本物のシンデレラは王子様に嫌われる

深夜

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本編

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今日からあの人アレスが停学から戻ってくる。
とても気が重い。また大切な人がアレスに何かされるかもしれない。
そう思うと苛立ちを覚える。
怒りの感情を抑えながら学園の準備をして馬車に乗った。馬車を走らせ、着いた先は小さな家の前に着いた。そして玄関の前には幸せいっぱいの笑顔をした可愛らしい人が立っていた。その人は私の馬車を見るなり走ってくる。私が馬車の扉を開け、手を伸ばす。

「おはよう。ルアーノ。」

「おはよう。グラン!」

ルアーノ・スミナは私の手を取り中に入ってくる。手の甲にキスをするとルアーノは顔を赤らめ、私の頭を撫でた。
ルアーノは私が小さい頃に一目惚れをした子だ。私は小さい子供だったが、ルアーノはさらに小さい身体で私を助けてくれた。
だが、ルアーノはその記憶が曖昧であまり覚えていないらしく、助けてあげた記憶は残っていると泣いて話した。覚えていなくても、覚えていても私は最初からルアーノしか見ていない。
「覚えていなくても好きだ」とルアーノの伝えると涙でくしゃくしゃになった顔で俺を抱きしめた。

問題は私達の恋を邪魔するアレス・ディスタニアだ。一目惚れしたあの子との見た目が違うのにアレスはずっと私に昔貴方を助けたなどの発言を毎日のように言っていた。それを無視し続けているとアレスはルアーノを虐めるようになった。暗い部屋に一人でルアーノが手首足首縛られ、目隠しをされ泣きながら私の名を呼ぶのを見た瞬間、アレスを殺してやりたいと思った。なんなんだお前は。早く俺達の前から消えてくれと、怒りがおかしくなるくらいにはアレスのことを嫌っている。

「ついにこの日が来てしまいましたね,,,」
「大丈夫だ。私が守る。」

ルアーノは心配そうな顔をした。
私はルアーノの手を取り優しく包み込んだ。
今度こそは私が守る。ルアーノが安心して学園に通えるように。

「グラン。やはりアレスを退学にさせようよ。僕、怖いよ,,,」

「そう考えたのだが,やはりアレス・ディスタニアは勉強でこの学園に入っているから中々それは出来ないんだ。」

「じゃあ、また一時停学にしませんか?」

「不安なのか?私が守ると言ったのに。私は全身全霊でルアーノを守る。」

「い、いえ。そうじゃないんだけど,,」

最近、ルアーノは私に沢山のアレスについての提案をよくしてくる。ありがたいのだが、毎回のように言われる。まだルアーノの中には不安なものがあるのだろうか。

学園に着き、ルアーノと教室に入ると
クラスのみんなが一斉にこちらを見た。
そして、私とルアーノだと気付くと安堵したかのような顔をした。
やはり、みんなも今日からアレス・ディスタニアが帰ってくる事を知っているらしい。

「グラン様、ルアーノ様、私達が全力でお守りします!」「私も全力を尽くします。」
「俺たちで二人の恋を応援するぞ!!!!」

クラス内はそんな事で騒いでいたが、前の席にいる、ジル・バーニはルアーノを睨んだ後、教室を出て行った。ジルはアレスと接触を楽しんでいたがアレスはジルを嫌っていた。教室で何回も喧嘩をしてクラスの雰囲気をいつも暗くする。二人揃って迷惑極まりない。

ルアーノと席に着くと、左側の空いている席に目を向ける。今日からこの席が埋まるのかと考えるとため息が出た。

アレス・ディスタニアは私の敵だ。



_____


時間が少し経った後、廊下から足音がした。
足音を聞くと二人いる。
この時間帯に来ると先生に言われていたのでアレス・ディスタニアだとすぐに分かった。
私は教室の扉に目を置く。

扉が開き、一人の少年が教室に入る。
アレス・ディスタニアが来ると思ったが、違う人だった。その人は遠くから見てもとても綺麗な人で不思議な雰囲気を持っていた。転校してきた人だろうか。だが、隣にはジル・バーニがいる。ジル・バーニが少年に話しかけると少年は少し微笑み、歩き出した。
歩き出すと、少年はどんどんと私の方に近付き私の左側の席に座った。そこの席はアレス・ディスタニアが座っていた所だ。なぜ座っているのだ。
驚きがとても隠せなかった。
この少年がアレス・ディスタニアとでも言うのか。ありえない。
学園にいた時のアレス・ディスタニアは分かるが、停学中のアレス・ディスタニアの事は分からない。これがアレス・ディスタニアなのか?

私は驚きを隠せないままでいた。









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