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私、いくつに見える?
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さて、今日は〇月〇日。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。この間ね、テレビを観ていたら『タイムカプセル』なんて懐かしいテーマの再現ドラマが流れていました。そこに登場する当時小学生の女の子。未来の自分へ向けて書いた手紙の書き出しが『10年後の私へ。いかがお過ごしでしょうか?』だったんです。センスを感じますよねぇ。あぁ、もちろん私自身の体験談ではありませんよ?
『タイムカプセル』に限らず、皆さんも日記とかブログとか、今はSNSでしょうか。日々の記録を後になって見返すなんてことも多いと思います。私はね、いわゆるネタ帳なるものを持ち歩いているんですが、なんということはありません。日々、遭遇した出来事を書き連ねて、いつか、たとえばこういう場で披露することがあるかもしれない、小説のトリックに使えるかもしれない、そんなふうに考える時間が何より好きなんですね。
ちなみに最近、そのネタ帳に書いた話で印象的だったのは『口裂け女』ですかねぇ。そうそう、「私、綺麗?」って台詞が有名なあの人です。
私は人間観察を兼ねて、カフェで仕事することもあるんですが、そこで隣に座ったカップルがそんな話をしてたんです。女の子のほうが「ねえねえ。私、綺麗?」なんて無邪気に言うわけです。そうしたら男の子が「なになに、口でも裂けたの?」って笑いながら返すものですから、危うく修羅場を目撃するところでした。
まぁこれは微笑ましいカップルの何気ない会話ですが、もしも実際、『口裂け女』のごとく「私、綺麗?」なんて言われたら、「綺麗」と答えないわけにはいきませんよね。相手が知り合いであれ、誰であれ、「綺麗じゃない」とは、それこそ口が裂けても言えません。
自分は聞かないし、聞かれることもないと思っているそこのあなた。実はあなたも同じような質問を誰かにしているかも。もしくはされたことがあるかもしれません。
──「私、いくつに見える?」
ほら、覚えがあるでしょう?
私はね、『口裂け女』と違って、この質問には答えがないと思うんです。
実年齢より若く答えて欲しいんでしょうが、よほどその自信があるのかなぁなんて考えたり。それ以外の答えをすると「あぁ・・・」なんて落胆されるのがオチなんですよね。いやいや、そっちが聞いてきたんじゃないかと。
でも、よく考えると、若すぎる答えも逆に失礼だと思いません? たとえば20代の子に聞いたとしますよね。「私、いくつに見える?」女の子にとっては自分より歳下のはずはないから、結局どんな答えも失礼に聞こえるし、かといって「永遠の18歳」なんて極端な解答をすれば馬鹿にしてると思われる。「あなたおばさんですよね」って言ってるのと同義ですよね。
どういう答えを求めているかっていうのは、人それぞれ違うと思うんです。正解の基準は質問する人の『主観』によるものであって、世の中全ての人の共通認識ではないわけだから、私が私の『主観』で答えても、永遠に正解なんて出ないじゃないですか。しかも、それでまだしも得るものがあれば良いですけど、悩みに悩んで空振りをし続けるだけというか、その人の『主観』になることは絶対にあり得ないので、お互いに平行線のままいつまでも交わることがない。つまり、空虚な話だなぁと感じてしまうわけです。
まぁ強いて正解があるとすれば実年齢ドンピシャリでしょうか。
でもそれだってなかなか難しいですよね。わざわざ聞いてくるってことは、実は自分が思ってるより歳上なのかもって深読みして、実年齢より上を答えてしまう可能性だってあるし。それって結局、どっちにとってもメリットがないなぁなんて思うんです。
かくいう私はね、そういうやりとりが面倒だと思ってしまうたちなので、必要とあらば自分から先に年齢を言っちゃいます。そうすればお互いに楽でしょう? 悩む時間をもっと別のことに使ったほうが有意義だしね。
とはいえ、私はどちらかというと若く見られるほうなんです。だから余計にそういうふうに思うのかもしれません。まぁ若く、というか身長が低いので“幼く“見られがちなんですね。30も過ぎれば幼いも何もないので、相対的に若く見えるということでしょうね。
なんでこんな話をしたかというとね、私もう衝撃だった出来事があって。今でも忘れられないんだけど。高校を卒業する年のことです。来年の春、数ヶ月後には大学生という時に、初めて行った美容院の男性に「中学生?」なんて言われたんですよ。
私、そんなに子供っぽく見えるんだ?って。私の高校3年間って一体なんだったのって。なんだか私の時間をなかったことにされたみたいで、ものすごくショックだったんです。
その人も悪気があって言ったわけじゃないのはもちろんわかるし、大人になってからの“若い“とは意味が違うかもしれないけど、「若く見える」っていうのも時には相手を傷つけることがあるんです。
そりゃ歳を取れば取るほど、若いね元気だねって言われるのは嬉しくなると思うけど、でも私は、歳相応や歳上にみられると、それはそれで嬉しいなと感じるんです。だって、「あぁ私、ちゃんと生きてきたんだな」「これまでの人生経験、ちゃんと糧になってるな」って実感できるから。
ね、悪くないでしょう? 歳を取らないと出ない貫禄とか色気とか、そういうのも素敵だなと思うんですよ。
一生懸命若作りするより、自然体で生きているほうが若く見えるのはそういうことなのかもしれませんね。きっと、無理せず楽しく、毎日を、人生を、過ごしているから。
さあ。あなたはあなたらしく、私は私らしく、明日からも良い一日を重ねていきましょうね。それでは、また来週。深見小夜子でした。
『タイムカプセル』に限らず、皆さんも日記とかブログとか、今はSNSでしょうか。日々の記録を後になって見返すなんてことも多いと思います。私はね、いわゆるネタ帳なるものを持ち歩いているんですが、なんということはありません。日々、遭遇した出来事を書き連ねて、いつか、たとえばこういう場で披露することがあるかもしれない、小説のトリックに使えるかもしれない、そんなふうに考える時間が何より好きなんですね。
ちなみに最近、そのネタ帳に書いた話で印象的だったのは『口裂け女』ですかねぇ。そうそう、「私、綺麗?」って台詞が有名なあの人です。
私は人間観察を兼ねて、カフェで仕事することもあるんですが、そこで隣に座ったカップルがそんな話をしてたんです。女の子のほうが「ねえねえ。私、綺麗?」なんて無邪気に言うわけです。そうしたら男の子が「なになに、口でも裂けたの?」って笑いながら返すものですから、危うく修羅場を目撃するところでした。
まぁこれは微笑ましいカップルの何気ない会話ですが、もしも実際、『口裂け女』のごとく「私、綺麗?」なんて言われたら、「綺麗」と答えないわけにはいきませんよね。相手が知り合いであれ、誰であれ、「綺麗じゃない」とは、それこそ口が裂けても言えません。
自分は聞かないし、聞かれることもないと思っているそこのあなた。実はあなたも同じような質問を誰かにしているかも。もしくはされたことがあるかもしれません。
──「私、いくつに見える?」
ほら、覚えがあるでしょう?
私はね、『口裂け女』と違って、この質問には答えがないと思うんです。
実年齢より若く答えて欲しいんでしょうが、よほどその自信があるのかなぁなんて考えたり。それ以外の答えをすると「あぁ・・・」なんて落胆されるのがオチなんですよね。いやいや、そっちが聞いてきたんじゃないかと。
でも、よく考えると、若すぎる答えも逆に失礼だと思いません? たとえば20代の子に聞いたとしますよね。「私、いくつに見える?」女の子にとっては自分より歳下のはずはないから、結局どんな答えも失礼に聞こえるし、かといって「永遠の18歳」なんて極端な解答をすれば馬鹿にしてると思われる。「あなたおばさんですよね」って言ってるのと同義ですよね。
どういう答えを求めているかっていうのは、人それぞれ違うと思うんです。正解の基準は質問する人の『主観』によるものであって、世の中全ての人の共通認識ではないわけだから、私が私の『主観』で答えても、永遠に正解なんて出ないじゃないですか。しかも、それでまだしも得るものがあれば良いですけど、悩みに悩んで空振りをし続けるだけというか、その人の『主観』になることは絶対にあり得ないので、お互いに平行線のままいつまでも交わることがない。つまり、空虚な話だなぁと感じてしまうわけです。
まぁ強いて正解があるとすれば実年齢ドンピシャリでしょうか。
でもそれだってなかなか難しいですよね。わざわざ聞いてくるってことは、実は自分が思ってるより歳上なのかもって深読みして、実年齢より上を答えてしまう可能性だってあるし。それって結局、どっちにとってもメリットがないなぁなんて思うんです。
かくいう私はね、そういうやりとりが面倒だと思ってしまうたちなので、必要とあらば自分から先に年齢を言っちゃいます。そうすればお互いに楽でしょう? 悩む時間をもっと別のことに使ったほうが有意義だしね。
とはいえ、私はどちらかというと若く見られるほうなんです。だから余計にそういうふうに思うのかもしれません。まぁ若く、というか身長が低いので“幼く“見られがちなんですね。30も過ぎれば幼いも何もないので、相対的に若く見えるということでしょうね。
なんでこんな話をしたかというとね、私もう衝撃だった出来事があって。今でも忘れられないんだけど。高校を卒業する年のことです。来年の春、数ヶ月後には大学生という時に、初めて行った美容院の男性に「中学生?」なんて言われたんですよ。
私、そんなに子供っぽく見えるんだ?って。私の高校3年間って一体なんだったのって。なんだか私の時間をなかったことにされたみたいで、ものすごくショックだったんです。
その人も悪気があって言ったわけじゃないのはもちろんわかるし、大人になってからの“若い“とは意味が違うかもしれないけど、「若く見える」っていうのも時には相手を傷つけることがあるんです。
そりゃ歳を取れば取るほど、若いね元気だねって言われるのは嬉しくなると思うけど、でも私は、歳相応や歳上にみられると、それはそれで嬉しいなと感じるんです。だって、「あぁ私、ちゃんと生きてきたんだな」「これまでの人生経験、ちゃんと糧になってるな」って実感できるから。
ね、悪くないでしょう? 歳を取らないと出ない貫禄とか色気とか、そういうのも素敵だなと思うんですよ。
一生懸命若作りするより、自然体で生きているほうが若く見えるのはそういうことなのかもしれませんね。きっと、無理せず楽しく、毎日を、人生を、過ごしているから。
さあ。あなたはあなたらしく、私は私らしく、明日からも良い一日を重ねていきましょうね。それでは、また来週。深見小夜子でした。
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