上 下
29 / 58
本編

19

しおりを挟む

ジルは強く掴まれた腕を振り解こうとしたが中々解く事は出来なかった。

「何の用ですか?今取り込んでるんですけど」

「アレスと何かあったのか?」

「はぁ?」

前まではアレスの事なんか無視してたのにアレスの外見が変わると優しくなるなんて王子も男なんだな。
反吐が出るよ。アレスが居ない間は隣の人を大切な人だってクラス中に言って、今もお熱い中なのに今さら他の人を気になり始めるなんて。
ふざけるな。
内面はまだ我儘姫だぞ。

「別に?追いかけるから腕離せ」

「何があったのか気になるんだ。」

「お前に関係ないだろ!!」

何で今更アレスとの接触をするのか。
ジルは力強く拳を作る。
お前が自らアレスを避けていた時のアレスの表情がどんなだったか知ってるのか?
停学前のアレスの明るい表情を見た事なんて一回も無かったぞ。
それでも挫けずに話し掛けて、無視されて、気づいて貰えるまで頑張って。それなのにお前は話すら聞く事はなかった。

やっと、最近明るい表情を見してくれたのに。

貴様はそれをまた壊すのか?

「貴様、アレスの外見が変われば好きになるんだな。最低だな。」

「違っ...!私は、」

後ろで静かに聞いていたルアーノの顔が固まる。その後、何もなかったかの様に他の人と喋っていた。

「何が違うんだよ。アレスが変わってからお前は動き出した。それに変わりは無いだろ」

グランの腕が弱くなったのを確認していたが、
ジルは止まれなくなった。
ジルの言葉が効いたのかグランは苦しそうな顔をしていた。

「何で貴様が傷付いた顔をしてんだよ。
沢山傷付いたのはアレス・ディスタニアだ。」

「二度とアレスに話し掛けるな。近付くな。
何度も言う、貴様が傷付くんじゃない。アレスが傷付くんだ。昔の自分の行動を恨め。」

思い切り勢いを込めて腕を振り解いて教室から出た。

_____


「ジルの馬鹿!ほら歩いたって誰も来ないじゃないか!過保護!お母ちゃん!親面!」

ドシドシと喧嘩腰のような姿勢で廊下を歩く。
本当にジルは出会った時から少しママ味のある人だったが、更にママになった。

「もう諦めた方がいいよ~アレス死んじゃう」

王子の事に夢中になってたアレスはこの言葉でカチンと来たのだろう。だけど、これはジルなりの優しさだったのかもしれない。
まぁ、オタクの解釈だけどな。

「ねぇ、貴方」

後ろから声がしたので振り返ってみると、俺より一回り小さい小柄な女の人が経っていた。
イーディル学園は学年で少し制服が違う。
この女の人は俺と同じ制服だから2年かな?

「はい?俺ですか?」

辺りを見渡しても俺しか居ないから俺だろう。
少し近付いてきた女の人は俺の顔やら身体やらをジロジロと見て来て、少し怖い顔をした。

「ちょっと、今時間大丈夫かしら?」

「はい、大丈夫ですけど...」

「あちらまでご一緒しませんか?貴方にお話したい事が。」

不気味な笑みをした女の人は、アレスと一緒に歩いて行った。







しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結】もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。 本編完結しました! おまけをちょこちょこ更新しています。

生粋のオメガ嫌いがオメガになったので隠しながら詰んだ人生を歩んでいる

はかまる
BL
オメガ嫌いのアルファの両親に育てられたオメガの高校生、白雪。そんな白雪に執着する問題児で言動がチャラついている都筑にとある出来事をきっかけにオメガだとバレてしまう話。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたアルフォン伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 アルフォンのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

処理中です...