕も学生時代は悪友達とよく、コーヒー一杯で粘りながら議論を戦わせたものだけど」
マスターは眩しそうに目を細めながら、遠い日を懐かしんだ。いや、そんないいもんじゃねえわ。ただの痴話喧嘩だ。
「ちょっと今、お互いの会社で共同のプロジェクトを抱えてて、ややこしいんですよ」
「男一匹、社会に出れば七人の敵ありって奴だな。企業戦士は辛いねえ」
「今の時代、社会で大変なのは何も男性だけじゃないですけどね」
そう言って辺りを見渡し、好奇心たっぷりに見守っていた店内のマダム客達まで完全に味方につけやがった。ミスター危機管理かよ。
「恒星君はいい男なんだが、昔から短気が玉に瑕でね」
マスターは完全に身内目線で、玄英を気遣った。
「わかってます。そこも彼の魅力ですから」
「玄英君が大人で助かるよ。さすが紳士の国の人だ。恒星君も少し学ぶといい」
マスターは上機嫌でキッチンに戻って行った。
おとといきやがれ、こちとら、礼節と士道の国だわーーとは、長年の恩人に対して口が裂けても言えないけど。
つか何でお前、いつの間にか俺の保護者的立ち位置になってんの?
「恒星、そろそろ出ようか。僕の部屋で続きを話そう」
玄英は嫌味ったらしいほど流麗な所作で俺をエスコートしようとした。
「機嫌取ろうとするんじゃねえ。そういうのは女にやるもんだ」
俺は不貞腐れて立ち上がり際、テーブルに小銭を叩きつけたーーこういうところが損してるんだろうなって、自分ではわかっているんだけど。
ことの発端はこうだ。玄英の野郎が
「交際2ヶ月記念にうちでホームパーティやろうよ」
とか何とか、ふざけた事を抜かしてきやがった。しかもその記念日というのがあのワンナイトの日だと言うのだからこれがキレずにいられるかっての。
「あ。でも(ピー)したのは日付け変わってからだから、起算日変わるか……」
「そこじゃねえんだよ!この変態理系野郎!」
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