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本編
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しおりを挟むジルは強く掴まれた腕を振り解こうとしたが中々解く事は出来なかった。
「何の用ですか?今取り込んでるんですけど」
「アレスと何かあったのか?」
「はぁ?」
前まではアレスの事なんか無視してたのにアレスの外見が変わると優しくなるなんて王子も男なんだな。
反吐が出るよ。アレスが居ない間は隣の人を大切な人だってクラス中に言って、今もお熱い中なのに今さら他の人を気になり始めるなんて。
ふざけるな。
内面はまだ我儘姫だぞ。
「別に?追いかけるから腕離せ」
「何があったのか気になるんだ。」
「お前に関係ないだろ!!」
何で今更アレスとの接触をするのか。
ジルは力強く拳を作る。
お前が自らアレスを避けていた時のアレスの表情がどんなだったか知ってるのか?
停学前のアレスの明るい表情を見た事なんて一回も無かったぞ。
それでも挫けずに話し掛けて、無視されて、気づいて貰えるまで頑張って。それなのにお前は話すら聞く事はなかった。
やっと、最近明るい表情を見してくれたのに。
貴様はそれをまた壊すのか?
「貴様、アレスの外見が変われば好きになるんだな。最低だな。」
「違っ...!私は、」
後ろで静かに聞いていたルアーノの顔が固まる。その後、何もなかったかの様に他の人と喋っていた。
「何が違うんだよ。アレスが変わってからお前は動き出した。それに変わりは無いだろ」
グランの腕が弱くなったのを確認していたが、
ジルは止まれなくなった。
ジルの言葉が効いたのかグランは苦しそうな顔をしていた。
「何で貴様が傷付いた顔をしてんだよ。
沢山傷付いたのはアレス・ディスタニアだ。」
「二度とアレスに話し掛けるな。近付くな。
何度も言う、貴様が傷付くんじゃない。アレスが傷付くんだ。昔の自分の行動を恨め。」
思い切り勢いを込めて腕を振り解いて教室から出た。
_____
「ジルの馬鹿!ほら歩いたって誰も来ないじゃないか!過保護!お母ちゃん!親面!」
ドシドシと喧嘩腰のような姿勢で廊下を歩く。
本当にジルは出会った時から少しママ味のある人だったが、更にママになった。
「もう諦めた方がいいよ~アレス死んじゃう」
王子の事に夢中になってたアレスはこの言葉でカチンと来たのだろう。だけど、これはジルなりの優しさだったのかもしれない。
まぁ、オタクの解釈だけどな。
「ねぇ、貴方」
後ろから声がしたので振り返ってみると、俺より一回り小さい小柄な女の人が経っていた。
イーディル学園は学年で少し制服が違う。
この女の人は俺と同じ制服だから2年かな?
「はい?俺ですか?」
辺りを見渡しても俺しか居ないから俺だろう。
少し近付いてきた女の人は俺の顔やら身体やらをジロジロと見て来て、少し怖い顔をした。
「ちょっと、今時間大丈夫かしら?」
「はい、大丈夫ですけど...」
「あちらまでご一緒しませんか?貴方にお話したい事が。」
不気味な笑みをした女の人は、アレスと一緒に歩いて行った。
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