本物のシンデレラは王子様に嫌われる

深夜

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②計画と実行

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「お願い?アレスが?」
「はい。」

皮肉にも聞こえるし、素で聞いているのにも見える。家族なのにこの距離感はおかしい。
俺は膝に置いている手を強く握りしめた。
「この人達には遠慮はいらない」とアレスが言っているかのように心の中が熱くなる。

「お父様の所持している別邸に住まわして欲しいのです。」

ドントルは怒りを落ち着かせるように椅子に座り直し、太くて短い足を組んだ。

「なぜ?」

圧が強くて、弱気になる。
だが、ここで終わるのは俺じゃない!!

「特に理由は無いのですが、強いて言うなら一人の時間が欲しいと思って。」

「そんな自分勝手の理由で許可すると思うのか?」

やはり、ダメか。
そんなにアレスが嫌いなのか。普通の裕福な家庭で育っている子供はこんなお願いすぐに許可が出るのに。俺と同じ環境で住んでいるに親が違うだけでこうなるのか。お前が愛し合ってる隣の女と出来た子供なのに。何が嫌いなのか、顔か?性格か?体型か?
だんだんと怒りが沸々と湧き上がってくる。

「では、本当の事を言わせて貰います。」

「お父様とお母様がいると、私の全てが狂うのです。私の人生を壊しているのは、お父様とお母様なんです。」
「誰に向かってその口を聞いているんだ。所詮お前は何にも出来ない出来損ない、、」

「だから!!!」 
俺は膝に置いてあった手を机に向かって思い切り叩いた。
アレスが何回も何回も聞いて落ち込んでこんなになったのは。

「それが俺の人生を狂わせる言葉だって言ってんの!!」
「なんだよ出来損ないって!俺は前に進もうとして頑張ってるのに親で有るアンタらが協力してくれないんだ!」
俺が大声で叫んでいるのをドントルとシーラは唖然として見ていた。
「なぜ俺にこんなに冷たいか分かんないけど、こんな環境で住んでたら俺は貴方達をお父様ともお母様とも呼びたくない。」
「もしも、別邸に住む事を許可してくれるなら俺がいない間でもいいので鍵を下さい。」

全て言い終わったので、椅子から立ち上がり部屋を出た。二人の唖然とした顔は俺が部屋から出るまでずっと治らないままでいた。

____



「アレス様、あんな事言えたんですね」
「やめてくれ、、恥ずかしいから。」
「我がアレス様はこんなにも立派に」
「マレラまで、、、はぁ、消えたい。」

やはり、俺は突発的に出た言葉は高確率で後から後悔する。
今それだ。
俺は今さっきの記憶を消すかのようにシーツを頭から被り、バタバタと暴れていた。

「俺がもし別邸に行くことになったら、一緒に来てくれる?」

シーツを被っているせいで声が篭る。

「もちろんです。」
「私はアレス様の側にずっといますよ」

たとえ、親が恵まれていなくても、周りを見ればこんなにも俺を優しく包み込んでくれる人が居るんだ。

「うんっ、ありがとう。」
涙が頬を伝う。

その日俺はそのまま寝てしまい、朝起きた時にふと机を見ると、置き手紙があった。中には、

「ごめんなさい。お金は私達がなんとかします。本当にごめんね。」と書かれた置き手紙と鍵が入れてあった。

二人はまたどこかに行ってしまった。




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