赤いトラロープ〜たぶん、きっと運命の

ようさん

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⭐︎リメイク版なんてどうせ誰かに駄作って言われるんだから、自分の好きなようにやったらいいと思うの

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 俺より一回り大きな奴の手にも余る、異生物レベルの見事なソレをガン見した。思わず括りたくなってしまった心理だけは、今なら納得できる。

ーーいや、無いわ。

 薄らぼんやりとした知識しかないが少なくとも、目の前の撲殺にも使えそうな飛び道具級の(中略)を俺が(中略)だとしたら朝、五体満足でいられた訳はないし。

ーーいや、逆か?俺がコイツを……

 視線を少し上げるとすぐ目の前に彼の汗ばんだ生え際と節目がちの潤んだ目があるーー睫毛まつげがずいぶん長い。顔だけならまあ、かなり好みだが……

ーーいやいやいや……男だぞ?普通に無理じゃね?

「恒星……」

「なっ、何」

 つられて返事してしまった。

「僕……何か言っ、……じゃな、…………」

「は?何?」

「……僕……ご主人様の声って、好みのど真ん中みたいで……」

ーーってコイツ、恥ずかしがってた(?)割に俺の前でしながらめっちゃ喋るじゃん!

「罵倒されたい……さっきみたいに罵倒して欲し……」

 たかぶったまま半身をかがみ込むようにして、耳元で囁いてくる。動揺していた俺はこのタイミングでまたキレた。

「罵倒じゃねえ!啖呵だ!」

 立ち上がり、反射的に奴を三たび足蹴にした。

「啖呵ってのは人様を嘲り倒すために切るモンじゃねえ、自分てめえの筋や仁義を通すためのモンなんだ。それだって『切れ』って言われてすらすら出てくるもんじゃねえんだよ!んで、勝手にさらっと『ご主人様』とか呼んでんじゃねえ!」

 加減はしたつもりだったが、奴にしてみれば盛り上がってたところを足蹴にされてよほどショックだったのか、虚を突かれて呆然となっているのか仰向けでぽかんとした表情のまま、潤んだ視線だけをこちらに向けている。

「だいたいアンタのコレが節操がないから……」

 俺はそう言いながらアメリカンサイズ(?)のソレを思いっきり蹴り倒しーーいや、そうしたかったがさすがに人様の急所中の急所だから気を使って、体重もかけたりしないよう裸足の足で強めに触れた。

「っ……ああああっ!」

 途端、奴が全身を真っ赤にして震わせながら仰け反った。あまりにも背徳的な美しさに満ちていて、今度は俺の方が呆然となった。昔、職人の兄さんの趣味につきあって一緒に観た「椿三十郎」@1967ver.ラストの有名な流血シーンをネガポジ反転版で思い出した。

 彼は感情の読めない表情のままぽろぽろ涙をこぼしていた。

「……ご、ごめん。ごめんよ。大丈夫か……」

 さすがにあり得なかったと思い、焦って駆け寄った。と、首と背中に腕が回されて引き込み技をかけられたーー思っていた以上に力が強い。てっきり反撃されると思ってどう防ぐか必死に考えていたら(それだけの事はやらかしたと思うが、仕返しでボコられっぱなしでもいいかどうかというのはまた話が別)

「ご主人様、最高!」

 半ば押し倒されたような格好のまま突然キスされた。とにかく頭が真っ白になってしまって感想もクソもないが、たぶん無駄に巧い。当惑しながらもしばらくなすがままになっている俺。

「ご主人様……大好き」

「ご主人様じゃねえって言ってんだろっ!」
 
 我に返って慌てて奴を押し戻した。

「はっ、離れろ……!つか、身体くらい拭け!……ちょっとついちゃったじゃねえか」

 なんせ椿三十郎な事後だもの。

「あっ……本当だ。ごめんなさい。じゃあ、クリーニングに出すから脱いで?」

「このまんま他人ひと様に出せるかよっ!つか先にお前が身体、洗って来いよ!」

 火を吹きそうに顔が熱く、こめかみがどくどくとうるさい。俺はどうにか冷静になろうと起き直って反対側を向いた。幸か不幸か地球にもお財布にも優しいウォッシャブルスーツなので、自力で何とかできないことも無さそうだ。それより……

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