トラップって強いよねぇ?

TURE 8

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2章

31話 ソードストライク

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 順調に進んでいく俺たちだが、中間に差し掛かったところでエマが何かに気づいた。

「みんな止まって!」

 俺とケンジは登る手を止める。

「どうしたんだ?」

「何か聞こえる。こっちに向かってくるわ!」

 エマがそう言うが俺とケンジさんには何も聞こえない。ただ、風の吹く音が聞こえるだけだ。だが、エマがそう言うならば何かあるだろうと俺は当たりを見渡す。

 辺りは空の青がまるで海のように広がっており、少し下には雲海が見えた。いつのまにか雲海を超えて随分と崖を登っていたんだと認識させられたて背中がぞくりとしたが、特に異常はない。鳥が優雅に飛んでいるだけだ。

「鳥?」

 ただ飛んでいるように見えた鳥だが、何やらどんどんと大きくなっていくように……見えた。

「カジ、危ない!」

 エマの声で反射的に下にいたエマを見てしまう。すると、自身の顔の横から石が削れるような大きな音が響いた。

「え?」

 俺はふと、横を見るとそこには顔を崖の岩石にめり込ませた鳥がこちらを覗かせていた。

「うわ⁉︎」

 驚いたのも束の間、その鳥は岩から鋭く尖った紅色のくちばしを引き抜き、俺に向かって突き刺そうとしてくる。瞬間的に片手を掴んでいた岩から離し、刺そうとしてきたくちばしを掴んだ。

「グゥグウウグゥグゥゥ!?」

 くちばしを掴むと鳥は体をバタバタとせわしなく動きもがく。俺は鳥を下に思いっきり投げつけた。鳥は離された後、パニックを起こしたのか空中でももがきながら雲海に飲まれた。


 どうやら今のは鳥の魔物がこっちに向かって高速で突っ込んできたようで、だから鳥が大きく見えたのだ。

 いきなりの出来事だったが、とっさに対処できたことに安堵の息を吐いた。だが、まだ緊急事態は終わっていなかったことを理解してしまった。青一色の空から無数の鳥の群れが現れたからだ。

「やばいな」

上からケンジさんの焦る声が聞こえた。

「『鑑定』」

『ソードストライク
種族 ソードストライク
レベル1

 能力値
HP 4
MP 3
力 7
防御 2
器用さ 1
速さ 16
魔力 2

スキル
ストライクアタック

アーツ
スピードブースト(MP-3)』

 鑑定で魔物のステータスを見ていた途端、ケンジさんが叫ぶ。

「みんな、全速力で上へ登れ!」

 するとソードストライクたちが一斉にこちらへ向かって高速で突っ込んでくる。俺たちは無我夢中で崖を登り始める。

「うわっ⁉︎」

 とてつもない数のソードストライクが登る最中に岩石に突き刺さり、崖がぶるりと揺れていく。俺は落ちそうになるが、踏ん張って耐える。幸いなことにソードストライクに突き刺さったものはいなさそうだ。鑑定で分かった器用さの値の低さが原因かもと悠長に考えていると、第二陣が高速で向かってきた。

「ぐうっ、きっつい、なぁ!」

 俺たちは今3人が縦一列で同じロープが結ばれており、一蓮托生だ。そんな中、俺は他の2人と比べてクライミングの経験はないため、必然として3人が俺のペースに合わせて進むしかなかった。

「すいません!俺の登るのが遅くて」

「いや、大丈夫だ。エマちゃん、俺らが先導するぞ!」

「分かったわ!」

 ケンジさんとエマがそう言うと下にいたエマが瞬時に俺の上まで登ってくる。そしてケンジさんとエマで俺の体を掴みながら器用に登っていき、先ほどの倍以上のスピードで崖を登っていく。平地を走るかののように素早い動きであっという間に登っていく。

「はあ、はあ、はあ」

 さすがに1人を掴んだまま昇るというものは無理があるのだろう。2人は息が絶え絶えとなってくる。俺は息を切らしながら高速で動く2人におんぶにだっこだった。

 ソードストライクの群れは度々襲ってきたが、2人の速さについていくのが精一杯のようだ。

 かれこれ数十分間は休まずに登っていくとようやく、頂上まであと5mという所まで、たどり着いていた。

「よし、終わりが、見えたぞ」

「そ、うね」

 二人の限界が近いのだろう。まともに会話することも難しいぐらいには消耗している。結果として昇るスピードは落ちていき、ソードストライクの群れに追い付かれてしまう。

「ぐっ⁉︎」

 ひと際早いソードストライクがこちらに向かって突き刺さっていき、割れた小さな岩がこちらに降りかかってくる。ゴールはもうすぐなのにそう思った瞬間、一匹のソードストライクが2人と俺の体の小さな隙間に突き刺さった。

「カジ!」

 俺たちに当たらなかったものの、ソードストライクは一蓮托生の証であるロープを両断した。

 一瞬の浮遊感ののち、俺の体は宙に投げ出された。訳が分からないまま無意識で手を出し、岩肌を掴むことには成功した。

 ゲームの中ではあるが、少しチクリと手が痛む感触と全身の冷や汗を俺は感じた。
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