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しおりを挟む初めて人を好きになって、喉から手が出るくらいもっと心も身体も欲しくなった。
この人を手放したくない。
全て自分のにして、閉じ込めて、ドロドロになるまで甘やかして、俺なしじゃ生きられないほどに俺を求めて欲しい。完全に全て君を手に入れる。その為にはまず準備が必要だった。正直、この決断に至るまで狂うほどに頭を使った。愛している人と共に時間を過ごせば過ごすほど辛くなっていく。笑顔が見れなくなると思うと、死にたくなる。息ができなくなる。
ずっと側にいたい。和弥を愛している。
そんな言葉じゃ足りない程に。
まだ、まだ、こんなんじゃ足りない。
手に入れる為なら、俺はなんだってやる。
____
「ドラマ化ってマジかよ...息してるか?」
「無理、えっ、T⚪︎itterのフォロワー数たったの3ヶ月で万いったんだけど。何もかもが上手くいきすぎて怖い。」
「まぁお前の努力が実ったんだよ。多分」
仕事の疲れを背伸びで紛らわす。
スピーカーにして聞こえてくる紗希の声はいつもより何倍も興奮していた。やっと周りがこの人の魅力に気付き始めたのだろう。
和弥は目の前にある何回も本人の修正が入った何十枚のネームを見る。
紗希の絵は見た目とは違いすぎるほど繊細な絵を描く。そして、俺は紗希の言語化する力が羨ましかった。言葉足らずな俺にとって、紗希は自分の気持ちをきちんと伝えることができる。それが漫画にも出ている。好きな気持ち、嫌な気持ち、悲しかった気持ちを全部漫画でも言語化できる紗希が本当にずっと羨ましかったんだ。もしも俺が紗希みたいにお前に気持ちを言えたらまた何か違った未来があったのかな。
冷めたコーヒーを飲む。
そんな事を考えて現実逃避をする自分が嫌になる。まだ好きなのかとたまに我に帰る自分が嫌になる。いつまでも引きずってないで、俺も新しい出会いを探そう。
「俺も溺愛彼氏作ろうかな」
「珍しいね」
紗希には彼氏と別れたとしか報告していない
学生時代は同性愛者とカミングアウトしただけで良かった。俺をゲイの友達として何か特別に接したりせずに、何も言わない紗希をありがたく思う。仕事が最近まとまったから久しぶりにお酒を飲もう。和弥は目の前にある仕事を一息ついた後、片付け始めた。仕事ばかりしてはやっていけないのが世の中だ。自分の人生を楽しくするためには三大欲求を満たさないとやってらなんない。少し身支度をして家を出た。
久しぶりに来たゲイバー。
和弥が初めて来たのもここだった。
昔はアイツを好きな自分が気持ち悪くて、嫌悪感しかなかった時に思い切ってここに来た。コスプレではなく現役で制服を着て、顔がぐしゃぐしゃで泣き顔な男が来た店内は一瞬で静まり返った。それでも迎え入れてくれた。
みんなは俺を歓迎した事を通報されないか不安そうな顔で話してたのが面白くて、辛い話も笑って聞いてくれたのが嬉しくて、ここが居所になった。お酒は飲まなかったけど、同じ環境の人がいてほしくて当時の俺はかなりワイルドだった。楽しかった思い出がここに詰まっている。それの成り行きで今も来ている。
相変わらず、ママの高い声が響いて、人が沢山いて、楽しそうな笑い声が絶えなかった。
「いらっしゃい。久しぶり」
「うん、久しぶり」
元セフレとももう慣れたもんだ。
まぁそれは口実だけで、本当はコイツと良い感じの男をくっ付ける作戦だったけど。懐かしい思い出に浸りながら用意されたカクテルを一口で飲む。カウンターは俺とコイツだけ。同じ男を好きになった事で少し気まずかったけど、やっと無言が苦にならないのは成長した事だって思いたい。手慣れた手付きで新しいカクテルを作っている。
「なんか惚気聞きたいんだけど」
「えぇ~何急に...なんかずっとゲームしてるよ...誕生日で新しいソフト買ったんだけど、ずーーーとやり込んでて正直ちょっと寂しい」
「僕の事もいじって~って胸出せば?」
「本当に思考が変態だよね、和弥って。」
「いやゲイ全員性癖終わってるよ。」
久しぶりに友人と話せて良かった。
「彼氏と別れたし、新しい恋愛したい」
「いやあんなイケメンと恋愛した後の恋愛ってハードル高いって」
「何、アイツはテレビ出てんだよ、本当に」
「CMに見てたら見覚えのある男いたから調べたらまさか和弥の元カレなんてね。ジュース吹き出した」
航は俺の元カレを知ってい、今までの愚痴を全部受け止めてくれた。
全部知ってるから発言に考えなくていいし、
全員言える。日頃、愚痴が言えなくて爆発したのか、酒が回って来たのか、段々と悪口が酷くなって言いたい放題の和弥とそれをただ見ている航の図が出来上がっていた。
「ずっと一緒にいるって言ったのに嘘つき」
「俺はね、もう誰かに好かれる事なんてないのによぉ...」
「溺愛彼氏が出来るまでここ離れないからな」
「ほんろーだぞ!おれはここにいる!」
「ばーーーーか、のたれしね」
「おっぱいでっかいおんなにしこたましぼられてふられろ!おれみたいに!ガハハ」
「ばか、あほ、おれのこと好きっていたろに」
「うぅ、ばか、ばかちん、ちんこなくなれ」
「あきらめられない、まだすき、だいすき」
酔った和弥を止められるのは誰もいない。
そんなのは誰でも知っていること。
いや、やろうと思えば止められる人もいる、だけど和弥はあまり人に弱い所を見せられない事をここにいるみんなは知っているから好き勝手させているのが正解だろう。
せめてここだけでも言いたい事を吐き出させる場にしようとしている。
あと、理由がもう一つ。
___
「もう寝たよ、絶対明日記憶ないよ」
「だったらキスしたいんだけど」
「調子乗らないで、まだアンタのこと許してないし。話し掛けないで」
「寝顔も可愛い、本当に可愛い、酔って舌足らずなの可愛くてかわいくて死にそう。
もっと近くで見たかった。遠すぎる。」
コイツの男がキモいほどの大金を払って、こうやって遠くから和弥のことを見るのだ。
こんな遠くで見てるなら直接会えば良いのにと思う航は思った。
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