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こっちはカップにこっちはバスに
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さて、今日は〇月〇日。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。最近めっきり機会が少なくなったので忘れがちですが、連休といえば旅行、旅行といえばお土産ですよね。皆さんは誰にどんなお土産を買って帰りますか? お父さんやお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、子どもに、孫に、恋人や友達、ああそうだ職場にも買っていかなきゃ~なんて考えたらキリがないんですよね。休みをとって出かけたなら尚更、ちょっと値が張るお土産も致し方ないとお土産コーナーで延々と悩み続けてしまいます。裏を返せば、元々休みの日を利用して出かけたなら、職場の人たちには内緒にしておこうかなんて、ちょっと計算高い考えの人も少なからずいるのではないでしょうか。
渡す相手もさることながら、お土産の中身もセンスが問われますよね。以前、旅行に出かける人にお土産は〇〇と〇〇どっちがいい? と直接聞かれたことがあります。経験則でどちらも現地で却下されるのは目に見えているので、あえて高いほうの名前を挙げて「私はこっちがいいです」と言ったら、苦笑しておりました。どうせ叶えられないなら、言うだけはタダですから。それに聞いてくるということは、私の返答がどうあれコミュニケーションを図ろうとしてくれているということ。その後に別の人にも聞いていましたが「もらえるなら何でも嬉しいですけど」という模範解答でした。私はたとえ多少失礼でも、そういう模範解答よりちょっと捻くれた答えをしがちです。なぜなら模範解答は答えが出ない、話が広がらないからです。確かに人間として、大人として、社会人として正しい解答だと思います。私の気が回らないというのもあるでしょう。「何でもいい」という答えが逆に相手を困らせるように、相手からすればいっそのことこちらに決めて欲しいのかもしれません。そうでなくても、好意のない人、どうでもいい人には、聞くまでもなく「適当なお土産でいっか」となってしまいますから、聞いてくれるということはそれなりの好意や誠意を持ってくれているということです。「もらえるなら何でも嬉しい」という気持ちは、私の捻くれた答えの中にも含まれているのですが、その微妙なニュアンスが相手にも伝わっていると思うのは私の穿った見方かもしれませんね。ともあれ、本当の模範解答は「いただけるなら何でも」と前置きした上で、欲しい物をさりげなく言ってみることなのでしょう。ただし、その願望は九分九厘叶うことはありませんから、あくまで『参考』にという気持ちが大事です。期待しすぎるといざお土産をもらった時にがっかりして、それこそ相手に失礼ですからね。「〇〇じゃないけどいい?」なんて、帰って来てからも盛り上がる話題になるので、一度は言ってみるものです。
もらう側としての心の持ちようももちろん大事ですが、問題なのは自分が選ぶ時ですよね。特に職場などの関係性だと、全員の好みを把握することも、その好みに合わせて選ぶことも、人数が増えれば増えるほどままならないものです。結局、消去法になって「あの人はこれがダメであの人はこれがダメだから、これしかない!」と自分に言い訳しながら決めることになるのです。外れがないのは、文房具など実用性特化の商品にすることなのでしょうが、正直に言うと後になっても残るものって貰ったほうとしても気を遣いますよね。後腐れなく、消費できるもののほうが気が楽です。だから、お菓子が一般的なお土産になるのでしょうね。どこどこ名物なんて肩書きがあれば、「これを買っていけば間違いないよね」と思考停止で選べるのですが、そうもいかないのが東京のお土産です。東京は行く頻度も高く、行く人も多いですから、回数を重ねた分だけ『東京名物』ではとどまらなくなってしまいます。「これはあの人が買って来てたし、これはこの間私が買って行ったし、あぁでも好評だったから同じものでもいいか、いやいやでもなぁ」と同じところを行ったり来たり。東京に限らず、今やどこに行っても他県の名産が置いてありますから、そんなのこの辺でも買えるじゃんと言われるのも癪です。観光以上にお土産選びに時間がかかって、「もう帰りの飛行機が、復路の電車が出発しちゃう! もうこれでいっか」となってしまうんですよね。結局、あんなに悩んだ時間は一体何だったかという話です。
私はお土産のセンスが悪いほうではないと自負していますが、正社員として勤めていた職場を辞める時、40人ほどいる社内の人たちに詰め合わせのプレゼントをしたことがあります。スープや入浴剤、使い捨てのアイマスクにチョコレートなどのちょっとしたお菓子。親しかった同僚や上司には量と質を良くしましたが、基本的には外れがなくて実用性重視のものを入れたと思います。あげた人の中には年配の方もいたので、スープをお風呂に入浴剤をカップに入れないか心配で注意書きをしようかと思ったくらいです。実際にはしませんでしたが、少なからずお世話になった方々ですので、一筆書きを添えてお渡ししました。確か「ありがとうございました」と一緒に「皆さんのこれからが素敵な日々でありますように」とかそのようなことを。結婚や出産など人生の転機にも、お別れの言葉にも使えるし、地雷を踏まないのでこの文言は気に入っています。特に結婚出産などの場合は顕著ですが、NGワードをうっかり入れてしまわないようにという私なりの配慮でもあります。言われて嫌な人はいないでしょうし、過去より未来に目を向けて、別々の道ではあるけれど一緒に歩いて行きましょうねという自分自身に対するメッセージでもあります。私が普段働いていたところは40人の社員のうち、数人しかいない営業所でしたから、普段から仲が良く、とても居心地のいい場所でした。ですから、バレンタインなども男性陣にプレゼントをお渡ししていたのですが、チョコレートやお菓子よりも、お酒やおつまみのほうが嬉しいよねということで、仕事帰りに先輩と毎年買いに行ったものです。女性より男性のほうが少ないですし、私たち女性は5・6人で割り勘ですが、男性陣はひとりでその人数にお返ししなければなりませんから、そうなるとむしろ貰わないほうが嬉しいかもなんて男性も少なくないでしょう。ホワイトデーのほうが後に来るのも、ちょっと意地悪ですよね。これからゴールデンウィークですが、出かけるのはいいけれど、皆さんもお土産選びに四苦八苦しながら帰ることになるのかもしれませんね。
そろそろお別れの時間です。お土産を貰って、お返しはどうしようかなんて複雑な思いはあれど、感情的に嬉しくない人はいないと思います。要は気持ちの問題ですから。渡すほうも貰うほうも。けれど、本当のお土産はあなたが無事に帰って来てくれることと、楽しそうにお話しするお土産話だと思います。母親と同世代の先輩が、旅行先でご飯を食べて美味しかったのでまた行きたいと息子さんに話したところ、「今度は俺がご馳走するから」と超絶イケメンな答えが返って来たそうです。ご飯が美味しかったことよりも何倍も何十倍も嬉しそうでした。そこでしか作れない思い出と、帰ったらこれ話したいあれ話したいという思いがあれば、形のあるお土産なんてそのきっかけでしかありません。お土産なんて二の次三の次、ゴールデンウィーク、事故のないよう皆さん楽しくお過ごしくださいね。また来週お会いしましょう。深見小夜子でした。
渡す相手もさることながら、お土産の中身もセンスが問われますよね。以前、旅行に出かける人にお土産は〇〇と〇〇どっちがいい? と直接聞かれたことがあります。経験則でどちらも現地で却下されるのは目に見えているので、あえて高いほうの名前を挙げて「私はこっちがいいです」と言ったら、苦笑しておりました。どうせ叶えられないなら、言うだけはタダですから。それに聞いてくるということは、私の返答がどうあれコミュニケーションを図ろうとしてくれているということ。その後に別の人にも聞いていましたが「もらえるなら何でも嬉しいですけど」という模範解答でした。私はたとえ多少失礼でも、そういう模範解答よりちょっと捻くれた答えをしがちです。なぜなら模範解答は答えが出ない、話が広がらないからです。確かに人間として、大人として、社会人として正しい解答だと思います。私の気が回らないというのもあるでしょう。「何でもいい」という答えが逆に相手を困らせるように、相手からすればいっそのことこちらに決めて欲しいのかもしれません。そうでなくても、好意のない人、どうでもいい人には、聞くまでもなく「適当なお土産でいっか」となってしまいますから、聞いてくれるということはそれなりの好意や誠意を持ってくれているということです。「もらえるなら何でも嬉しい」という気持ちは、私の捻くれた答えの中にも含まれているのですが、その微妙なニュアンスが相手にも伝わっていると思うのは私の穿った見方かもしれませんね。ともあれ、本当の模範解答は「いただけるなら何でも」と前置きした上で、欲しい物をさりげなく言ってみることなのでしょう。ただし、その願望は九分九厘叶うことはありませんから、あくまで『参考』にという気持ちが大事です。期待しすぎるといざお土産をもらった時にがっかりして、それこそ相手に失礼ですからね。「〇〇じゃないけどいい?」なんて、帰って来てからも盛り上がる話題になるので、一度は言ってみるものです。
もらう側としての心の持ちようももちろん大事ですが、問題なのは自分が選ぶ時ですよね。特に職場などの関係性だと、全員の好みを把握することも、その好みに合わせて選ぶことも、人数が増えれば増えるほどままならないものです。結局、消去法になって「あの人はこれがダメであの人はこれがダメだから、これしかない!」と自分に言い訳しながら決めることになるのです。外れがないのは、文房具など実用性特化の商品にすることなのでしょうが、正直に言うと後になっても残るものって貰ったほうとしても気を遣いますよね。後腐れなく、消費できるもののほうが気が楽です。だから、お菓子が一般的なお土産になるのでしょうね。どこどこ名物なんて肩書きがあれば、「これを買っていけば間違いないよね」と思考停止で選べるのですが、そうもいかないのが東京のお土産です。東京は行く頻度も高く、行く人も多いですから、回数を重ねた分だけ『東京名物』ではとどまらなくなってしまいます。「これはあの人が買って来てたし、これはこの間私が買って行ったし、あぁでも好評だったから同じものでもいいか、いやいやでもなぁ」と同じところを行ったり来たり。東京に限らず、今やどこに行っても他県の名産が置いてありますから、そんなのこの辺でも買えるじゃんと言われるのも癪です。観光以上にお土産選びに時間がかかって、「もう帰りの飛行機が、復路の電車が出発しちゃう! もうこれでいっか」となってしまうんですよね。結局、あんなに悩んだ時間は一体何だったかという話です。
私はお土産のセンスが悪いほうではないと自負していますが、正社員として勤めていた職場を辞める時、40人ほどいる社内の人たちに詰め合わせのプレゼントをしたことがあります。スープや入浴剤、使い捨てのアイマスクにチョコレートなどのちょっとしたお菓子。親しかった同僚や上司には量と質を良くしましたが、基本的には外れがなくて実用性重視のものを入れたと思います。あげた人の中には年配の方もいたので、スープをお風呂に入浴剤をカップに入れないか心配で注意書きをしようかと思ったくらいです。実際にはしませんでしたが、少なからずお世話になった方々ですので、一筆書きを添えてお渡ししました。確か「ありがとうございました」と一緒に「皆さんのこれからが素敵な日々でありますように」とかそのようなことを。結婚や出産など人生の転機にも、お別れの言葉にも使えるし、地雷を踏まないのでこの文言は気に入っています。特に結婚出産などの場合は顕著ですが、NGワードをうっかり入れてしまわないようにという私なりの配慮でもあります。言われて嫌な人はいないでしょうし、過去より未来に目を向けて、別々の道ではあるけれど一緒に歩いて行きましょうねという自分自身に対するメッセージでもあります。私が普段働いていたところは40人の社員のうち、数人しかいない営業所でしたから、普段から仲が良く、とても居心地のいい場所でした。ですから、バレンタインなども男性陣にプレゼントをお渡ししていたのですが、チョコレートやお菓子よりも、お酒やおつまみのほうが嬉しいよねということで、仕事帰りに先輩と毎年買いに行ったものです。女性より男性のほうが少ないですし、私たち女性は5・6人で割り勘ですが、男性陣はひとりでその人数にお返ししなければなりませんから、そうなるとむしろ貰わないほうが嬉しいかもなんて男性も少なくないでしょう。ホワイトデーのほうが後に来るのも、ちょっと意地悪ですよね。これからゴールデンウィークですが、出かけるのはいいけれど、皆さんもお土産選びに四苦八苦しながら帰ることになるのかもしれませんね。
そろそろお別れの時間です。お土産を貰って、お返しはどうしようかなんて複雑な思いはあれど、感情的に嬉しくない人はいないと思います。要は気持ちの問題ですから。渡すほうも貰うほうも。けれど、本当のお土産はあなたが無事に帰って来てくれることと、楽しそうにお話しするお土産話だと思います。母親と同世代の先輩が、旅行先でご飯を食べて美味しかったのでまた行きたいと息子さんに話したところ、「今度は俺がご馳走するから」と超絶イケメンな答えが返って来たそうです。ご飯が美味しかったことよりも何倍も何十倍も嬉しそうでした。そこでしか作れない思い出と、帰ったらこれ話したいあれ話したいという思いがあれば、形のあるお土産なんてそのきっかけでしかありません。お土産なんて二の次三の次、ゴールデンウィーク、事故のないよう皆さん楽しくお過ごしくださいね。また来週お会いしましょう。深見小夜子でした。
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