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本編②
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しおりを挟む「はぁ~。揃いも揃ってなんで僕に何も言わないで消えちゃうんだろうね。」
事情を言った後ギルさんは俺とライジルを見ながらそう言った。
あははと気まずそうに笑う。
「イチヤくんを見つけられて安心したよ。
でも、僕が一番ショックだったのは、君に逃げられたことだよ。」
そう言ってギルはライジルを見た。
多分、ライジルもギルさんから逃れる為に執事になる選択をしたのだろう。
言った後、ライジルは珍しく机に肘をつき溜息をついた。
「...身分の差って知ってます?
知ってると思いますけど、私は貴族達に身体や踊りを売る場所で生まれました。そんな奴がどうして貴方みたいな、上にいるような貴方と恋をしなければならないのですか。侮辱なんですか?」
「そんな事思って話してないよ、僕は君がいい...」
ギルさんが言おうとした言葉を遮ってライジルが立ち上がって声を上げた。
「私は幼い頃からお前は下民と言われて育ちました。実の親にも言われたんです。下民ですよ?影に隠れ、夜には端ない格好で気味の悪いどこぞの知らない貴族に身体を見せびらかして、薄汚い、ネズミのような人間がどうやって身分の高い貴方を見ればいいんですか。」
ライジルも辛い過去があり、自分は下民だと自分に言い聞かせて暮らしていたのだ。
俺がライジルにダイエットしてもらった時も、
俺にアドバイスをくれた時も、
貴方に着いて行きますと言ってくれた時も、
ライジルは自分の身分に縛り付けられてた。
そう思うと、ライジルの全てを解放してやりたくて、体をガタガタと振るわせ、自分で自分を抱きしめているかのように回している腕に更に寂しさで胸が苦しめられる。
「....ライジル。俺も底辺侯爵家だよ。
それでもライジルは俺とグランとの恋を応援してくれた。少しでも希望があるんじゃないかって。それが凄く嬉しかった。俺が学園の話をしたら嬉しそうに聞いてくれて笑顔がいつまでたっても絶えないライジルを見て、また頑張ろうって勇気が出た。だからライジルも本当の事を言って欲しい。身分に縛り付けられるのは本当に辛い。だって身分の差で心中した事件なんて沢山ある。それでもライジルは死を選ばないでここまで生きてくれた。ライジルは凄く凄く良い人だから身分の差を超えたって誰も怒らないよ。神様だって許してくれる。」
俺の気持ちを出来るだけたくさんたくさん、語彙力高めの言葉にしたはず。
おかしいところも脱線してるところもあったけどこれが俺の伝えたい事だ。
ライジルは涙を流した後、俺にありがとうございますとだけ伝えて、ギルの手を取り部屋を後にした。
部屋までついて行きたかったが我慢だ。
我慢、我慢。
見てぇ~。
着いて行こうと、歩き出そうとした瞬間、ギルさんに名前を呼ばれた。
バレたかと死を覚悟していたが違かった。
「そこのトランクは君へのプレゼントだよ。
大切にしてね。」
気持ちいいぐらいのウインクをして部屋が一気にシンとなった。
トランクを見ると一枚の紙とキラキラと光で輝いている鍵があった。
紙を見ると、
「遅れてやってくる主役が誰よりも輝く
素敵な一日を、」
とだけ書いてあり、中を開けてみると、黒のセミフォーマルに青の刺繍が入っていて、白の花が胸元に綺麗に咲いていた。服の下には赤と黒で出来た目を隠すだけの綺麗な仮面が入っていて、何に使うのかまったくわからなかった。
主役?これを誰かに渡すのか?いや、そうだとしたら普通、届けて欲しい持ち主の名前を書くはずだ。
そう考えているか否や、突然扉が勢いよく開いた。驚いた俺は身体のバランスがうまく持てず、よろめいてしまった。
マレラ、ジースがこちらを見てニヤニヤしている。いつもは無表情のジースが笑っていて、なぜか腕のシャツを捲し上げて、至る所の関節を鳴らしていた。マレラはいつも俺を実験台にして化粧を練習していた為、マレラが持っている大量の化粧ポーチを見たら誰にもバレないように逃げていたりしていた。
嫌な予感がする。そんな感じがした。
そんな感じしかしない。
「やっと化粧の努力が実りますよ。」
「キラキラにしてやりますよ。イチヤ。」
嬉しいのか嬉しくないのか、冷や汗が垂れてきた。何をされるのか分からないイチヤはか弱い声で二つ返事しかできなかった。
___
ギル×ライジルは別の小説で連載している、
【それぞれの幸せと幸福を】
で投稿します。
アレスとイチヤが入れ替わっているので現実世界で頑張ってるアレスの小説もあります。
是非見てみてください。
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