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おばちゃん娘
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さて、今日は〇月〇日。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
今年はあまり雪が降らない年ですが、皆さん、お出かけの際は何を着て行きますか? 地元ではもこもこのダウンや完全防備なベンチコートなども見かけたものですが、やっぱり都会はシュッとしてらっしゃる方が多いですよね。チェスターコートというんでしょうか、あとはもう少し気温が高ければトレンチコートもよく見ますね。男性も女性も着膨れしないような、スマートな雰囲気です。
先日、友人が自宅からさあ仕事に行こうなんて歩き出した時、近くのアパートからおばちゃんが出て来たそうなんですね。小柄でニット帽とジャンパーを身につけていて、雨でもないのにウィンドブレーカーというのか、中学生が部活動でよく着るようなスポーツウェアのズボンと、足元はブーツというより長靴を履いていたそうです。後ろ姿は完全におばちゃんで、こんな朝早くにどこに行くんだろうなんて通勤路を歩いていると、信号に引っかかりました。
そのおばちゃんが鞄からスマホを取り出したので、興味本位で隣に並んでみたそうです。横顔が見られるかと思って。そうしたら、びっくり仰天。若い女の子だったそうなんですね、新卒入社くらいの。
「えー何それ」なんて話を聞いていた私ですが、友人は「誰に指示されたんだろうあんな格好」などと独自の見解を述べておりました。
「指示?」と聞くと、「だって普通自分の意思であんな格好しないよ? 可愛い子だったから、嫉妬に狂った彼氏とか、心配したお母さんとかがやらせてるに違いない」と。つい笑ってしまいましたが、まぁ私としては、よっぽど自分に自信がないかお洒落に無頓着か、それとも意思がなさすぎるのか、その女の子のことを考えるとそれはそれで危うい面もあるような気もしてしまうのですが。まぁお洒落に無頓着というのは、私も経験がありますから、人のことは言えませんが。
それはともかく、私も昔、韓国の女性アイドルグループが曲によってメイクを変えた際、「本当に同じ人?」などと戸惑ったことがありますから、人間というのは案外簡単に別人になりきれるものなのかもしれませんね。
顔や雰囲気は、メイクに服装などで容易に変えられるものです。一度しか会ったことのない人だったら、絶対に見抜けないでしょう。リーガルドラマなんかでは防犯カメラ映像を確認したりしますが、警察ドラマで3D認証のような解析でもしなければ、同一人物とは気がつかないかもしれませんよね。特に私などは顔で覚えるのではなく、人を雰囲気で見るところがあるので、それががらりと変わると困りますね。普段は化粧をしない男性こそ化粧が映えたり、それでなくても髪型や眉毛の印象を変えるだけでも「誰?」となってしまうこともあります。3Dで人物が描かれているゲームなどはいい例かもしれませんね。メタ発言になるかもしれませんが、同じ人なのですから、同じ顔の素材を使っているはず。それなのに、全く別人に見える。精巧に作られた素材ですらそうなのですから、実在する人の顔などそりゃもう自由自在でしょという気にさえなってしまいます。
とはいえ、顔や雰囲気はある程度変えられても、簡単に変え難いのは、『声』のほうかもしれませんね。声優さんでもない限り、七色の声を出すということはおそらく難しいでしょう。『話し方』もそうですが、癖というのは抜けないものですから、黙っていれば別人に見えても、口を開けば「あぁあの人か!」と思うこともありますよね。
ドラマでもアニメでも、終盤まで同一人物だと隠しておきたいキャラクターがいても、姿は違えど声は変えられないから、結局エンドロールでネタバレしてしまうということもあって、なんだかもったいない気持ちになってしまいます。それも伏線の一つといえばそうなのですが、勘がいい方には「同じ人なの?」とすぐに気づかれてしまって驚きが半減してしまうことも。
ところで、主にアイドルなど育成ゲームを元としている物語には、よく兄弟姉妹が登場します。双子も多いですよね。それは当然、兄弟や姉妹にしかわからない葛藤・悩み、双子でしか味わえない喜びや苦しみがあるからだと思うのですが、声優さんってどう決めているのでしょうね。俳優さんは実際に双子だったり、雰囲気が似ていたりしますが、双子の場合は同じ方が担当されることも多いですし、しかも同じ人なのにキャラクターごとに違うように感じるからプロだなぁと感動しますよね。
このように一人二役はよく見ますが、二人一役というのができないのは、やっぱり顔や雰囲気と違って声は変えられないということなのでしょうね。
声というのは骨格や口腔内──口の中のつくりによって人それぞれ違うのだと聞いたことがあります。この認識が正しいかどうかはわかりませんが、骨格レベルで違うものをどうこうしようというのは無理があるのでしょう。いくら声質や声の雰囲気が似ていても『別人の声』が出るのは確かに違和感がありますものね。
『変装の達人』や『他人に完全になりきれる能力』等を持つキャラクターでも、実際は同じ作品に登場するなりかわった人物の声が当てられていることが常です。余談ですが、この時点で皆さんが思い浮かべるアニメはきっと十中八九、同じでしょうね。ともあれ、どんなに上手に物真似しても、『全く同じ声』は決して存在しませんからね。
でも、二人一役ちょっと面白そうだなと思うんですよねぇ。もちろん物は考えようなので、分身や何らかの能力で姿を増やして、その姿をそれぞれ変えて声も別人にするということはできると思います。実際にそういうアニメもたくさんありますよね。
一人の姿で複数の声を持つ、というのは現実的ではありませんが、私は昔から「別の誰かになりたい」と思っていたものですから、好きなアニメのキャラクターになりきったり、アイドルになった自分を想像したりしたものです。
私は極端な例かもしれませんが、皆さんの中にも多かれ少なかれ、そういう経験があるという方はいらっしゃるのではないでしょうか。
まぁ、私の場合は『自分がなりきれないなら、作ってしまえ』という豊臣秀吉的な考えとも言えますが、ここで一つやってみましょうか。
たとえばですね、中性的なキャラクターがいたとして──元は男性でも女性でもいいのですが──、男の人の声と女の人の声が姿形の変わらない人物から出て、それがまるっとそのキャラクターであってもいいと思うんです。なんでしょう、声が変わると『別の人間』、少なくとも『分離した存在』というイメージがあります。でも、同じ自分でも『喜怒哀楽』で声のトーンが変わりますよね。もちろんその人が出せる音域声域の中での話ですが。
その極端な場合を想像してもらえればいいでしょうか。
『喜怒哀楽』で考えると、「怒っている時のあの人は別人みたいだ」とか、「泣いている姿なんて見たことない」とか、「いつもは賑やかで楽しい人なのに、実は一人でいる時は静かで冷静な人なんだ」とか。私たちが日々生活する世界でも、それは珍しくありません。
私の中にも『私が知らない私』がきっとまだまだいて、それなら当然、私でない『あなたの中のあなた』を知る術は全くもってありませんから、きっと私たちは自分でない他人のことなんて全く知らないのと同じことなのでしょう。
人格や性格といった表面に出やすいところ以外にも、私たちは他人に理解できないこと、いえ、もしかしたら自分にさえ理解できていないことをたくさん内に秘めているのです。
私は周りに影響されやすいたちですが、だからといって自分の意見がないわけでは決してない。私たちはそうやって、大部分は私、その他の小さな小さな部分はあなたや身近な人、見知らぬ誰かの一部分なのかもしれません。その集合体を私という人間にくっつけて生きているのだと思っています。
そろそろお別れの時間です。
怒っていても泣いていても、声と同じく、『それが私』であることは変えられません。
どんなに辛くても、どんなに苦しくても、それがたとえ『私の中の誰か』が背負ってくれるものだとしても、それも全部ひっくるめて『私』なのです。
心の中にいる私を全て解き放つというのは、たぶん普通の状態ではないのでしょう。でも、私たちはそうやって自分の中の他人──もとい自分と生きているのです。
個人的にはそれが『声も顔も違う別人』であってもいいと思っています。有り体に言えば、それは私が憧れる姿、なりたい自分なのかもしれませんから。
それってね、素敵なことだと思うんですよ。
だって、それはもういるってことじゃないですか。私の中に、その『憧れの私』が、『なりたい自分』が、ちゃんと一緒にいるということですよね。
表には出せなくても、こうなりたい理想の姿というのは心の中にいるだけ、自分の中にあるだけで違うものです。
よく、聞いていると眠くなる声の人っていますが、もちろん話の途中で寝るのは失礼だし良くないけれど、裏を返せばリラックスする、聞き心地のいい声だとも言えますよね。
深夜のラジオ番組。たまに寝落ちするなんてコメントをいただきますが、「そんな私も私であって欲しい」と思っている私としては、嬉しい限りです。
いつも聴いてくれてありがとう。
また来週お会いしましょう。眠れない夜のお供に、深見小夜子でした。
今年はあまり雪が降らない年ですが、皆さん、お出かけの際は何を着て行きますか? 地元ではもこもこのダウンや完全防備なベンチコートなども見かけたものですが、やっぱり都会はシュッとしてらっしゃる方が多いですよね。チェスターコートというんでしょうか、あとはもう少し気温が高ければトレンチコートもよく見ますね。男性も女性も着膨れしないような、スマートな雰囲気です。
先日、友人が自宅からさあ仕事に行こうなんて歩き出した時、近くのアパートからおばちゃんが出て来たそうなんですね。小柄でニット帽とジャンパーを身につけていて、雨でもないのにウィンドブレーカーというのか、中学生が部活動でよく着るようなスポーツウェアのズボンと、足元はブーツというより長靴を履いていたそうです。後ろ姿は完全におばちゃんで、こんな朝早くにどこに行くんだろうなんて通勤路を歩いていると、信号に引っかかりました。
そのおばちゃんが鞄からスマホを取り出したので、興味本位で隣に並んでみたそうです。横顔が見られるかと思って。そうしたら、びっくり仰天。若い女の子だったそうなんですね、新卒入社くらいの。
「えー何それ」なんて話を聞いていた私ですが、友人は「誰に指示されたんだろうあんな格好」などと独自の見解を述べておりました。
「指示?」と聞くと、「だって普通自分の意思であんな格好しないよ? 可愛い子だったから、嫉妬に狂った彼氏とか、心配したお母さんとかがやらせてるに違いない」と。つい笑ってしまいましたが、まぁ私としては、よっぽど自分に自信がないかお洒落に無頓着か、それとも意思がなさすぎるのか、その女の子のことを考えるとそれはそれで危うい面もあるような気もしてしまうのですが。まぁお洒落に無頓着というのは、私も経験がありますから、人のことは言えませんが。
それはともかく、私も昔、韓国の女性アイドルグループが曲によってメイクを変えた際、「本当に同じ人?」などと戸惑ったことがありますから、人間というのは案外簡単に別人になりきれるものなのかもしれませんね。
顔や雰囲気は、メイクに服装などで容易に変えられるものです。一度しか会ったことのない人だったら、絶対に見抜けないでしょう。リーガルドラマなんかでは防犯カメラ映像を確認したりしますが、警察ドラマで3D認証のような解析でもしなければ、同一人物とは気がつかないかもしれませんよね。特に私などは顔で覚えるのではなく、人を雰囲気で見るところがあるので、それががらりと変わると困りますね。普段は化粧をしない男性こそ化粧が映えたり、それでなくても髪型や眉毛の印象を変えるだけでも「誰?」となってしまうこともあります。3Dで人物が描かれているゲームなどはいい例かもしれませんね。メタ発言になるかもしれませんが、同じ人なのですから、同じ顔の素材を使っているはず。それなのに、全く別人に見える。精巧に作られた素材ですらそうなのですから、実在する人の顔などそりゃもう自由自在でしょという気にさえなってしまいます。
とはいえ、顔や雰囲気はある程度変えられても、簡単に変え難いのは、『声』のほうかもしれませんね。声優さんでもない限り、七色の声を出すということはおそらく難しいでしょう。『話し方』もそうですが、癖というのは抜けないものですから、黙っていれば別人に見えても、口を開けば「あぁあの人か!」と思うこともありますよね。
ドラマでもアニメでも、終盤まで同一人物だと隠しておきたいキャラクターがいても、姿は違えど声は変えられないから、結局エンドロールでネタバレしてしまうということもあって、なんだかもったいない気持ちになってしまいます。それも伏線の一つといえばそうなのですが、勘がいい方には「同じ人なの?」とすぐに気づかれてしまって驚きが半減してしまうことも。
ところで、主にアイドルなど育成ゲームを元としている物語には、よく兄弟姉妹が登場します。双子も多いですよね。それは当然、兄弟や姉妹にしかわからない葛藤・悩み、双子でしか味わえない喜びや苦しみがあるからだと思うのですが、声優さんってどう決めているのでしょうね。俳優さんは実際に双子だったり、雰囲気が似ていたりしますが、双子の場合は同じ方が担当されることも多いですし、しかも同じ人なのにキャラクターごとに違うように感じるからプロだなぁと感動しますよね。
このように一人二役はよく見ますが、二人一役というのができないのは、やっぱり顔や雰囲気と違って声は変えられないということなのでしょうね。
声というのは骨格や口腔内──口の中のつくりによって人それぞれ違うのだと聞いたことがあります。この認識が正しいかどうかはわかりませんが、骨格レベルで違うものをどうこうしようというのは無理があるのでしょう。いくら声質や声の雰囲気が似ていても『別人の声』が出るのは確かに違和感がありますものね。
『変装の達人』や『他人に完全になりきれる能力』等を持つキャラクターでも、実際は同じ作品に登場するなりかわった人物の声が当てられていることが常です。余談ですが、この時点で皆さんが思い浮かべるアニメはきっと十中八九、同じでしょうね。ともあれ、どんなに上手に物真似しても、『全く同じ声』は決して存在しませんからね。
でも、二人一役ちょっと面白そうだなと思うんですよねぇ。もちろん物は考えようなので、分身や何らかの能力で姿を増やして、その姿をそれぞれ変えて声も別人にするということはできると思います。実際にそういうアニメもたくさんありますよね。
一人の姿で複数の声を持つ、というのは現実的ではありませんが、私は昔から「別の誰かになりたい」と思っていたものですから、好きなアニメのキャラクターになりきったり、アイドルになった自分を想像したりしたものです。
私は極端な例かもしれませんが、皆さんの中にも多かれ少なかれ、そういう経験があるという方はいらっしゃるのではないでしょうか。
まぁ、私の場合は『自分がなりきれないなら、作ってしまえ』という豊臣秀吉的な考えとも言えますが、ここで一つやってみましょうか。
たとえばですね、中性的なキャラクターがいたとして──元は男性でも女性でもいいのですが──、男の人の声と女の人の声が姿形の変わらない人物から出て、それがまるっとそのキャラクターであってもいいと思うんです。なんでしょう、声が変わると『別の人間』、少なくとも『分離した存在』というイメージがあります。でも、同じ自分でも『喜怒哀楽』で声のトーンが変わりますよね。もちろんその人が出せる音域声域の中での話ですが。
その極端な場合を想像してもらえればいいでしょうか。
『喜怒哀楽』で考えると、「怒っている時のあの人は別人みたいだ」とか、「泣いている姿なんて見たことない」とか、「いつもは賑やかで楽しい人なのに、実は一人でいる時は静かで冷静な人なんだ」とか。私たちが日々生活する世界でも、それは珍しくありません。
私の中にも『私が知らない私』がきっとまだまだいて、それなら当然、私でない『あなたの中のあなた』を知る術は全くもってありませんから、きっと私たちは自分でない他人のことなんて全く知らないのと同じことなのでしょう。
人格や性格といった表面に出やすいところ以外にも、私たちは他人に理解できないこと、いえ、もしかしたら自分にさえ理解できていないことをたくさん内に秘めているのです。
私は周りに影響されやすいたちですが、だからといって自分の意見がないわけでは決してない。私たちはそうやって、大部分は私、その他の小さな小さな部分はあなたや身近な人、見知らぬ誰かの一部分なのかもしれません。その集合体を私という人間にくっつけて生きているのだと思っています。
そろそろお別れの時間です。
怒っていても泣いていても、声と同じく、『それが私』であることは変えられません。
どんなに辛くても、どんなに苦しくても、それがたとえ『私の中の誰か』が背負ってくれるものだとしても、それも全部ひっくるめて『私』なのです。
心の中にいる私を全て解き放つというのは、たぶん普通の状態ではないのでしょう。でも、私たちはそうやって自分の中の他人──もとい自分と生きているのです。
個人的にはそれが『声も顔も違う別人』であってもいいと思っています。有り体に言えば、それは私が憧れる姿、なりたい自分なのかもしれませんから。
それってね、素敵なことだと思うんですよ。
だって、それはもういるってことじゃないですか。私の中に、その『憧れの私』が、『なりたい自分』が、ちゃんと一緒にいるということですよね。
表には出せなくても、こうなりたい理想の姿というのは心の中にいるだけ、自分の中にあるだけで違うものです。
よく、聞いていると眠くなる声の人っていますが、もちろん話の途中で寝るのは失礼だし良くないけれど、裏を返せばリラックスする、聞き心地のいい声だとも言えますよね。
深夜のラジオ番組。たまに寝落ちするなんてコメントをいただきますが、「そんな私も私であって欲しい」と思っている私としては、嬉しい限りです。
いつも聴いてくれてありがとう。
また来週お会いしましょう。眠れない夜のお供に、深見小夜子でした。
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