Love adventure

ペコリーヌ☆パフェ

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新しい息吹

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総合病院の白い廊下で、クレッシェンドメンバーと綾波とカナ、浜田は
「手術中」という赤いランプを時おり睨みながら、憔悴していた。


その場に居たカメラマンが通報し、駆けつけた警官により中野は逮捕され、智也も警察に行っている。

会見から事件に発展し、それが生中継され全国に放送されたため、世間の反響は物凄いものがあると予想された。

既にネットでは大騒ぎになり、クレッシェンドの所属する
「フェーマスレコーズ」にも問い合わせが殺到していた。

智也は社長として、綾波はマネージャーとしてその対応を迫られるのは当然なのだが、今はほなみの容態の方が大事だ。


智也はほなみの無事を祈りながら警察で事情を聴かれていた。





二時間程ぶっ続けで捜査員と話をしようやく放免された智也は、中野との面会を頼み込み、特別に許された。

取り調べ室に入ると、調書を取っている警察官が会釈をし、智也も軽く頭を下げた。


中野は生気のない表情で智也をぼんやりと見た。


「十分だけですよ」


警官に言われ、頷いて中野の正面に座る。



「どうしても納得がいかない……何故、そこまでしたんです」



「ほなみさんを傷つけるつもりはありませんでした……」



中野は溜め息を吐くが、智也は鋭く彼を見た。



「私は……この会社にお世話になる前はどうしようもないチンピラ崩れでした。
社長に拾われなければ野垂れ死んでいたでしょう」




中野は、また遠い目をする。





「夜の歓楽街で喧嘩で半殺しにされて、ゴミ捨て場で意識を失っていたのを助けてくれたのが社長です」



「……初耳です。親父からは何も……」


中野は笑った。


「そうでしょうね……
社長には本当に感謝しきれません……
そして智也さん、貴方にも」


「――?」


「私は、過去にヤンチャをしすぎて妻に愛想をつかされて出ていかれたばかりでした……息子はまだその時二歳でした……
今でも息子の片えくぼの笑顔を覚えています…妻に似たんですよ。私にはまるで似ていない…似なくていいんです。こんな人間にはね」


中野は自嘲的に笑った。

智也は黙って聞いている。



「私は、妻と子供に会いにいきましたが、妻は別の男と暮らしていました……
趣味の良い高そうな靴、シワのないシャツ、上品な物腰……
会ったんです。玄関先に出てきましたから。
妻と息子は奥にいて、私に気づきませんでした。
その男に
『どちら様でしょうか』と言われた時には……頭が真っ白になりましたよ……
そこからどうやって帰ってきたか、記憶にありません」



「……」


中野はひと呼吸置いて続けた。



「気がつくと会社の金庫の前に居ました。
私は社長以外で金庫のダイヤルナンバーを知るただ一人の人間です。
その日は日曜で誰も会社にはいない。
私はダイヤルを回しました――
金さえあれば、妻子を取り戻せると思ったんです……
そこに、当時二歳の貴方が現れました」


「……!?」


智也は目を見開いた。




「記憶にないでしょうね……貴方は中庭で遊んでいてひょっこり会社の中へ迷い込んだのですねきっと……
私は、まずいところを見られたと思い、発作的に小さな貴方の首に手をかけました……」


「――!」


中野はシワのある目元を歪ませ、智也の視線から顔をそらして声を詰まらせる。



「……私は貴方の顔を見れずに、その手に力を込めようとしました……
すると貴方は小さな手で抱き締めてきたんです……

『どうしたの?どうして泣いているの?』

真っ直ぐに見詰めている貴方にそれ以上何もできませんでした……っ」



「……」



「そこへ社長がやってきて、もうおしまいだ、死ぬしかないと思いました……

何か私に言おうとする社長に貴方はこう言ったんです。

『パパ。おじさんが寂しそうだから、一緒に遊んでてもいい?』

社長は、私を一瞬訝しげに見ていましたが、貴方の無邪気な言葉で、私に一切追求をしてきませんでした……」


「――そんな事が……」


「ほなみさんを中庭で初めて見た貴方の表情を見て、私はすぐにわかりました。
貴方がほなみさんにひと目で心を奪われた事を……
私は、貴方の望みは何でも叶って欲しかったんです……
勝手に、息子と重ね合わせて……」


中野の力ない眼差しの中に涙が溢れる。

智也は、苦々しく顔を歪めると呟く様に言った。



「……そうだな……本当に勝手だ」


「はい……っ」


中野は唇を噛んだ。



「お前の勝手な思い込みで俺の人生を幸せにだとか、はっきり言って独りよがりもいいところだ……
俺は自分でしたいようにするだけだ……
ほなみを傷付けた事は、絶対に許せない」


智也の射るような眼差しに中野はただ涙ぐみ頷いていた。


「――時間です」


警官に言われ、智也は立ち上がると、項垂れた中野に去り際に声をかけた。


「俺の望みを叶えたいなら――」


中野は顔を上げる。


「罪を償って、ほなみに謝りに行け。
そして二度と死のうなどと考えるな……
それだけだ」


ドアを締めると、啜り泣きが聞こえてきた。






智也は警察からタクシーに乗り込み、運転手に

「総合病院まで」
と告げる。


発進すると同時にスマホが振動した。


「――はい」


「と、智也さん……カナです」


「東野さん……どうだほなみは」


向こうでカナが息を詰まらせている。


「東野さん?」


「――ほなみさんが……ほなみさんが……っ」


「――!?」




※※






「――!先生、今なんて!?」


病院では、メンバーが皆目を丸くして医師を見た。


綾波も浜田も呆気に取られている。



医師はマスクを外して小さな子供に言い聞かせるようにゆっくりとした口調で言った。



「――処置は無事に済みました。
心臓からナイフがそれて、刺されたのは肩でしたが、出血の割には傷は浅いので命に別状はありません」



「だ、だからその後の!!何て言いました!?」



西本は医師に噛みつく。



医師は汗を拭ってもう一度言った。







「お腹のお子さんも、無事です」







「ヒャッッホ―――!」

「すげ―――!」

「うそ――ん!」

「これは、お赤飯を炊きましょう!」

「浜田さん……それは違います」

「――し、静かに!」


医師が口に人差し指を宛てると、皆あっ、という表情をして静まり反る。


「今回の事で精神的なショックもあるでしょうし、肩の傷の経過を見て……
念のため三週間は入院した方がいいですね……
えっと、父親のかたは……」


皆が西本を突き飛ばす様に押し出した。


皆一様にニヤニヤしていて、西本は頭を掻く。



「麻酔からもう少しで目覚めます……傍にいてあげてください」


医師に言われ、西本は頷き病室のベッドの側へ行く。


ほなみの頬には赤みが戻り、寝顔は安らかだった。

安堵と愛しさが込み上げ、そっと頬に触れた。




ほなみの瞼がピクリと動いて、ゆっくりと開いた。


目に愛しい人の姿を映すと、笑顔が広がる。


西本は、そっと手を握った。


「よかった……西くんが……無事で……」


「ダメじゃないか……無茶して……」


怒ったように言うが、ほなみの笑顔を見てそれ以上責める事が出来ず、言葉の代わりにそっと頬にキスをした。



「ごめ……さい……夢中で……」


西本はほなみの髪を撫でて笑った。


「これが守ってくれたみたいだよ」


「?」


胸元のポケットからはま子のネックレスを出した。


「ナイフが奇跡的にこれに当たって……心臓から逸れたしいんだ……」


「……そう、だったの」


「指輪じゃなくて浜田さんを一瞬恨んだけど、感謝しなくちゃだな……」


「……ふふ……」


「ほなみ……知ってたの?……自分の身体のこと……」


「――ごめんなさい」


ほなみは目を臥せた。


「謝らなくていいよ……すっげえ嬉しい……」


額と額をくっつけて、西本は囁いた。


彼の澄んだ瞳とほなみの瞳が間近でぶつかり、まなじりには熱い涙が滲む。

ほなみは口を開くと同時に嗚咽が込み上げる。



「う……嬉しいの……?」

「うん!だって、俺とほなみの赤ん坊だろ?」

「……っ」


ほ なみは絶句して、俯いてしゃくりあげた。



「ほなみ……?」


西本はほなみの頭を撫でて顔を覗きこむが、顔を上げて放った彼女の言葉に絶句した。






「……あ……赤ちゃん……智也の子かもしれない……」

「ほなみ、それは――」

「わ、私……少し前から……赤ちゃんが出来たかも……て思ってたけど……でも……っ」





ほなみは辿々しい口調で呟くと、苦し気に顔をくしゃりと歪め、大粒の涙を溢す。

西本はそんな彼女をぎゅっと抱き締めた。

ほなみの頬と唇が小刻みに戦慄いている様を見ていると、まるでこの世界が不安定に揺れ動いているかのような錯覚をしてしまいそうだった。

震えが止まるまで、包んでいなくては――そう思った。

ほなみの心の中の恐れを消し去る事は出来ないかも知れないが、ひとりで泣かせたくない――






「わ、私……西君との……初めての……時……に……きっと、赤ちゃんが……て思った……」

「うん……そうだよ……そうに決まってるじゃんか」

「もし……もしも違ったら?」

「ほなみ――」

「私――あの後……何度も何度も……と……智也に……っ……だから――っ……怖くて……どうしようって……もしも、もしも西君の子じゃなかったら……て思って……言えなくて――」



ほなみは彼の胸で泣きながら、今まで堪えていた物を吐き出す。

彼に心も身体も拐われたあの夜の事は後悔などなかった。結ばれて、嬉しくて泣いた瞬間の感情を今でもハッキリと思い出せる。智也に抱かれてあんな気持ちになる事はなかった。

彼の熱い精を、激情を、身体で、心で受け止めて――初めて自分の中が満たされたような気がした。

きっとこれが、心も身体も恋に堕ちる――という感覚なんだ――と。





二人の声と、ほなみの啜り泣きは病室の外にいる面々にも聴こえていた。

先程まで踊り出しそうに浮かれていた亮介と三広は顔を見合わせてオロオロし、浜田は神妙な面持ちで――はまじろうの格好なので、そうは見えないのだが――腕を組んで無言だった。ほなみの無事が分かった途端に気が抜けて眠ってしまいそうになった野村も険しい顔をし小さな声で綾波と何か話し込んでいたが、そこへ電話をかけに出ていたカナが戻ってきた。カナも珍しく真面目な顔――というより、強張った表情だった。 



「お帰り~!カナちゃん、た、大変ったら大変だよ」

「ほっほほほほなみちゃんのっ赤ちゃんが――」



もらい泣きのように目を潤ませて落ち着かなくグルグル歩き回る三広と亮介を、カナはいきなり拳骨で殴った。



「びふいいいいいっ……げふっ」
 
「なっ……なぜ――っ?……ぐふっ……」



強烈な一撃を喰らった二人は、仲良くのびてしまった。





「おおおっ大丈夫かね――!」



浜田は二人に駆け寄り、野村はカナを唖然として見詰め、綾波は彼女にツカツカと歩みよると手首を掴む。



「おい、お嬢さん、この暴挙は一体どういう事だ……一応こいつらはタレントなんだよ!ビンタなら未だしもグーで攻撃だとか……」

「そんなの知りません――!と……智也さんは……もっと……もっと……殴られたよりも痛いんですよ――!」

「――?」

「あ……愛してたほなみさんを……あ……諦めて……しかも、その元凶の……相手に……ゆ……ゆ……譲って……」



カナはボロボロ泣きながら綾波に手を掴まれたままで腕を振り回した。



「そ、その上……自分の赤ちゃんかも知れない子供まで……っ……取り上げられるかも知れないなんて――!」

「おいおい……お前さんが上司に同情するのはわからんでもないが……だからって何故こいつらをぶちのめす必要がっ?」

「ただの八つ当たりです――!」




やけっぱちの様に怒鳴るカナに綾波は絶句した。


  


「智也さんが……どんな気持ちでいるか……考えただけで……カナは……切なくて胸が潰れて抉れてしまいそうです――!」



カナは絶叫すると、綾波の顎目掛けてジャンプした。綾波は不意を突かれ、カナの頭突きをまともに食らい、衝撃でよろめき壁にも頭をぶつけ、倒れてのびてしまった。


「お……おおおっ……綾波君!君までやられてしまうとは――!」

「……っ」



浜田は綾波の頬を叩き呼び掛け、野村はこの惨状に言葉を失っている。


 



カナが憤怒の表情の顔を向けると、浜田と野村は「ひいいいっ」と悲鳴をあげる。

野村は思わず浜田の着ぐるみのファスナーを開き、中へ入ろうとするが、浜田がくすぐったがる。



「ひふんっ……の……むら君っ?何をしとるんだいっ?」

「いや……隠れようと思って……でも他に隠れる所がないから、この中ならって」

「ふひひっ……ひゃはっ……こそばゆいねえっ!……女の子が入ってくるなら大歓迎だけど……ってそうじゃなくて!」



伸縮性のある生地で出来た着ぐるみは二人の動きに合わせて形を変え、端から見るととても不気味な様相を呈していた。勿論一人しか入らないサイズのはまじろうスーツに大の男二人も入る訳がない――



「おおい!野村君!こんな姿をファンに見られたら引かれると思うけどねえ~女の子を怖がっておじさんの背中に隠れるとか~」

「そうですけど……なんかメチャ怖くて無理です!」

「おいおいおい!」



キャーキャー騒ぐ二人は、いつの間にか目の前にカナが仁王立ちしているのに気付き、着ぐるみの中で固まった。



「……大体が……大体がですよ……ほなみさんが、クレッシェンドを知ることがなければ……智也さんと別れる事になんてならなかったんですよ――!」

「まあまあっ!君!落ち着いて!そんな風に目を吊り上げたままだとそういうお顔になってしまうよ~☆ねっ」

「余計なお世話です――っ!き――っ」

「ひえええええっ」



怒れるカナが両の拳を二人に振り降ろそうとしたその時、誰かが彼らの間に素早く割って入り、カナの両腕をガシッと掴んだ。

カナはその人物を見て目と口を大きく開けて呟いた。



「――と……もや……さん……」

「ありがとう……東野さん」



智也は優しく微笑み、カナの手を強く握った。

カナは智也の顔と、彼に握られている自分の手を交互に見て真っ赤になったかと思うと、泡を吹いて卒倒してしまった。






浜田と野村は安堵から大きく息を吐いた。



「ああ……助かったよ~コロされるかと思ったよ~!」

「……お邪魔しました……」



野村はカナが気を失っているのを確認すると着ぐるみの中から出て伸びをする。

智也が病室の扉に視線を向けると、浜田が「あっ……ほなみちゃんの事……聞いたかい?」と聞く。



「ええ……」

「そ、そうかい」



静かに頷く智也に浜田はかける言葉がなく、押し黙る。

 



「ほなみはどうですか?」



智也は穏やかな表情で病室のドアを見ると、中からほなみの泣き声が聴こえてきて、瞳を揺らす。

(――泣かすな、と言った側からもう泣かされているじゃないか……)

唇を軽く噛む彼に、浜田は慎重に言葉を選んで言った。



「うん、今目が覚めたみたいだけど……色々と戸惑ってるのかも知れないね……西君がついてるけど……」




智也は無意識に拳を握りしめていた。

(――ほなみ……その子供は……まさか……)

烈しく抱いた、帰国した夜。そして、ホテルで昼夜問わず思いのままに攻めて――

だが、西本祐樹にも同じくらい――いや、多分それ以上に抱かれているのだろう――

だから、どっちの子供だ、等と断言など出来ない。少なくとも今のところは……




「……」



西本に渡すと決めた。誰よりも大切な彼女を彼に託すと決めた。そう決めたのは誰でもない自分自身だ。だが、ほなみの妊娠を知って、智也の心は凪いだ水面に石が投げられ波紋が生まれるように、ざわつき始めた。





野村と浜田は、この場で彼にこれ以上何か声をかけるべきでは無いような気がして、気まずく沈黙するしかなかった。

そんな中、カナは場違いな安らかな寝顔を見せている。

智也はそんな彼女に小さく笑い、その身体を抱き起こそうと手を伸ばすが、ほなみの泣き叫ぶ声が耳に届くと、目を見開いて扉の前に歩み寄った。




※※



「――もし、もしも西君の子供じゃなかったら……どうしたら――!私――っ」

「ほなみ――」


感情が昂って、彼の胸を拳で叩くと傷に響き、ほなみは痛みに顔を歪め、西本は彼女を包み込む様に抱き締める。

ほなみの閉じられた瞼から流れる涙は止まりそうになく、西本は唇で優しく、味わう様に掬った。






「もしも……俺の子供じゃなかったら――」



低く涼やかな声に、ほなみは思わず身を竦めた。その次に彼は何と言うのか――不安で怖くて、耳を塞ぎたい――

思わず更に強く瞼を瞑るが、彼が発したアンサーに、ほなみは耳を疑った。




「それはどっちでもいいんだよ」

「――ど……っちでも……て」



ほなみは瞼を開き、目の前で花の様に微笑む恋人を呆然と見上げる。

彼の長い指がほなみの涙を拭った。




「赤ん坊がどっちの遺伝子を受け継いでるとか、関係ないよ……俺は……ほなみの全部……ほなみが抱えてるもの全部を守りたいんだ」

「――に……しくん……っ」

「まあ……子供が智也にそっくりな男の子になったとしたら――ちょっと嫌かも知れないけど~な~んて!」

「西く……」

「だ――から!もう泣かない!これって嬉しくて素敵な事だろ?」

「素敵な事――」

「そうさ!だから大丈夫なんだよ!」



鼻息荒く、自信満々に頷く彼を目を丸くして見るほなみだが、彼にそう言われると、先程まで渦巻いていた不安や混乱が胸からひいていくようだった。

彼は本心からそう思って言っているのだろう。でも、なんの根拠もないのに?大丈夫と言い切る彼は、能天気なのか――本当のバカなのか――



ほなみは、彼の瞳の中のキラキラな輝きに魅せられながら、そんなことを思っていたが、ふと、笑いが込み上げてきてしまう。



『奴は能天気なのか、それとも本当のバカか?』


智也もそう言っていた――









西本は、ほなみの笑顔に安堵と嬉しさを隠しきれず、目尻を下げると、彼女の唇を指でそっとつまみ、甘く囁いた。



「ほらね?俺は……ほなみを笑顔にする魔法を使えるんだ……だから大丈夫」

「――」



ほなみが何か言いたげに唇を震わせると、彼のキスで塞がれて、甘くて幸福な色が胸一杯に広がっていく。本当に、この人は魔法使いなのかも知れない――と思った。



「もう一度言う……ほなみの総て……俺が守る」

「西君……」



今、ほなみの頬を伝った涙は、歓びのものだった。






※※









二人の会話を扉の前で聞いていた智也は、伸ばしかけた手を降ろすと口元を歪め笑った。



「やはり奴は、本物の大バカ野郎だな……」

「へっ?」




その言葉に、浜田と野村はキョトンとする。

智也はひとつ溜め息を吐くと、身を屈めて倒れているカナを抱え、長い廊下を颯爽とした足取りで歩いて行った。

彼の聡明な色をたたえた瞳は、前だけを見ていた――





 
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