転生悪役令嬢は悪魔王子をスルーしてカフェオーナーになりたい

和気 藹

文字の大きさ
上 下
32 / 43
領都フルネンディク

31 こんにちは!赤ちゃゃゃゃん!

しおりを挟む



 今日は待ちに待った五日後! 赤ちゃんとご対面の日です! あっ違った、ファジャ地方の冷泉調査の日です。
 今回は山一つ越えた先なので、ファフニールに乗って飛んでいてもそんなに高度もないし、怖くないです! やっぱり赤ちゃん効果は絶大ですね! 何が何でも下は見ませんけどね!
 それと、ファフニールが何かと話しかけてくれるのが大きいかもしれません。
「しかし本当に今日は静かだな?」
「ファフニールが色々話しかけてくれるから気が紛れています。ありがとうございます」
 素直に感謝を告げると、ファフニールは照れたのか、
「べっ別に、お前の為にやったんじゃないからな! お前が煩いから仕方なくやったんだからな!」
 おお、ドラゴンダンスィーのツンデレ発言いただきました!
「はいはい、ありがとうね」
「はい、は一回だ!」
「はーい」
「伸ばすな!」
 くすくす笑いながら、幾重にも重なった山の稜線の向こうに広がる青い空を見上げると初夏の濃い青色と山の緑とのコントラストがとても綺麗です。


 冷泉が涌いている場所は幾重にも重なる山の谷間に綺麗な渓流と二十戸程の家が集まる小さい集落の端にあります。
 主な産業は林業。ここには何故かアジア原産の檜が自生していて高級建材として流通しています。私としては、檜の精油が欲しいですが、あれはアスナロやヒバから精製されるので今回は入手はムリかな。「昨日は夢と過ぎて、明日はいまだ来らず」ですね。
 領都に戻ったら、森林資源の分布を調べてみましょうか。(領都から出てはいけないという条件はすっかり忘れている)
 あっアスナロは「まな板」の高級材料じゃないですか! 今までカッティングボードしか持っていなかったので、板厚が私の掌位ある板前か! っていうくらいの大きいものが欲しいな。
 そんな事を考えながら、集落の広場に降り立つと、コーヒー色の髪の二十代半ば位の青年がこちらに走り寄って頭を下げます。あ、コーヒー飲みたい。
「いらっしゃいませ、お初にお目にかかります、こちらの冷泉の管理をしております、村長の長子でドゥイリオと申します。通常ならば村長がお出迎えにあがるところなのですが、生憎父は怪我で床に臥せっておりますので、私が参りました」
「出迎えありがとう、ご苦労様。ノルベルトだよ。こっちは妹のマリアンネ。あと、ドラゴンのトゥーナとファフニール。大変な時期に申し訳ないけれど、長居しないつもりだから案内よろしくね。あと、村長さんにお見舞いを伝えてね」
 お分かりの方も多いと思いますが、私は目礼のみです。
「ありがとうございます、父も喜びます。では先に源泉の方にご案内します」
「お願いします!」





「こちらが源泉です」
 近かった。申し訳ないくらい近かった。
 歩いて行った方が良かった位の近さ。
 土魔法でコンクリート状に固められた池にコポコポと砂を巻き上げ絶えず涌き上がる冷泉。湯量は多いようです。
「ここから冷泉を汲み上げて、温泉施設テルメで温めて浴槽に流しています。加温する必要があるので、かけ流しにはできておりません」
 紫キャベツ試験紙を取り出して源泉に浸けてみると、青色になりました。やっぱりアルカリ性。重曹泉かもしれない。
「この冷泉の温度は季節関係なく一定なのかしら?」
「はい、そうです」
「これって皆は何かに利用している?」
「いいえ、侯爵様のものですから、私達には……」
「……お父様サイテー……」
 やっぱりタヌキには火をつけよう、タヌキ汁にしよう。
「アンネ、殺気が漏れてる」
「冷泉は使えないなら、湯の花を取るには問題ないのでは?」
 目を見開いたドゥイリオの顔は頭の周りにクエスチョンマークが幾つか浮かんでいるようで、つられて笑ってしまいます。
「お嬢様、湯の花って何ですか?」
「温泉の水分を飛ばして、残った固形物の事よ。それをもう一度お湯に溶かすと温泉になるのよ。衣類やおむつの洗剤代わりにもなるわ。あっ洗剤代わりの時は水か体温以下の温度まで冷ましたものを使ってね? 涌いている冷泉全部を温泉施設テルメに流している訳ではないのでしょう? もったいないから利用しなければ」
 その話を聞いて、腕を組んで顎をつまみ考え込むドゥイリオ。
「お嬢様、そのお話、父に話してよろしいですか? その後、領都のイザーク様に相談してよろしいですか?」
「いいですよね? お兄様?」
 ノート兄様が小さくうなずいてくれます。
「それと冷泉の効率の良い入浴方法があるんだけれど、温泉施設テルメに案内してもらえるかしら?」
「はい、ぜひ!」
 ドゥイリオの爽やかな笑顔が眩しいです。

 …………ところで、私はいつ赤ちゃんに逢えるんでしょう?

*****

 更新遅くなって申し訳ありません。次こそ赤ちゃん!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...