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サーブアウトは正義
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さて、今日は〇月〇日。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。春といえば始まりの季節。皆さんはこの春、何か挑戦してみたいこと、叶えたいことはありますか? どんなに小さなことでもいいんです。たとえば新しい楽器やスポーツを習い始めるとか、英語を話せるようになるとか、節約生活を目指すとか、親孝行をしようとかね。本当に何でもいいんです。かくいう私は健康的な食生活を始めよう、いや、始めなければならないなと思っています。せっかく挑戦するなら、できるだけ長く続けたいもの。漠然とあれやってみたい、これやってみたいというよりも、何か目標や目的があると楽しいですよね。健康的な食生活によって自然と痩せるでしょう。今よりはきっと。そうしたら、あれを着てみたいし、こんなことをやってみたい。ほんの少し自分に自信が持てるようにもなるかもしれません。でも、本当に自分に自信が持てるのは、単に『痩せたから』ではないでしょう。『痩せるまでちゃんと続けられたから』または『目標に向かって諦めずに自分と向き合えたから』ではないでしょうか。
その目標に到達するまでの過程には、もう嫌だと投げ出したくなることも、やってしまったという失敗もたくさんあることでしょう。習いたての英語を使おうとして、英語では失礼にあたる言い回しをそうとは知らずに言ってしまったとか、肯定と否定を間違えて逆の意味にとられてしまったとか。そういうのも勉強のうちで、そうやって失敗を繰り返しながら上達していくものですが、渦中のあなたは気がつきづらいかもしれません。かといって、人に指摘されるのも恥ずかしいし、自分であとで調べて落ち込むのも嫌ですよね。でも、きっとそういう全てを乗り越えながら人は成長していくのでしょう。たとえば、あなたの叶えたいことや最終的な目標に『本番』という概念があったらどうでしょう? 英語ならスピーチコンテストとか、楽器ならライブとか、スポーツなら大会でしょうか。そこで失敗しないために、日頃の失敗はすべからく糧にするという考え方ができれば、気持ちが楽になりますよね。
さて、『本番』というなら、その道のプロの方々はどうでしょう。スピーチに限らず、あらゆるコンテストにライブ、そして言わずもがなスポーツですね。話題の野球で言うなら、本番でも選手の皆さんはうまくいかないこともありますよね。調子が良くないこともあれば、相手との相性が悪いこともあります。プロの世界ではあまりないかもしれませんが、学生時代ならば単純に力量の差ということもあるかもしれませんね。では、プロの皆さんは『本番』でのそういったミスや失敗を、『あってはいけないこと』と考えているでしょうか。もちろん、ネガティブな思考で過ちを犯したならそれは反省すべきなのでしょうが、ポジティブなミスや失敗も中にはあると私は思うのです。
私はバレーボール経験者です。観戦するのもやっぱりバレーボールが一番楽しいです。ここで少し、私が常々興味深いと感じている話をしましょう。バレーボールの最初の一打は必ず、どちらかのサーブから始まりますね。他の競技でもそうかもしれませんが、選手たちの成績をわかりやすく残すために様々なランキングが発表されています。バレーボールならスパイク決定率、レシーブ成功率、そしてサーブ成功数などです。でもね、ひとつだけ。どうしてこんなランキングがあるんだろうと思ったのが、『サーブ失敗数』です。そして、さらに興味深いのは『サーブ成功数』と『サーブ失敗数』のランキングは、大体同じ選手が並ぶのです。なぜでしょう? ここからは私の持論なので、本来のランキングの意図とは異なる可能性があります。ご了承ください。さて、バレーボールの中で、サーブというのは自分自身との闘いです。スパイクやレシーブなどと違って、他の誰かに影響されることがありません。つまり、サーブが成功すれば純粋にその選手だけの得点になるわけです。逆に、サーブが失敗すればその選手だけの失点になるわけですね。ランキングの話に戻ると、サーブが強烈であればあるほど、コントロールは難しく、決まった時の威力によって得点率が高くなるかわりに、連続でサーブを打てばミスする確率も当然上がりますから、失点率も高くなります。それは道理ですよね。ランキングですから、『サーブが上手い』と捉えがちですが、私は『サーブが強い』人たちなんだなと解釈しています。彼ら選手たちは、切羽詰まった状況でいかに勝負に出られるかを、毎回試されているわけですね。そして、その試練といつも孤独に闘っている。よく、バレーボールを観戦していてサーブがミスになると「あぁ~」なんて何十人、何百人もの落胆の声が会場に響きますよね。私も以前はその中のひとりでした。サーブが入らなきゃ得点に繋がらないのに、なんて。でも、このランキングを見てから考えが変わったんです。そうか、私は『失敗』しか見てなかったんだな、と。人間の悪いところかもしれませんが、失敗というのは嫌でも目立ちます。そして、そこだけを責める傾向にあります。でも、同じくらいの成功も目にしているはずなんですよ、私たちは。その成功をなかったことして、失敗だけをあげつらって、なんて恥ずかしいと猛省しました。
私たちは『失敗』を恐れがちです。怖いし、落ち込むし、失敗しないに越したことはありません。だからといって、『失敗』はすべからく『悪』なんでしょうか。『失敗は成功のもと』と言います。『失敗』の数は努力の証だとも思います。失敗だけを恐れていたら、きっと成功することもないのです。だって、それはもとより勝負をしたことにならないから。勝負をした者だけが価値ある失敗と、より価値のある成功を得られるのです。価値のない失敗を繰り返して成功だけを味わいたいなんて、そんな虫のいい話はあり得ませんよね。そういう意味で、私は『サーブアウトは正義』だと思っています。もちろん全てに当てはまるわけではありませんが、選手たちの努力の証、挑戦の証、そして成功への第一歩なのです。
そろそろお別れの時間です。皆さんが挑戦したいと思っていること、叶えたいと考えていること。全てが成功じゃなくていいんです。あなたに向いていないと気づくこともまた、失敗ではあっても無価値ではありません。『成功』のもとである『失敗』を知ること。それ自体が、挑戦することの意義だと私は思います。どうか皆さんの挑戦が、いつの日か実を結びますように。また来週お会いしましょう。深見小夜子でした。
その目標に到達するまでの過程には、もう嫌だと投げ出したくなることも、やってしまったという失敗もたくさんあることでしょう。習いたての英語を使おうとして、英語では失礼にあたる言い回しをそうとは知らずに言ってしまったとか、肯定と否定を間違えて逆の意味にとられてしまったとか。そういうのも勉強のうちで、そうやって失敗を繰り返しながら上達していくものですが、渦中のあなたは気がつきづらいかもしれません。かといって、人に指摘されるのも恥ずかしいし、自分であとで調べて落ち込むのも嫌ですよね。でも、きっとそういう全てを乗り越えながら人は成長していくのでしょう。たとえば、あなたの叶えたいことや最終的な目標に『本番』という概念があったらどうでしょう? 英語ならスピーチコンテストとか、楽器ならライブとか、スポーツなら大会でしょうか。そこで失敗しないために、日頃の失敗はすべからく糧にするという考え方ができれば、気持ちが楽になりますよね。
さて、『本番』というなら、その道のプロの方々はどうでしょう。スピーチに限らず、あらゆるコンテストにライブ、そして言わずもがなスポーツですね。話題の野球で言うなら、本番でも選手の皆さんはうまくいかないこともありますよね。調子が良くないこともあれば、相手との相性が悪いこともあります。プロの世界ではあまりないかもしれませんが、学生時代ならば単純に力量の差ということもあるかもしれませんね。では、プロの皆さんは『本番』でのそういったミスや失敗を、『あってはいけないこと』と考えているでしょうか。もちろん、ネガティブな思考で過ちを犯したならそれは反省すべきなのでしょうが、ポジティブなミスや失敗も中にはあると私は思うのです。
私はバレーボール経験者です。観戦するのもやっぱりバレーボールが一番楽しいです。ここで少し、私が常々興味深いと感じている話をしましょう。バレーボールの最初の一打は必ず、どちらかのサーブから始まりますね。他の競技でもそうかもしれませんが、選手たちの成績をわかりやすく残すために様々なランキングが発表されています。バレーボールならスパイク決定率、レシーブ成功率、そしてサーブ成功数などです。でもね、ひとつだけ。どうしてこんなランキングがあるんだろうと思ったのが、『サーブ失敗数』です。そして、さらに興味深いのは『サーブ成功数』と『サーブ失敗数』のランキングは、大体同じ選手が並ぶのです。なぜでしょう? ここからは私の持論なので、本来のランキングの意図とは異なる可能性があります。ご了承ください。さて、バレーボールの中で、サーブというのは自分自身との闘いです。スパイクやレシーブなどと違って、他の誰かに影響されることがありません。つまり、サーブが成功すれば純粋にその選手だけの得点になるわけです。逆に、サーブが失敗すればその選手だけの失点になるわけですね。ランキングの話に戻ると、サーブが強烈であればあるほど、コントロールは難しく、決まった時の威力によって得点率が高くなるかわりに、連続でサーブを打てばミスする確率も当然上がりますから、失点率も高くなります。それは道理ですよね。ランキングですから、『サーブが上手い』と捉えがちですが、私は『サーブが強い』人たちなんだなと解釈しています。彼ら選手たちは、切羽詰まった状況でいかに勝負に出られるかを、毎回試されているわけですね。そして、その試練といつも孤独に闘っている。よく、バレーボールを観戦していてサーブがミスになると「あぁ~」なんて何十人、何百人もの落胆の声が会場に響きますよね。私も以前はその中のひとりでした。サーブが入らなきゃ得点に繋がらないのに、なんて。でも、このランキングを見てから考えが変わったんです。そうか、私は『失敗』しか見てなかったんだな、と。人間の悪いところかもしれませんが、失敗というのは嫌でも目立ちます。そして、そこだけを責める傾向にあります。でも、同じくらいの成功も目にしているはずなんですよ、私たちは。その成功をなかったことして、失敗だけをあげつらって、なんて恥ずかしいと猛省しました。
私たちは『失敗』を恐れがちです。怖いし、落ち込むし、失敗しないに越したことはありません。だからといって、『失敗』はすべからく『悪』なんでしょうか。『失敗は成功のもと』と言います。『失敗』の数は努力の証だとも思います。失敗だけを恐れていたら、きっと成功することもないのです。だって、それはもとより勝負をしたことにならないから。勝負をした者だけが価値ある失敗と、より価値のある成功を得られるのです。価値のない失敗を繰り返して成功だけを味わいたいなんて、そんな虫のいい話はあり得ませんよね。そういう意味で、私は『サーブアウトは正義』だと思っています。もちろん全てに当てはまるわけではありませんが、選手たちの努力の証、挑戦の証、そして成功への第一歩なのです。
そろそろお別れの時間です。皆さんが挑戦したいと思っていること、叶えたいと考えていること。全てが成功じゃなくていいんです。あなたに向いていないと気づくこともまた、失敗ではあっても無価値ではありません。『成功』のもとである『失敗』を知ること。それ自体が、挑戦することの意義だと私は思います。どうか皆さんの挑戦が、いつの日か実を結びますように。また来週お会いしましょう。深見小夜子でした。
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