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さてお立ち合い!御用とお急ぎでない方は寄ってらっしゃい見てらっしゃい!ヤラせ一切なし!ガルテン松山のガチンコ記者会見だようっ
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「くろ…………、遠山社長。ありがとうございました。それでは質疑応答に移ります。質問のある方は挙手……」
フライング気味に会場じゅうの右腕が一斉に挙がるーー擬態語ではなく本当にざあーっという音がした。それに左手も何本かあるけどーー順番に当てていったら真夜中までかかりそうだ。
とりあえず課長との打ち合わせ通り、業界向けの老舗メディアから当てていく。が、事情通であり弊社とそこそこおつき合いが長いはずの記者達の質問ですら、えげつないほど玄英一人に集中した。
海外のメディアは英語で彼に直接質問し、玄英ももちろん英語で答えては時々早口で盛り上がるーー聞き取れて意味のわかる人はいいかもしれないが、まずは弊社社長がポカンと取り残されている(自慢じゃないが俺もだ!)
またも水島課長が「マイク貸せ」と俺にジェスチャーして一旦仕切り、それらのやり取りを日本語で要約して会場中に説明した。語学力もそうだが、記憶力とか咄嗟の機転とか、色々すげえわこの人……玄英も横でうんうんと頷いている。
いや、そもそもお前らがマイペース過ぎるんだが……それとも我々ジャパニーズピーポーが四角四面の予定調和大好き民族なだけなのか?
あとハプニングらしいハプニングと言えば、ネット記事専門のフリーランスを名乗った記者がやっぱり英語で玄英の離婚の事を聞こうとしてきた。
これは俺にも何となく、聞き取れた単語と雰囲気で察せられたので横からぶった切って、「個人的な質問はご遠慮いただいております。次の方」と百パー日本語の塩対応でかわした。
って、よりにもよってこんな奴中に入れんなよ……あ、当てたの俺か。
後日、無限に広いインターネット上のどこぞの界隈で密かに叩かれるのかもしれない。俺だけで済むんならご自由にやってくれ、だ。
「時間内に受け付けられなかった質問は後日、弊社広報より文書で回答させていただきます。本日はありがとうございました」
ハプニングと言えばその二つと、記者会見の終了時刻を数十分も過ぎてしまったことくらいで、弊社設立以来おそらく最大規模のプレス対応は無事に終了した。弊社社長以下、ずっと暇そうだった上司達は少し気の毒だったが、古賀さんだけは「またか」と言った様子で机の下の死角に端末を出し、別な仕事をしていたのを俺は見た。
蓋を開けてみると、業界関係の他には地方紙と全国紙の記者がそれぞれ一社ずつ来ていたが、半分以上は海外メディアの特派員的な人達のようだった。
玄英も玄英の会社も、日本国内で俺たちが思う以上に海外では評価されているようだ。日本での評価も早くそこまで上がって欲しい。
大役をやりおおせた俺は既に砂と化してしまいそうだった。が、もうひと踏ん張り大事な仕事がある。記者達が帰った後、玄英達をーーというか玄英を無軌道なファン達の魔の手から守り、無事に帰社させる事だ。
極限まで使い果たしてバラけきった集中力を無理矢理高めるために、俺は来客専用のトイレの個室にこもる事を思いついた。
万一誰かに見られたところで、このキャラだし会社でデカい方したと思われんのがヤダなどと一人で拗らす年齢でもないし。ちなみに今回はただ、人酔いをしてしまって短時間で一人になれる場所ってのがそこしか思いつかなかったってだけ。
行ってみると思った通り無人で、何なら社員用の普通のトイレよりずっと綺麗だ。快適快適……
「ねえねえご主人様、う◯こー?」
「わああっ!」
一瞬のスキをつかれて気がつくと、いつの間にか後から来ていた玄英から個室に連れ込められてしまう。このタイミングで意趣返しかよ!
「会社でその呼び方すんなっつってんだろ!この駄犬!」
「ごめんごめん。恒星、さっきすごく格好よかったよ!」
あんたがそれを言うのかよ……いや、今俺の目の前にいる遠山玄英は、三揃えの高級オーダースーツを着こなしたただの非常識な変態野郎でしかない。さっきの男も惚れる男代表、キレッキレの天才カリスマ社長どこ行った(泣)
フライング気味に会場じゅうの右腕が一斉に挙がるーー擬態語ではなく本当にざあーっという音がした。それに左手も何本かあるけどーー順番に当てていったら真夜中までかかりそうだ。
とりあえず課長との打ち合わせ通り、業界向けの老舗メディアから当てていく。が、事情通であり弊社とそこそこおつき合いが長いはずの記者達の質問ですら、えげつないほど玄英一人に集中した。
海外のメディアは英語で彼に直接質問し、玄英ももちろん英語で答えては時々早口で盛り上がるーー聞き取れて意味のわかる人はいいかもしれないが、まずは弊社社長がポカンと取り残されている(自慢じゃないが俺もだ!)
またも水島課長が「マイク貸せ」と俺にジェスチャーして一旦仕切り、それらのやり取りを日本語で要約して会場中に説明した。語学力もそうだが、記憶力とか咄嗟の機転とか、色々すげえわこの人……玄英も横でうんうんと頷いている。
いや、そもそもお前らがマイペース過ぎるんだが……それとも我々ジャパニーズピーポーが四角四面の予定調和大好き民族なだけなのか?
あとハプニングらしいハプニングと言えば、ネット記事専門のフリーランスを名乗った記者がやっぱり英語で玄英の離婚の事を聞こうとしてきた。
これは俺にも何となく、聞き取れた単語と雰囲気で察せられたので横からぶった切って、「個人的な質問はご遠慮いただいております。次の方」と百パー日本語の塩対応でかわした。
って、よりにもよってこんな奴中に入れんなよ……あ、当てたの俺か。
後日、無限に広いインターネット上のどこぞの界隈で密かに叩かれるのかもしれない。俺だけで済むんならご自由にやってくれ、だ。
「時間内に受け付けられなかった質問は後日、弊社広報より文書で回答させていただきます。本日はありがとうございました」
ハプニングと言えばその二つと、記者会見の終了時刻を数十分も過ぎてしまったことくらいで、弊社設立以来おそらく最大規模のプレス対応は無事に終了した。弊社社長以下、ずっと暇そうだった上司達は少し気の毒だったが、古賀さんだけは「またか」と言った様子で机の下の死角に端末を出し、別な仕事をしていたのを俺は見た。
蓋を開けてみると、業界関係の他には地方紙と全国紙の記者がそれぞれ一社ずつ来ていたが、半分以上は海外メディアの特派員的な人達のようだった。
玄英も玄英の会社も、日本国内で俺たちが思う以上に海外では評価されているようだ。日本での評価も早くそこまで上がって欲しい。
大役をやりおおせた俺は既に砂と化してしまいそうだった。が、もうひと踏ん張り大事な仕事がある。記者達が帰った後、玄英達をーーというか玄英を無軌道なファン達の魔の手から守り、無事に帰社させる事だ。
極限まで使い果たしてバラけきった集中力を無理矢理高めるために、俺は来客専用のトイレの個室にこもる事を思いついた。
万一誰かに見られたところで、このキャラだし会社でデカい方したと思われんのがヤダなどと一人で拗らす年齢でもないし。ちなみに今回はただ、人酔いをしてしまって短時間で一人になれる場所ってのがそこしか思いつかなかったってだけ。
行ってみると思った通り無人で、何なら社員用の普通のトイレよりずっと綺麗だ。快適快適……
「ねえねえご主人様、う◯こー?」
「わああっ!」
一瞬のスキをつかれて気がつくと、いつの間にか後から来ていた玄英から個室に連れ込められてしまう。このタイミングで意趣返しかよ!
「会社でその呼び方すんなっつってんだろ!この駄犬!」
「ごめんごめん。恒星、さっきすごく格好よかったよ!」
あんたがそれを言うのかよ……いや、今俺の目の前にいる遠山玄英は、三揃えの高級オーダースーツを着こなしたただの非常識な変態野郎でしかない。さっきの男も惚れる男代表、キレッキレの天才カリスマ社長どこ行った(泣)
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