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本編②
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しおりを挟む街で一人買い物をしていると今日はやけに人が集まっていた。主に女性が集まっていて歓声や嬉しそうな声や啜り泣く声が聞こえる。多分これは国民にとって嬉しい報告なのだろう。
イチヤは何も気にせずに歩き始めた。
まぁ自分には得はない報告だろう。
「王子の婚約者を決める舞踏会を開催する。
参加者は他国の貴族及び、この国の国民全ての人の参加権を与える。この権利は国王からの命令であって必ず守らなければいけない!」
その言葉にイチヤ足が止まる。
そっか、やっぱり結婚を決めるのか。
俺の事は忘れてもう前に進んでいるんだ。
たまに夢であの時手を離さずにいたらととんでもないものを見た事がある。
そんな選択なんてないのに。
でも夢の中の俺は幸せそうに微笑んでいて、相手も愛おしそうに俺のことを見つめていつまでもお互いがお互いの手を離さないでいた。
想い出すのはここら辺にしておいて、イチヤはそのまま歩いて行った。
家に帰るとライジルが出迎えてくれた。
靴についた泥を手で取り、買ったものをメイド達に渡した後、自室のベットに飛びついた。
グランを好きなのはもう自覚している。
そこから来るモヤモヤなのだろうか。
いつまで経ってもモヤモヤは消えない。
きっと心の中の片隅に、
俺のことを好きなんじゃないの?
と自己中心的な心情がある。
そのせいで俺は、なんとも言えない気持ちが心を支配している。
参加権は俺にもあるはずだ。
でも、俺はもう会う資格はない。
行きたくても行けない悲しさを噛み締めながら目を閉じた。
ごめんなさい。きっとグランにとって必要ない時間を過ごさせてしまった。
消えちゃいたい。
グランはもうルアーノと踊るって決めたのかな。ゲーム内ではグランは夜踊る相手を決める。もちろんヒロインであるルアーノが踊り、12時になるとルアーノが小さい頃に出逢ったあの子だと判明し、結ばれる。
俺はこのラストを見て不甲斐にも泣いてしまった。想いが通じ合うのは本当に感動してしまう。いいな。でも今は結ばれるのは分かってる。そう、祝うべきことなのに、
(見たくもないし、聞きたくない。)
イチヤは深くそう思った。
“ 俺の事一生引きずってればいいのに ”
ドロドロで醜い嫉妬の気持ちが溢れた。
__
いつの間にか寝てしまって窓を見ると暗くなっていた。いつもはライジルが夜寝れなくなるとしつこく起こしてくるのに今日は来なかった。
少し不思議になったイチヤは部屋を出て廊下を歩き、ライジルがよくいる一階の広い居間に向かって歩いていると何やら声がしてきた。
本当にボソボソしていて何を喋っているのか分からない。だが、今そのままにしたらダメな雰囲気がした。
もしかして執事達がどこから来たのか分からない男に襲われてるのかもしれない。
イチヤは足に力を全力で入れて昔から今まで鍛え上げられた足の速さで声のする方まで走った。
「やめろ!手を出すな!って、、へ?」
大の字にして大声で声のする方へ向かうと、
随分と身体を密着させて片方は頬を赤らめ、片方は顔は見えないが相手側の肩に銀髪の頭を埋まらせていた。アレスは初めて間近でみるBLにビックリして腰が抜けそうになった。
髪だけでも分かる美男美男BL!
だが興奮はするが驚きが隠せなくて声が震える。指を刺しながらイチヤはイチャイチャしている2人がイチヤの知ってる人だと確信した。
「な、な、何してんだ!ライジルから離れろ!、、?え!!ギルさん?!」
そうなのだ。さっきまで頬を赤らめていたのが真っ青になっているライジルに対して、ギルさんは何もなかったかのようにイチヤを見ている。ギルさんを最後に見たのはベルーダンスが成功したあの夜以来だった。
衣装を作ってくれたギルさんには申し訳ないと思ったが余裕がなかったイチヤは別れの挨拶をするが辛くてそのまま別荘へと逃げて行った。
「んーバレちゃったかぁ。」
「あ、当たり前です!私はイチヤ様を起こす為にここに来たんですから。バレて当然です」
「ねぇもう、僕と会ってくれないの?」
「.....これが最後だと言いました」
ん?まて?別れてんのか付き合ってんのか分かんない。でもギューされてた時のライジル、恋する女子ぐらい赤くなってて幸せそうだったけど。これは話し合いが必要だね。そうだ。
「とりあえずお茶出しますか?」
「うん。出して欲しいなイチヤくん」
全てを知っているかのような顔で見下されて、俺は返事をする事しか出来なかった。
まさかギルさんの想い人がライジルだとは思わなかった。ライジル髪が長い方であまりセットをしてないと顔は見にくいけどバシッと決めたときのライジル可愛いくてカッコいいからな。納得。
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