本物のシンデレラは王子様に嫌われる

深夜

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本編②

II

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イチヤと名乗り執事と暮らしてから月日がたいぶ経った。
今日の予定としては庭の散乱しすぎて頭を抱えたくなるぐらいの雑草をみんなで取る。
ライジルに叩き起こされた俺は庭に一人で先に行く事にした。前も少し見たがすごく広い。
庭と行っても奥にはさらに森があってそこまで雑草を取る体力はないので屋敷周辺の目立つ所を中心に綺麗に整える。
アレスの両親がここの屋敷を捨てると言っていたが捨てるのも無理はない。
外が広すぎて大変だったのだろう。
ライジルはここに一回来た事があると言っていた。別荘の見た目と雑草の散乱を見て一生住まないと思っていたが今なんと、住んでいる。
一生住まないと決めていたお屋敷が馬車を降りた時目の前にあったときのライジルがどんな顔をしていたのか想像出来るだろう笑
庭は執事達全員ですると決めていたので俺は庭の先に行って奥がどんな所なのか見ようと思って庭を歩き奥に進んでいった。
朝の木漏れ日がイチヤの顔に当たる。眩しいが暖かい太陽の日に当たったり当たらなかったりしながら歩くのはとてもロマンを感じてワクワクする。日に当たりながらの散歩なんて前世の方は絶対にしなかった。
散歩がこんなに気持ちいなんて聞いてない。

「はぁ~浄化されるわ」

そんな事を考えていると、目の前から人を突進するような勢いで鹿が走ってきた。
驚きでヒッとしか声が出なくてただ鹿が近付いてくる、突進されないように横にズレその場で腰を抜かした。心臓がバクバクして自分の息を吸う事を知らない途切れた息遣いが聞こえる。
死ぬかと思った。死因が鹿に突進されたが免れて良かった。

「し、しかかよ、なんだよ、突進してきて」

鹿を見ると怯えてるかのように隠れ、身体をぶるぶると振るわせ、か弱い声で鳴いていた。
不思議に思い鹿が走ってきた方を向くと遠くから大勢の男の声が森全体を響かせていた。

「....狩りだ。」

腰を抜かしてたイチヤだったがすぐに鹿の近くに行く。
まず、ここで狩りをしてるなんて思わないし、
動物がここまで怯えて怖そうにしてるのは初めて見る。狩りなんてただの趣味とかモテる為なんだからそこらへんで的作ってそれを使ってほしい。動物が的とか本当にありえない。
野生の動物はお前らに狩られるために生きてるんじゃないからな!
馬も元は野生だったんだから平等にしてやれ!
可愛い可愛いペットにしろ!

「大丈夫、守ってやるからな」

鹿に優しく触れ、なるべく近くにいて狩人の声がしなくなるまで座っていた。
遠くへ、もっと、もっと遠くへ行ってほしい。
そんなことを思っていたら、

「(なんか馬の足音が近くなってないか?)」

よく見ると一頭の馬とそこに乗っている男がこちらに向かってきている。
男は弓を鹿の方に向けて打つ手前までの準備をしていた。
こんなまだ生きて間もない鹿が死ぬんだったら濃い経験をした俺が死んだ方がマシだ!
イチヤは鹿の前で立って大の字に手足を広げて打つのを阻止する。

「やめろ!打つな!」

男はフードを深く被り顔は見えなかったがフードの隙間からオーラが見えていた。

「...っ!アレスくん?!」

「え?!ヴィターレ・ウリヒ?!?!」

前にグランのガチ恋勢お嬢様に言葉の暴力で殺されそうになった時に助けてくれたもう一人の攻略者。ヒロイン一筋で他国のスパダリ。
他国の王子様なのになんでこんな所で狩りなんてしているのだろうか。
ウリヒは馬から降り俺の隣に来た。

「アレスくんがいなくなったって聞いてびっくりして狩りって嘘をついて探しに来た」
「僕、グランより先に見つけた?」

ウリヒが俺の事探してたのか。
え、なんで。
ウリヒはヒロインに夢中でグランと取り合うのだが、なぜ今ここにいるんだ?
でもちょっと俺を見つけてくれたの嬉しい。

「ウリヒが最初に俺を見つけてくれた」

「ふふ、嬉しいなぁ」

ウリヒはイチヤの肩に寄っていた顔を膝に顔を置き、上からイチヤを見る。昔から変わらないアレスの綺麗な顔にウリヒは心臓をバクバクさせた。目が合ってる時と膝枕をしてくれてる時は時が止まればいいのにと思った。

「疲れちゃった...」

いや、そんな色っぽい顔を悪役に見せるのかよと背筋が凍ったがよく見るとウリヒの目に隈ができている。
相当探したのだろうか。そう思うと今離したら倒れてしまうのではないか。

「特別に休ませてあげる。少し寝てな」

アレスはフワフワの白髪を触りながら少しの時間を過ごした。学校に行くわけでもなく、目の前に広がるのはキツキツに建てられた家や大きなビルじゃなくてどこかの御伽話に出てきそうな雰囲気のある森。肌触りの良い風に当たりながら他国の王子様の膝枕をするなんて前世の世界では無理だ。今出来ることを噛み締めながらイチヤも眠りについた。

「ねぇ、もう本当の事を教えてよ。君は誰?」

ウリヒが真っ直ぐな目でこちらを見ていた。
寝るってのは嘘なのかよ。
やっぱりアレスにはなれなかったか、
もう、ウリヒに言ってもいいのかな。

「信じられないと思うけど、俺は違う世界から来たんだ。違う世界での俺は顔は不細工だし、性格も悪いし、こんなに優しい人達に恵まれるいいほど良い人間じゃないよ。」

「....違うよ、それは君目線で見た君だよ。」

「第三者、周りから見たら君は魅力的に見えたはずだよ。少なくとも僕はアレスくんがこの世界にいてもいなくても君に惹かれるよ。」

その言葉に涙が溢れた。
“ 君に惹かれるよ ” 

その言葉が嬉しくて、俺はウリヒが下にいるのにも関わらず涙を落としてしまった。
優しく拭ってくれて、笑顔でこちらを見ていた。

「本当の名を僕に教えてほしいな」

「....イチヤ」

「イチヤか。素敵な名前だね。」
















___

グランendかウリヒend でお悩み中です汗
どっちもいい!!!!!!!!











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