本物のシンデレラは王子様に嫌われる

深夜

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本編

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「外が騒がしいな」

ルアーノの公演を待っている時、やけに外が騒がしい事に気がついたグランはハッキリと聞こえる場所へ行き、街の様子を密やかに見た。
拍手や人の賑やかな声、楽しそうな音楽も聞こえてグランは微笑ましい気持ちで外の音を聞いている。
外の様子が気になっているのはグランだけではなく、他の生徒の人達も何やら騒がし街を見たそうにしている生徒が沢山いた。

だが、誰かによる声で一瞬にして空気が変わり始めた。

「みんな今日は何しに来たの!ルアーノの踊りを見て来たんでしょ?!外ばっか見るの辞めなよ!!」

ルアーノといつも一緒にいる人達がそう言い始めた。どうやら外ばかりを気にしている生徒達が気に食わないのだろう。
だが、生徒が見るのもおかしくはない、

グランはその人物に気付くと息が止まった。
人が沢山いる中真ん中で踊っている人が一人。
遠目でも分かるぐらいの美しさと踊りは学園内の殆どの人を魅了した。
曲のリズムに乗って軽やかに踊っているその姿は、歴史の授業で聞いた、ベリーダンスが身近で毎日の様にダンスが開催され、騒がしく、楽しく、鮮やかな暮らしをしていたと書かれていた昔の自分達の街を見ているようだった。
誰かが入ってきても怒らずに笑顔で踊り、音楽が変わってもビクともしない顔で踊りを変えていく。
グランは本当のベリーダンスを見ているようで目が離せなかった。

そんな楽しそうな国民を引っ張っている人は、
白を纏い、軽やかに踊っている人は確かに、
「アレス・ディスタニア」
だったのだ。

グランは驚きで身体が動かなかった。
惹かれるように更に見える所に行く。
アレスと目が合えば良いのにすら思っている自分の心を疑いたくなる。



「ひゅー!綺麗だよ!踊り子さんよ~!!」

誰かの声がとても嬉しくて、声のする方へ行く。近くに行くと、見ているほとんどの人が手にお金を持ってこちらに手を伸ばしていた。
イザベラさんに聞いたのだが、昔では踊り子にお金を渡すらしい。
だが、俺は自己満でやっているのでお金は受け取らない予定だった。だが、ふと目に付いたのは、小さな手でこちらに一所懸命に手を伸ばしている小さな少女の姿。思い切り伸ばしているせいで目が瞑っており、いつ目を開けてこちらを見てくれるのか気になってきた。
きっと、俺のベリーダンスを小さな身体で人混みに押されながら来てくれたのだろう。
嬉しくてつい、力強く掴んでいるお金を優しく取ると少女がやっとこちらを向いてくれた。
俺と目が合うと恥ずかしくしている顔がとても可愛くて、お辞儀をすると慌てて礼を返してくれた。
押されて小さな身体が倒れそうだったので前に連れて行き特等席に座らせる。お母さんらしき人も嬉しそうにこちらを見ていたので、お母さんも少女の隣に案内した。
キラキラしてる目が既にこちらを見ていて居た堪れなくなる。

「ありがとう。おにいちゃん」
「沢山楽しんでいってね。」

なんか良い気分になった俺は疲れが吹っ飛び、
また踊りに集中した。

「お兄ちゃんよ、チップ貰ってくれないかね。昔の街に戻ってみたいで嬉しくてね。」

そんな事を言ってくれるなんて嬉しかった。
前にイザベラさんが酔った時に、同じ事を言っていた気がする。「昔の街を取り戻して欲しい」と。
前はその言葉が俺にとっては重くてプレッシャーになってたけど、そんな事は無かった。
嬉しい言葉だったがお金は受け取れないので、お辞儀をして元の場所に戻った。

イザベラさんがこちらに手招きしていたので向かうと、満足気なイザベラさんに休憩して来なと言われて、そうすることにした。

「第一部終わり!また集合してね~!!」

イザベラさんが大きな声で街の人に知らせる。
声と共に大きな拍手と歓声が聞こえてくる。

「イザベラさんよ~ありがとな~!」
「踊り子さんに万歳!!」
「今日は沢山楽しもうじゃないか!!!」

楽しそうな余韻の声に浸りながら、歩いていると前は無かった街に灯りが沢山付いていた。
街は鮮やかになっており、ここも人混みが多かった。食べ物を求めて、ここに来ているのだろう。俺も楽しもうと屋台のある所へ進んでいった。






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とても遅くなってしまいました(泣)
投稿が無い間もお気に入りが増えていてとても嬉しいです。
ありがとうございます。
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