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その2
しおりを挟む三人姉妹の真中っ子。
華やかなタイプの姉と妹に挟まれた小さい頃の私は、母の手を煩わせないようにといつも部屋の隅で一人絵本を読んでいるような子だった。
母にとっていい子でいるために感情を出さないよう心掛けているうちに、感情を押し殺すようになっていた。
そして湧き上がった感情を押し殺すのは辛いから、いつの間にか生まれたばかりの感情を心の中で瞬時にカチカチに凍らせて何も望んでいない振りをするのが得意になっていった。
友だちと遊んでいても、心から楽しいと思えたことは無かったような気がする。
心の中を凍らせた後に訪れる何とも言えない空っぽの疲れが嫌で、感情が弾けそうになると自然に距離をとるようになってしまったから。
無防備に輝く笑顔で遊んでいる姉妹や友人たちと比べると感情をさらけだせない私は、愛情を受けることが出来なかった可哀想な子に思えてきて、さらに感情を凍らせた。
そして楽しんでいる振り、何も望んでいない振りをして可哀想な子だとバレないように、いつもどこかビクついていたような気がする。
凍った感情の心の中で漏れ出すものは迷惑をかけていないか、間違ったことを言っていないか、不快にさせていないか、邪魔をしていないかというような鈍色のザラついた申し訳なさだった。
鈍色のザラつきは消えることなく、こびり付いて離れてくれない。
彼に対してもそうだった。
大学の課題やアルバイトで忙しそうな彼へ私から連絡することは躊躇われた。
彼の時間を邪魔して迷惑がられるんじゃないかという不安が垂れ込めてきて、幾度も電話へ添えた指先を止めてしまっていた。
嫌われたくなくて待つだけの私はきっとつまらない子だっただろう。
誰かの一番になったことが無い私は、彼の一番になる自信も勇気も無かったのだ。
……いや、むしろ一番になることに貪欲だったのかもしれない。
だから躰だけ求められているような気がしたクリスマスの夜は、ただ一緒に朝を迎えただけの虚しさ残る冷たい終り方をしたのだろう。
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