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本編
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しおりを挟むアレスは掲示されていた紙をじっと見つめていた。それを不思議そうに見ているジル。
いつまで経っても紙から目を離さないアレスにジルは我慢の限界だった。
「何を見ているんだ!さっさと教室行くぞ!」
「あぁ、ごめん。これ見ててさ」
アレスが見ていたのは1ヶ月後に行われるベリーダンスの紙だった。ベリーダンスとは腰やお腹を体を使って表現するダンスの一種。特徴的なのは衣装がとてつもなく責めている事だ。
布がとにかく少ないがとてもキラキラしている。
そして、このイベントにヒロインであるルアーノがひょんな事からベリーダンス出るのだ。
それで気になっていてアレスは集中して見ていたのだ。このベリーダンスでルアーノはこの国の住人を魅了する。そして王子も...
俺は溜息をついてトボトボと廊下を歩いた。
俺はグランを好いているのか変わらないがルアーノとグランが仲良くしていると泣きそうになるくらい心が痛くなるのだ。
「あのベリーダンスの主催の人すごく厳しい人らしいぞ。有名な振り付け師の弟子らしい。」
「へぇ~そうなんだ」
「....お前、さっきまで興味津々な顔で見てたくせに今は興味もありませんみたいな返事しやがって!」
「ごめん。考え事してたの。」
アレスが出たらグランはどんな反応するのかな。
なんて無理な話なのに考えてしまう自分が嫌いになりそうだ。
_______
学園から帰宅した後、俺は買い物を頼まれて街を歩いていた。
歩いていると横の店から大きな音がした。
音がした店を見ると見覚えしかない紙が貼られていた。
「馬鹿か!こんな踊りが許可出来ると思うのか!大体、お前はなんでそんな端ない踊りを考えることしか出来ないのか!!」
「端ない踊りなんかじゃありません!
ベリーダンスは腰とお腹を主に使う踊りです!最近の貴方が作る踊りは何かが違う!!」
ベリーダンスという言葉が聞こえて来た俺は気になって店の近くに寄り密かに声を聞いていた。声的に予想すると中にいるのは二人の女性だ。二人は激しく口論を繰り返している。
「私に指図するな!お前に色々言われる筋合いは無い!お前は振り付け師失格だ!辞めてしまえ!」
「えぇ、分かりました。ここは出ていきます。私は私の振り付けで必ず頂点に立って見せます。」
そう言ったもう一人の女性がこちらに向かって歩いてくる。ヤバい。もしもこの扉を女性が開けてしまったら俺は他所から見ても盗み聞きしていたことが知られてしまう。
急いで逃げようとして足を踏み出したが、もう遅かった。
扉を開けた女性と目が合ってしまった。
女性は俺をキリッと睨んで言った。
「イーディル学園の生徒が盗み聞きですか」
「あ、あ、あ....す、すいません。聞いてしまいました。」
なんて言おう。偶然声が聞こえて、とか?
いやそれだと盗み聞きした事に変わりはない。
頭をフル回転して考えていると、
「フッ、ハハハハッ!嘘よ!怒ってないわ!
貴方も聞いたでしょ?私は私の振り付けで頂点に立つって。貴方に聞かれてしまったなら頑張るしかないわね。」
女性はそう言って笑った。
その言葉と笑顔を見て俺はこの女性を頂点に立つのを見届けたいと一瞬で思った。
「べ、ベリーダンスですよね?」
「えぇ、そうだけど。」
「じ、じゃあ俺が貴方の作った振り付けで出ます。」
「え?」
俺は勝手にルアーノに戦線布告をしてしまった。
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