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好きなタイプは公序良俗に反しない人
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さて、今日は〇月〇日。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。つい先日、いえ、先日に限ったことでもないのですが、私が上京して来てからよく思うことのひとつでして、信号無視をね、見かけたんです。それも、いかにも仕事ができますという風情のサラリーマンの方ですよ? いえ、別に仕事ができるできないとか、サラリーマンとか関係なく、信号無視は良くないことですが。私はね、そういう場面を見ると、「あぁたとえ仕事ができて、どんなにイケメンでどんなにハンサムでも、惚れないわぁ」と思います。惚れたとしても、その瞬間を見た時点で急激に熱が冷めてしまいますし、そもそも「仕事ができる人」とは思わないでしょうね。
確かに理由がある、のかもしれません。見ていなかったとか、急いでいたとか、車が来ていないから、とかね。でも、どれを取ってもじゃあ仕方ないねとはなりませんよね。仕事ができないという評価も強ち間違いじゃないと思います。だって、周りが見えていないということだし、急いでいるのは余裕がないということだし、たとえ遅れそうな原因があなたにはないにしても、急ぎたいのはあなただけじゃないかもしれませんよね。言わずもがな、車が来ていないことはイコール信号を無視していいということではありません。
大学生時代、なぜかそれほど仲良くないけれど同じ授業を履修していて、まあまあ顔見知り程度の男の子と一緒に帰ったことがあります。その人はいわゆるクラスの中心タイプの子で、まぁ私にそう見えていただけかもしれませんが、今どきはなんと言うんでしょう。スクールカースト上位? 陽キャ? でしょうか。私はあまりそう言った言葉を使わないので流行に乗れないうちに過ぎ去っていってしまうのですが、名称は雰囲気が伝われば何でもいいです。ともかく、私とは正反対の子だと思っていたんですね。だから、あえて話しかけたこともないし、話しかけられたこともありません。向こうも似たような認識だったのでしょうね。
ところが、いざ話してみると私が想像していたチャラさは一切なく、落ち着いた話し方をするし、苦手なタイプと思っていた私がスラスラと会話できたんです。彼が合わせてくれていたのか、単に波長が合ったのかはわかりません。ただ、私の彼に対する印象が変わったことは間違いありません。
そして、駅までの道中、信号に差し掛かりました。青が点滅して、まもなく赤になろうという頃。私は隣の彼が平然と歩いて渡るものだと思って、走りたいけどどうしようなんて一歩横断歩道に踏み出したら、私よりも先に彼が走り出したんです。そして、二人で赤になる前に渡り切りました。その時、私は思ったんです。「この人、私が思ってた人と違う」。単純でしょう? でもね、それくらい日常的に見かける信号無視に疑問を持っていたので、第一印象がマイナス寄りだったことも多少は作用したかもしれませんが、彼への好感度は今風に言うと爆上がりしたわけですね。
そして、その後も同じ方面の電車に乗ったのですが、混んでいた車内が空き始めると、「座ったら」と声をかけてくれたのです。これはもう惚れる、と思いました。実際には元々それほど近しい関係ではないので、好感度メーターが振り切れただけで終わりましたが、好きな人や憧れの人にこういうことをされたら、「やっぱり素敵な人だわ」と目がハートになっていたに違いありません。表現が古い? 放っといてください。
この時に、私は自覚したわけですね。実際「好きなタイプは?」と聞かれたら、『公序良俗に反しない人』と答えています。まぁそういう機会はそれほどありませんし、私の『公序良俗』に対する判定はわりと厳しめなので、ある意味では理想が高いとも言えます。それはさておき、皆さんはいかがでしょう? 私も以前は、好きなタイプは『優しい人』と答えていました。でも別に優しくして欲しいわけじゃないんだよなぁと思っていた時期があります。いえいえ、Mとか冷たいのが好きとか、そういうのではなくてね。『優しい人』と言うなら、私にだけでなく、他人にみんなに優しい人であって欲しいんですね。電車で席を譲るとか、それこそ信号無視はしないとか。
私はね、身長が低いので満員電車で押し潰されるみたいな損すること以上に、人の優しさに触れることがよくあります。本屋さんに行って、一番上の届きそうで届かない微妙な高さの本棚に頑張って手を伸ばしていると、見ている人が「取りましょうか?」なんて言ってくれたりするんですね。普段は踏み台を使うようにしていますが、都会の本屋さんだと、広くて踏み台が遠かったり、逆に通路が狭くて邪魔になりそうだったり、となんだか無駄に気を遣ってしまうんですよね。あまりにも届かなくてどうしようもない時は、諦めてしまうこともあります。ですから、そういう優しさに触れると、「好きな人がこういう人だったらいいなぁ」と思います。
でも結局、優しい優しくないは基準が曖昧で人それぞれなので、私の嫌だと思うことをしなければ特別気にしないことにしています。こういう私が嫌だと思うことを、今風には『地雷』と言うんでしょうか。皆さんの中にもきっと、好きなタイプは『私の地雷に触れない人』なんて方がいらっしゃることでしょう。というか、全ての好きなタイプを集約すると、結局この一言で済むような気さえしてしまいますが。でも、恋は盲目とはよく言ったもので、好きな人、好きになりたい人の、ちょっとした嫌だなと思ったところは見て見ぬふりしてしまうんですよね。何かしら理由をつけて、そうじゃない、この人はそんなことしない、って。自分の中のモヤモヤを消すために、とにかく理屈あるいは屁理屈を並べ立てて。でも、その人の全てを知っているわけではもちろんありませんから、直接聞いてみないことには真意がわかりません。だからこそ余計にモヤモヤするのでしょう。違うよね、そういう意味で言ったんじゃないよねなんて、永遠に答えの出ない問いと向かい合うことになる。
さて、そろそろお別れの時間です。逆に言えばきっと、その嫌なところも許せる人が、生涯を共にする人になるのでしょうね。そうでなければ毎日が苦しくなってしまいますから。私もいつかそんな人に出会えるでしょうか。皆さんも、私みたいに『好きなタイプ』や『地雷』に囚われすぎず、日々を過ごしてくださいね。また来週お会いしましょう。深見小夜子でした。
確かに理由がある、のかもしれません。見ていなかったとか、急いでいたとか、車が来ていないから、とかね。でも、どれを取ってもじゃあ仕方ないねとはなりませんよね。仕事ができないという評価も強ち間違いじゃないと思います。だって、周りが見えていないということだし、急いでいるのは余裕がないということだし、たとえ遅れそうな原因があなたにはないにしても、急ぎたいのはあなただけじゃないかもしれませんよね。言わずもがな、車が来ていないことはイコール信号を無視していいということではありません。
大学生時代、なぜかそれほど仲良くないけれど同じ授業を履修していて、まあまあ顔見知り程度の男の子と一緒に帰ったことがあります。その人はいわゆるクラスの中心タイプの子で、まぁ私にそう見えていただけかもしれませんが、今どきはなんと言うんでしょう。スクールカースト上位? 陽キャ? でしょうか。私はあまりそう言った言葉を使わないので流行に乗れないうちに過ぎ去っていってしまうのですが、名称は雰囲気が伝われば何でもいいです。ともかく、私とは正反対の子だと思っていたんですね。だから、あえて話しかけたこともないし、話しかけられたこともありません。向こうも似たような認識だったのでしょうね。
ところが、いざ話してみると私が想像していたチャラさは一切なく、落ち着いた話し方をするし、苦手なタイプと思っていた私がスラスラと会話できたんです。彼が合わせてくれていたのか、単に波長が合ったのかはわかりません。ただ、私の彼に対する印象が変わったことは間違いありません。
そして、駅までの道中、信号に差し掛かりました。青が点滅して、まもなく赤になろうという頃。私は隣の彼が平然と歩いて渡るものだと思って、走りたいけどどうしようなんて一歩横断歩道に踏み出したら、私よりも先に彼が走り出したんです。そして、二人で赤になる前に渡り切りました。その時、私は思ったんです。「この人、私が思ってた人と違う」。単純でしょう? でもね、それくらい日常的に見かける信号無視に疑問を持っていたので、第一印象がマイナス寄りだったことも多少は作用したかもしれませんが、彼への好感度は今風に言うと爆上がりしたわけですね。
そして、その後も同じ方面の電車に乗ったのですが、混んでいた車内が空き始めると、「座ったら」と声をかけてくれたのです。これはもう惚れる、と思いました。実際には元々それほど近しい関係ではないので、好感度メーターが振り切れただけで終わりましたが、好きな人や憧れの人にこういうことをされたら、「やっぱり素敵な人だわ」と目がハートになっていたに違いありません。表現が古い? 放っといてください。
この時に、私は自覚したわけですね。実際「好きなタイプは?」と聞かれたら、『公序良俗に反しない人』と答えています。まぁそういう機会はそれほどありませんし、私の『公序良俗』に対する判定はわりと厳しめなので、ある意味では理想が高いとも言えます。それはさておき、皆さんはいかがでしょう? 私も以前は、好きなタイプは『優しい人』と答えていました。でも別に優しくして欲しいわけじゃないんだよなぁと思っていた時期があります。いえいえ、Mとか冷たいのが好きとか、そういうのではなくてね。『優しい人』と言うなら、私にだけでなく、他人にみんなに優しい人であって欲しいんですね。電車で席を譲るとか、それこそ信号無視はしないとか。
私はね、身長が低いので満員電車で押し潰されるみたいな損すること以上に、人の優しさに触れることがよくあります。本屋さんに行って、一番上の届きそうで届かない微妙な高さの本棚に頑張って手を伸ばしていると、見ている人が「取りましょうか?」なんて言ってくれたりするんですね。普段は踏み台を使うようにしていますが、都会の本屋さんだと、広くて踏み台が遠かったり、逆に通路が狭くて邪魔になりそうだったり、となんだか無駄に気を遣ってしまうんですよね。あまりにも届かなくてどうしようもない時は、諦めてしまうこともあります。ですから、そういう優しさに触れると、「好きな人がこういう人だったらいいなぁ」と思います。
でも結局、優しい優しくないは基準が曖昧で人それぞれなので、私の嫌だと思うことをしなければ特別気にしないことにしています。こういう私が嫌だと思うことを、今風には『地雷』と言うんでしょうか。皆さんの中にもきっと、好きなタイプは『私の地雷に触れない人』なんて方がいらっしゃることでしょう。というか、全ての好きなタイプを集約すると、結局この一言で済むような気さえしてしまいますが。でも、恋は盲目とはよく言ったもので、好きな人、好きになりたい人の、ちょっとした嫌だなと思ったところは見て見ぬふりしてしまうんですよね。何かしら理由をつけて、そうじゃない、この人はそんなことしない、って。自分の中のモヤモヤを消すために、とにかく理屈あるいは屁理屈を並べ立てて。でも、その人の全てを知っているわけではもちろんありませんから、直接聞いてみないことには真意がわかりません。だからこそ余計にモヤモヤするのでしょう。違うよね、そういう意味で言ったんじゃないよねなんて、永遠に答えの出ない問いと向かい合うことになる。
さて、そろそろお別れの時間です。逆に言えばきっと、その嫌なところも許せる人が、生涯を共にする人になるのでしょうね。そうでなければ毎日が苦しくなってしまいますから。私もいつかそんな人に出会えるでしょうか。皆さんも、私みたいに『好きなタイプ』や『地雷』に囚われすぎず、日々を過ごしてくださいね。また来週お会いしましょう。深見小夜子でした。
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