チート無し男の異世界生活

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第1章

1-30テレシア

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寂しいそうな彼の横顔を見た。

「またな…」

「待っ…!!」

言葉を発する前に次元の裂け目に飲まれた私は、擬似的な転移魔法を発動して自身の国へと帰還したのだった。

「くっそ!今から行けばまだっ!なんだ!?…っ!」

直後急激な頭痛に襲われたかと思うと頭にイメージが湧いてきた。

「これは…、アイツから受け取った王専用スキルか!っ…!」

イメージから湧いてきたのは、おそらく私が飛ばされた後の王の間の光景。その無残な光景に思わず、私は言葉を失った。全身に突き刺さる数本の槍、切断された腕、おびただしい出血の量、その光景は彼が助からないことを意味する。この光景が見えていることが分かっているのか彼は小声で何かを話している。
 
「見えているんだよなぁ…、はぁ…ネイシアは…。よく聞け、俺にはもう…時間はない。お前は今現在…危ない状況下にある…周りに疎いお前のことだ…きっと自分が罠にはめているつもりでも敵の作戦にまんまとハマっていることに気づいていないことだろうな…はぁ今から伝えることをよく聞いて行動してくれ、分かったか?」

血を流しながら言葉を紡ぎ出すその姿を見て俺は聞かざる負えなかった。

「お前が今からやることは2つ…1つは俺の娘ノア・ヴァーミリオンを東の方向へ、騎士団長とともに、お前が逃がしたことを勘づかれないようにして逃がすこと…2つめは俺が死んだ後俺の死体を…大戦中に死んだかつての勇者が眠っている墓に埋めろ…以上だ。作戦の難易度的には、2つ目の方が…面倒かもしれんがよろしく頼むッ…安心しろ俺が死んだ後の回収は簡単だと思う…、これも未来視で見た…、健闘を…祈る 」

言いたいことだけ好き勝手に言うと糸が切れた人形の如くテレシアは息を途絶えたようだ。まったくあの男らしいな…、最後まで分からん男だった。

「…1つ目の願い、ノア姫と騎士団長を国外へ逃がすだったか?そっちの方は簡単だ。暗部と連携を取って逃がすことが可能ではあるが…問題は2つ目の死体の件だ。どういう意図でそんなことを言い出したのかはわからんが、回収が難しくはないとあいつ本人が言っていたしな」

そして、私はテレシアに仕えていた暗部の者達を呼び出した。

「何用だ、ネイシア王」

簡素な問に笑を零しかけるが、堪えつつ話を始める。

「私は、王という柄ではなくてな…すまないが砕けた話し方になるが許して欲しい」

「許すも何も我らはテレシア王より貴方に使えよと申された、我らは元より無から与えられた人間に過ぎぬ何なりと王よ」

全くテレシアめ、随分と懐かれていたみたいじゃないか。私も、国を持たなければあいつに仕えていたがな!私の方がテレシアラブなのだ!はっはっはっ!!

「あの、王よ…その…ニヤけた顔は良した方がいい、ブサ…変な顔になっているからな」

「おまっ…今ブサイクって言いかけたわよね!!許さないわよ貴方!!」
 
「取り敢えず話を進めてください、一応王様でしょう!?」 

たわいのない会話をほんの少しだけした後、話を始めた。

「テレシア・ヴァーミリオンが死んだわ」

私が一言この言葉を告げた途端、暗部達は一瞬悲壮感の顔を見せたがすぐに聞き返してきた。

「そうですか…、あの方の最後は…どうでしたか?」 

「アイツらしい最後だったわ…アイツったら無数の槍に体を貫かれながらも私たちに希望を託してきたのよ、それも2つも…恐らくこれが未来に繋がる手掛かりになる筈よ」

そうですかと答えると彼らは、私に我らは何をすればと問いかけてきた。

「貴方達にはこれから起こるであろうことを一通り話しておくわ、それからテレシアから言い渡された約束もね」 

それから私は、話し始めた未来のことそしてあいつと交わした約束の事を。
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