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【我儘姫に溺愛を】
君の帰る場所
しおりを挟む「もう晴也のバカ!もう知らない!」
「ごめんね、もうしないから」
朝から喧嘩して、夜に喧嘩で終わる。
それが僕達の日常だ。
喧嘩の原因はほとんど僕。
僕は我儘すぎるのだ。
何をしても気に食わないとカッとなって言ってしまう僕の事が大大大嫌いだ。
生まれた環境が僕を我儘にさせてしまった。
晴也にばっか迷惑を掛けてしまう。
そろそろ晴也に出て行けと言われてしまう時期になりそう。
僕は泣きに泣きまくって腫れた瞼を擦り、ベッドから出た。そして、目の前にあった紙袋に物や洋服を詰め込む。全て晴也に買ってもらった物だがここから出て行くとなると、これらが無いとこの先、生きていく事が出来ない。
物を詰め込むにつれて思い出す、沢山の晴也と過ごした記憶。可愛いとも好きとも愛してるも言ってくれた。キスをしてくれたり、ハグもしてもらった。もう僕はもう十分幸せをもらった。次は僕が晴也に幸せをあげる番だ。
我儘で頑固で、優しくない僕よりも優しくて、晴也の全てを肯定してくれる人の方が晴也も幸せに暮らせるだろう。晴也の赤ちゃんはきっとすんごく可愛いんだろうな、
僕は赤ちゃんは産めないから。
涙が止まらない、今までに無いくらい涙をたくさん流した。
ごめんね。ごめんね。晴也、愛してる。ごめんね。
「晴也ぁ、うぅ、ごめんね、た、沢山迷惑掛けちゃった、、」
「ごめんね、大好き、ありがとうっ、うぅ」
同じベッドで寝ていた晴也に静かな声で謝った。涙で濡れていた手を拭いて、晴也の頬に手を伸ばした。相変わらず暖かくて手が離せなかった。もうここには戻らないと考えたら、大きな声で嫌だと叫びたくなった。今すぐに晴也を起こして出て行きたく無いと縋りそうになったが、それを抑えて紙袋を持ち、ドアに向かって歩いて行った。
ドアノブに触れて、回そうとした瞬間、僕の手より一回り大きな手が重なった。
「俺は迷惑だなんて思った事一度も無いよ」
「そんな君も可愛いねって言ってるのに君はなんでそんな嘘をつくのって何度も否定してくる。でも、それも愛おしてくて可愛い。」
晴也はゆっくりとアレスが持っていた紙袋を取って遠くに置いた。泣きすぎて立っている事すら難しそうにしていたアレスを抱き抱えて、精一杯の力でアレスを抱きしめた。アレスは晴也の大きくて暖かい背中に腕を回しながら寝てしまっていた。晴也の腕の中でスヤスヤと寝ているアレスの頭に晴也はそっとキスを落とした。
「俺の可愛い我儘姫......
何か言葉に出すと恥ずかしいな。まぁ本当の事だしなぁ。」
(恥ずかしいよバカ)
目が覚めると痛いぐらいにひっついている晴也をどけてベランダに出る。
朝になるとなぜか顔を出してくる猫が目の前にいる。いつもは晴也が撫でてそれを見ているだけだった。撫でらている猫に少し羨ましいと思って嫌悪感を抱いていたが、今日は違う。
「.....お、おいで」
ニャン
おいでと言った瞬間、こちらに来てアレスの手に頬擦りをした。気持ちよさそうにしているのを見て嬉しくなったアレスはにっこりと微笑んだ。
「可愛いな...僕もこのくらいの可愛さだったら良かったのに。」
「アレスはもっと可愛いよ」
ベランダで顔を出していた晴也がニコリと微笑んだ。
「....知ってるもん。」
僕の可愛さを知ってるのは晴也だけでいい。
だから、晴也も愛おしく僕を見つめる目を誰にも見せちゃダメだからね。
これは誰でも惚れちゃう目してるからね。
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