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本編
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しおりを挟む「今の外見だったら昔、森の秘密基地で会った子供は俺だって信じてくれますか?」
アレスが言っていた言葉が頭から離れない。
私は授業の内容なんて入らずにそればかりを考えていた。
アレスは外見も内面も酷いものだと全ての人がそう思っているだろう。私も思っていた。
私の大切な人を傷つけ、人を簡単に侮辱する。
アレス・ディスタニアは悪い人だと決めつけていたのだ。
アレスの停学前、私は学園の裏庭で静かに読書をしていた。一人になれない環境が苦しくなってきたのだ。静かな所でページをめくる音がなり、風で木が揺れ、擦れる音。ここなら落ち着いて本を読めた。
読んでいると、誰もいない裏庭から声がした。慌てて後ろを振り向くと声だけが聞こえてたらしく、誰もいない。場所を移動し、声のした方を見ると一人の少年がしゃがんで何かを見ていた。
「アレス・ディスタニア....」
私はそう呟いた。
こんな所にいるとは思ってみなかった。
アレスを監視している際、休み時間は教室にいなかった。多分、私よりも前からここに来ているのだろう。
アレスはしゃがんで茂みの方を見ていた。
何も言わずに、ただひたすらに一点を見つめるかのように。
アレスの行動を見ていると、突然茂みに手を伸ばして、何かを掴んだ。アレスが掴んだと同時に小さな猫の声が聞こえて来た。
その瞬間、私はアレスが猫に人間と同じように暴虐をするに違いないと思った。
いつでも止めれるように読んでいた本を静かに置き、気付かれないように近くに行った。
ここだと声も聞こえるし、行動も見やすい。
(やはり、掴んだものは子猫だったか。)
子猫は傷だらけでふわふわとしていた毛が汚くなっていた。もう手遅れだったかと悔やんでいると、突然アレスがその汚れを自分のハンカチで拭き始めた。
驚愕で声が出そうになったが、それを押さえて耳を凝らすと声が聞こえた。
「はぁ、また虐められたのか?次はどこにやられたんだ。猫の世界も大変なんだな。」
そう呟いて、子猫達を丁寧に優しく扱っていた。
「ここにいるのは危険だよ。猫を保護してくれる施設があるからみんな連れてくよ。
はぁ、本当猫ってここ好きだよね。」
アレスはそう言って、どっかに行ってしまった。行ったのを確認し、すぐにアレスがいた場所へと向かう。そしてアレスが見ていた景色を見る。そこには綺麗に敷かれていた白い布に小さな猫が3匹もいたのだ。全員綺麗に汚れがなくなっていて、横には少しだが餌もあった。
猫は人懐っこく私の足にスリスリと擦り付けていた。子猫だが人に慣れているのだろう。
私はアレスの優しさを知らないでいたのだ。
隠したのだ。
知らない気でいたのだ。
その事を謝りたくて、アレスの所へ思い切って行ったのに変な別れ方をしてしまった。
私は窓の外をじっと見ている隣の人から目が話せなくなった。
もしかしたら本当に森で出会ったあの子はアレス・ディスタニアなのかもしれない。
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