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歌姫の覚悟
しおりを挟む「う……ん……」
ブラインドの隙間から細い光が部屋の中に射し込み、朝を告げる鳥達の鳴く声が耳を擽る。
心地よい微睡みの中、寝返りを打った時、けたたましくアラームが耳元で鳴り響き、瞼を開くと無意識に美名は隣に居る筈の恋人を腕を伸ばして探す。
だが、その手が掴んだのはバニッぴーの丸い尻尾だった。
「剛……さん?」
起き抜けで上手く働かない頭をブンブン振り部屋を見渡すが、綾波の姿も、服も無い。
「夢を見てたのかな……」
ベッドから降りた時、毛布が落ちて裸の自分の身体に気づき、思わず悲鳴を上げた。
「きゃ……
な、何で何も着てないの?」
美名は、夢の中で綾波にされた事が甦り、身体が熱くなり疼くのを自覚した。
「……シャワー浴びて支度しなくちゃ……」
甘く淫らな疼きを鎮めようと、バスルームへ行きシャワーの栓を捻る。
お湯を浴びながら、ふと鏡を見て息を呑む。
首筋や胸元、太股に紅い華の様な痕が散らされている。
「な……何……これ」
昨日は西野と食事に行き、ワインを沢山飲んだ事までは記憶があるが、ここにどうやって帰ってきたのか全く覚えていないのだ。
「自分じゃ……こんなところ付けれないよね」
白い首筋に残る紅色に指で触れると、綾波の息づかいや指の感触が甦り、疼きを鎮めるどころか身体の芯に火が点ってしまった。
美名はシャワーを浴びながら、自分の腕で身体を抱き締めて熱に浮かされたように呟いた。
「夢……じゃなかった……の?
……剛……さん……
剛さん……ああ……っ」
綾波の苦しげな眼差しに、身体に触れた指の熱さ、快感に乱れながらの甘い囁きと吐息を思い浮かべ、いつの間にか自分の指が双丘と下腹部に伸びていた。
高い丘の頂(いただき)は既に硬くその姿を変えていた。
「……ん……剛さ……あっ……」
綾波の長い指が其処をなぞり、舌が這わされる場面を頭に浮かべ、美名は涙を浮かべて呟いた。
「な……何故……
こんな風にしたまま……何処かへ……行ってしまうの?」
自分を慰める事など、今まで考えもしなかった美名だが、淫らに醒めた身体に刺激を与えずにいられなくなってしまっていた。
脚の間に躊躇いがちに指を割り込ませるが、秘蕾に触れた途端全身が震え、溜め息が漏れる。
「ん……あ……あっ」
廻りをそっと撫でるだけで中が熱くなり、何かが自分に降りてくる気がする。
「こ……こんな事……私……んんっ」
鏡の中に、知らない女を見ている様だった。
身体の淫らな場所を自らの指で触れて悶える姿……
「つ……よし……あっ……さんには……
私……こんな風に……見えてる……の……?」
指を大きく動かした時、一番敏感な場所に触れた様だった。
「あっ――」
小さく叫び、壁に崩れる。
美名は、指を更に奥へと進めて声を上げた。
「んっ……!
剛さ……がするように触れるには……どうすれば良いの……?……あっ……」
ベッドで組み敷かれている時に見つめるあの冷たい、でも突然荒々しい焔が宿る瞳は、この身体の何処をどう触れて掻き回し、自分を啼かせるのだろうか。
指をぐるりと中で廻すと、電流に撃たれたかの如く身体が淫らに熱くなり、考えるのが困難になる。
「あんっ……あっ……あああ……
何これ……っ
やああっ……!」
中を掻き回すと、明らかにシャワーの湯とは違う何かトロリとした物が指に絡み付いてくる。
触れれば触れるだけ、掻き回せば掻き回すだけ止めどなく溢れ、それは指の滑りをどこまでも良くしてしまい、美名は昇りつめていく。
「――も……もっダメぇ……」
綾波に深く奥まで貫かれる様に、指を差し入れたその時に美名は達してしまった。
熱い湯を顔に受けながら、まだ痙攣する蕾を感じてまた頬に涙が伝った。
「剛さん……
剛さ……ん……
私……もう……
剛さんが居ないと……
ダメっ――」
シャワーの音に混じり、気だるさの混じった呟きがバスルームに切なく響いた。
―――――――――――
「はいはい、真理くんに由清くん、いいねぇ――!そのまま二人肩を組むとか……
おっ!その恥ずかしがる感じもイイよ――!」
堺がステップを踏む様に軽やかに動きながらシャッターを切る。
平日の午後だが、若者達で賑わう竹下通りでプリキーとはまじろうはポキノンの
『プリキー×はまじろう原宿へ行く!』
という企画のゲリラ撮影を行って居た。
昨日の"ガールズヘアスタイル"の撮影中止騒動で今日の企画も暗礁に乗り上げるのではないか?と危惧されたが、周囲に人がやはり集まっては来るものの、皆遠巻きに見ている感じで意外と騒ぎにはなっていない。
プリキーメンバーとはまじろうが人気のショップに行って試着をしたり、アクセサリーを物色したり、アイドルのブロマイドを買ったり、楽しみながらの撮影だった。
「さて、最後にプリクラへ……」
「堺さんよ――!
せっかく竹下通りに来たんだからさ、俺、アレ食べたい、アレ!」
移動する様に促す堺に、真理は道行くギャル達が手にしている巨大な綿菓子を指差した。
「ああ……アレですか」
堺はギャルが持つ、ピンクや黄色や水色のカラフルな綿菓子を見て頷いた。
「んも――真理くん!
お仕事って事を忘れてない?」
「真理、ワガママ言うなよ」
はまじろうも同意する様に跳び跳ねて、志村と由清が非難する視線を送ると、真理はぷうと頬を膨らませた。
「え――いいじゃんか!
多分もう、二度と俺こんなギャルの巣窟に来ねえし」
「確かに……
勇気が要るかも知れませんね?仕事ならともかく」
堺はニッコリ笑った。
「だろ――!
記念っつーか、話のネタにさ――!いいだろいいだろ――?
なあ、美名もアレ欲しいだろ?」
雑貨屋の店先で、シールピアスを手に取りぼうっとしていた美名は、声をかけられて顔を上げたが、全く話を聞いていなかった。
「う、うん……そうだね」
曖昧に笑って返事をすると、真理は味方を得たりと更に主張する。
「ほら――堺さん!
美名もそう言ってる事だしよ――!」
「う~ん、まあ、時間もまだ余裕あるし、いいでしょう!
絵的にも面白いですよね、歌姫と綿菓子……はまじろうと綿菓子……ムキムキ真理くんと綿菓子……ドラム王子と綿菓子……
おおお……なんて素晴らしい組み合わなんだろうか!
よ――し!
"キャンディーマーケット"に行きますよ――!」
堺は目をキラキラさせカメラを構え、歩くメンバーとはまじろうを激写しながら後ろ向きで器用に小走りしている。
「堺さ――ん、そんな歩き方したらまた転ぶんじゃない?」
志村が笑って声を掛けるが、堺は余裕の表情だった。
「大丈夫です!自慢じゃありませんが、僕は撮影中に転んだ事はないんですよ――!ハハハハ」
「へぇ――」
由清が感心する。
「あ――っ楽しみだな――!美名?俺と半分こして食うのもいいよな~!
カップルみたいにさ――!」
真理が美名の後ろを付いて行きながらデレデレするのを見て、はまじろうに扮した綾波はイラッとして突然後ろから頭突きをかました。
「お――わあっ――」
「きゃあっ」
だが、バランスを崩した真理は前に居た美名に抱き付く形になってしまい、綾波は密かに舌打ちする。
「美名――っ!
この変な着ぐるみが俺を苛めるんだよ――!
助けてくれっ」
「ま、真理くんったら、離して――!」
「真理っ!
いい加減にしろよ!」
どさくさに紛れ美名を離さない真理に由清が怒った。
「おお!
メンバーの仲良しなヒトコマ!
い――ね――!いいですよ?」
堺がギャアギャア騒ぐ三人を嬉しそうに激写する。
「……っ!!!」
声を出さずに着ぐるみの中で殺気をたぎらせる綾波の隣に志村がやってきて耳打ちをする。
「全く……だから言ってるでしょ?
そんなに美名ちゃんが可愛いなら、変な痩せ我慢は止めて美名ちゃんのところにさっさと帰ってあげなさいって――!」
「……」
綾波はムッとしながら真理を密かに睨み、溜め息を呑み込んだ。
「んも――っ
真理くんのバカ――!」
美名は真っ赤になりながら真理をぶん殴り、こちらへ向かって駆けてくる。
「あらあら、貴方のお姫様が来たわよ?」
志村が目尻を下げて綾波をからかう様につついたが、綾波は美名から目が離せない。
向かい風に長い髪を膨らませながら息を切らして手を広げ、スカートの裾が膝まで翻り美しい脹ら脛を晒しながら息を切らして真っ直ぐ向かって来る美名に、綾波は見とれた。
「はまじろう――!助けて――っ」
美名がフワリと抱きついて来た瞬間、思わず強く抱き締め返してしまった。
志村がニヤニヤして、真理が絶叫し、由清があんぐりと口を開けて、堺は抱き合う歌姫とはまじろうをフレームに収める。
竹下通りを歩く人々が色めき立ち写真を撮っているが、綾波は構わずに美名を強く抱き締めていた。
「は、はまじろう……い、痛いよ」
美名が腕の中で小さく呻き、我に返り離すが、綾波の身体と心はまた甘く疼き、鎮めるのには一苦労するだろう。
「おい美名――!
俺はダメでその変な着ぐるみ野郎はいいのかよ――っ」
「だって!真理くん、時々触り方がエッチなんだもん――!」
「真理……最低だな」
「おっおっ……由清い――っ何だよその蔑みの眼差しは!
俺ら、仲間だろっ?
男同士、男の純情を分かち合おうぜ――っ」
「分かち合いたくない!」
「つめてえ男だなお前――!」
言い合いを始めた真理と由清をよそに、美名は目的の店を見付けて目を輝かせ、はまじろうの腕を引っ張った。
「あれじゃない?
キャンディーマーケット!
……スゴく可愛いお店――!」
店に入った途端、甘い薫りで満たされ、パステルの色合いの内装や菓子が賑やかに客を迎える。
まるで食べ物ではない様にも見える細工の施されたキャンディーや、カラフルなアイスボックスクッキーに棒キャンディー、ところ狭しと並べられていて一同は溜め息を吐いた。
「んまあ――なんてカワイイ!」
志村が手に取ったのはクマの顔のキャンディーだった。
パンダやキリン、鹿に象にアヒル、動物園の様だ。
美名はウサギの形のクッキーに目を止めて、思わず呟く。
「わあ……
この子、バニっぴーみたい……
バニっぴーってね、剛さんがプレゼントしてくれたお人形なの……
凄く大切な宝物なんだ……えへ」
はまじろうの手を取ったまま、美名は目を潤ませて言った。
綾波の胸が密かに震える。
美名の睫毛が震え、瞬きをすると堪えきれず涙がポツリと落ちた。
「――っ」
綾波は、着ぐるみの中で密かに歯を食い縛り、この場で抱き締めてやれない自分の不甲斐なさを呪う。
「ごめんね?
はまじろうの前で泣かれても困るよね……
撮影中なのに……マスカラが取れちゃう」
美名は指で涙を掬うとはにかむ様に笑った。
綾波は、ウサギのクッキーに目をやると、店員に向かい手を上げた。
ピンクのフリルが沢山付いた可愛い制服の若い店員が笑顔でお辞儀をしながらやって来た。
「はい、お客様、お決まりですか?」
「……、……、……っ……!――!」
綾波は、はまじろうの姿でクッキーを指差して、頭を振ったり腰を回したり手を広げてジャンプしたり、身体全体で意思を伝えようと試みた。
「綾……じゃない、はまじろう……何してるの」
志村が唖然とする。
「なんだなんだ?」
大きな綿菓子の作成工程を夢中で見ていた真理と由清も、はまじろうに注目する。
店員は、笑顔で手を叩いた。
「はい!うさちゃんクッキー全てお買上ですね?
ありがとうございます!」
綾波は、伝わった達成感でガッツポーズをしてから、腕で
"正解"の○を作った。
そして目を丸くする美名に、手を差し出して頷く。
「え……まさか……
私に、買ってくれる、の?」
綾波は、まるでヘドバンする様に激しく頷いた。
途端に美名の顔に花の様な笑みが咲いた。
「ありがとう……!
元気付けてくれてるんだね……」
「……」
「私……何があっても剛さんを信じるって……
決めたんだもの……
わ、笑って頑張る……」
(……駄目だ……もう、限界かも知れない)
涙が溜まる瞳を指で押さえ、泣くのを懸命に堪える美名を目の前にして、綾波は今すぐ着ぐるみを脱ぎ捨てたくなる衝動を耐えていた。
自分の中で、美名に過去の全てを洗いざらい話す覚悟が出来るまで離れているつもりだった。
だが、もうそんな物などどうでも良くなり、美名を拐って行きたくなってしまう。
「やいっ!
はまじろう――っ」
真理がいきなり体当たりしてきて、綾波は転げた。
「お前――っ
贈りもの作戦でポイント稼ぎをしようたあ、いやらしいやっちゃな――!
はまじろうの癖に――っ」
綾波は、何とか起き上がると、真理を睨んだ。
睨んだところで、はまじろうの顔はいつものハニーフェイスで全く迫力はないのだが……
だが、真理にはその殺気が伝わった様だ。
腕捲りをしてはまじろうにジリジリと近寄る。
「お?やるかあ?
男同士の勝負をするか――はまじろう!
何が"嵐を呼ぶはまじろう"だ――!
てやんでえ!
呼べるもんなら呼んでみろ――っ」
「真理!止めろよ」
由清が真理を羽交い締めにして説得するが真理の荒い鼻息は収まらない。
綾波も、腕を前に突き出してファイティングポーズを取る。
「は、はまじろう……
危ない事は止めて?」
美名ははまじろうスーツの裾を握り締めた。
「ちょっとあんた達――!何でそんなに血の気が多いの?
仲が悪いのよっ!
お店に迷惑でしょ――!」
志村は二人の間に割って入るが、店員達はこれがパフォーマンスだと思っているらしく、皆目を輝かせている。
「お――!
いい絵ですね!」
堺は堺で写真を取りまくっている。
「……確かにお店に迷惑かけたらワリィよな……
おいっ!
表へ出ようぜ!」
真理ははまじろうから目を離さないまま、店から出る。
綾波も頷き後に続くが美名が裾を離さない。
「はまじろう……」
背中に美名の視線を感じながら、綾波は振り返らずに言った。
「心配するな……美名」
「――――!」
その声に、美名の全身がハッと何かを感じ取った。
低くて、でも心地好く鼓膜を震わせる声……
この声を、自分は良く知っている……
この声に身体を熱くしたり、心を甘く疼かされて胸を痛くしたり……
はまじろうは颯爽とした足取りで店から出ていった。
いつの間にか竹下通りにはギャラリーが溢れていて、はまじろうが出ていったと同時に歓声が上がった。
美名は震える足取りでニ、三歩踏み出して呟いた。
「つ……剛さん……?」
通りのど真ん中で、真理は待ち構えて仁王立ちをしていた。
はまじろうは悠然とした足取りで真理から3メートル程離れた真正面まで来ると肩をクルリと回した。
「あのバカ……」
由清は頭を抱えている。
「もう……確かに本当にバカな子達よねえ……
こりゃ、また大変な事になりそうね……」
志村は二人の周りに群がる沢山の人を見て深い溜め息を吐いた。
「プリキーは、いわゆる
"お騒がせバンド"
の称号がピッタリ来ますね……ハハハ」
堺がシャッターを激しく切りながら笑っているが、志村は首を振る。
「もう~
堺ちゃんたら止めてよっ」
「大丈夫です、危なくなる前に止めますから……」
堺は様々な角度から激写を続けた。
「……もう……
堺ちゃんが反対に吹っ飛ばされるわよ……
いいわ、いざとなったらこの志村が久々に鉄拳を奮うし!」
「いや……
余計に大変な事になりそうな気がします」
袖を捲り何気に筋肉を見せ付ける志村を見て、由清は呆れている。
外に集まったギャラリーも、二人はパフォーマンスをしているのだと思っている様だ。
皆期待に満ちた眼差しで睨み合う真理とはまじろうに注目する。
真理は首を回して怒鳴った。
「ふん……
いい具合に観客が集まったな……
大勢の前でぶちのめしてやるからな――!」
はまじろうは身動きせずに、フッと笑い声を溢す。
「――!?」
真理は、その声に目を見開いた。
先に仕掛けたのははまじろうだった。
着ぐるみの丸い腕が鋭く空を切り、真理の顔を狙った。
「――っと!」
真理は間一髪で交わしてカウンターパンチを繰り出すが、はまじろうは素早く腰を落として避けながら真理の腹に拳を突き出した。
「とっ……とと」
真理は辛くもそのパンチをかわし、バランスを崩しながら足を振り上げた。
はまじろうは華麗なジャンプでかわし、見事な着地を決める。
「おお――っ」
「真理くん、カッコいい~」
「はまじろう……パねぇ!つええよ――!」
ギャラリーが感嘆の溜め息と歓声を送る。
やはり堺は写真を撮りまくっていた。
美名も店から出て、二人を見守っていた。
はまじろうの仕草、動きを見れば見る程、綾波その人だった。
はまじろうと仕事をしていたこの二週間を振り返ると思い当たる節が多過ぎる事に気付き、美名の瞳にまた涙が盛り上がる。
「つ……よしさん……」
真理とはまじろうはジリジリとお互いの距離を詰めて睨み合いを続ける。
「お前……
気に食わない奴だと思ってたら……
綾波なのかっ!?」
「え、ええ?」
由清が目を剥いた。
「ええ――――っ」
堺は絶叫し、シャッターを切るのを止めた。
「あら……真理くんたら……いい勘ね」
志村は眉を上げた。
はまじろうは更に間を詰めて行き、目にも止まらぬ速さで右足から踏み込みパンチを繰り出し、真理の頬を掠めた。
「おお――っ」
ギャラリーがどよめいた。
触れもせず、そのパンチは真理の頬に小さな傷を負わせた。
つつ、と血が目の下を伝う。
「は……はええ!」
真理は驚愕の眼差しを向けながら、尚も激しく手数を出してくるはまじろうの拳を腕で防御する。
「剛さん――」
美名は胸の前で手を握り、はまじろうを見つめていた。
二人の拳がぶつかり合った瞬間、綾波は真理に一言放つ。
「いいか……
お前には……
いや、誰にも美名は渡さん」
「――っお前やっぱり」
真理が小さく叫ぶ。
堺は夢中でシャッターを切っていたが、ふと違和感を覚えカメラを構えたまま周囲を見渡した。
ギャラリー達の反応が、先程とは少し違っている様に見える。
皆スマホや携帯を手に、ヒソヒソ話をして対決している二人ではなく、違う方を見ている様だ。
同様に、志村や由清も異変に気付いた。
皆、いつの間にかちらちらと美名の方を見て何かを言い合っているのだ。
「……え――っウソでしょ」
「可愛い顔して……だよね」
その呟きを耳にして、由清が眉を寄せた時、隣の女性が熱心に読んでいる新聞に目が止まり、息を呑んだ。
「すいませ……ちょっと見せて下さい」
横から新聞を掴み、その内容に目を見開き背中に冷たい物が流れた。
「号外――!号外です――!」
気が付けば手に新聞の束を持った何人かのメッセンジャーが竹下通りを号外の新聞を配って歩いている。
「し、志村さん!」
由清がその新聞を手に志村に駆け寄る。
志村の顔が白くなり、掌で口を覆った。
「た……大変だわ」
堺のスマホが鳴る。
「はい!……ペコチーフ?」
『堺ちゃん?
……その場から早く美名さん達を連れ出して編集部に戻って来て』
いつになく緊迫したその声に、堺はただ事でない何かを感じ取った。
「何があったんですか」
『美名さんの写真とか……綾波君の記事がスポーツ紙の号外で出回ってて……
ネットでも大騒ぎになってるわ……
とにかく、早く戻って!』
「は、はい!」
堺はカメラを首に掛け、店の前に居る美名の所まで走っていく。
美名ははまじろうを見つめていて、全く異変に気付いていない様だった。
堺は美名の手を取り、驚く美名に
「撮影は終りです。
この場から急いで離れますよ!」
と小さな声で、しかしはっきりと伝えた。
いつも柔和な目が厳しい光をたたえているのを美名も気付き、堺に手を引かれるまま人混みを掻き分ける。
「志村さん!由清君に真理君に……は、はまじろう……綾波さん!
撤収しますよ!」
堺が声を張り上げると、志村は由清と顔を見合わせて頷き合い、真理とはまじろうは掴み合った体勢で周りを見た。
「な……なんだ?」
戸惑う真理に、由清が新聞を持たせてその手を引っ張る。
真理も驚愕して口を大きく開けた。
「な……んだよコレっ」
「皆さん、走りますよ!」
堺が美名を伴い通りの裏へと抜けた。
志村と由清、真理もそれに続く。
集まっていたギャラリーはどよめき、各々スマホや携帯で写真をまた撮り始めた。
「綾波さんも――早く!今から編集部に向かいます!」
堺が、未だに竹下通りのど真ん中で立ち尽くすはまじろうに扮した綾波に叫んだ。
「つ、剛さん――」
美名も走りながら綾波を振り返る。
だが綾波はスポーツ紙を手にその場から動かずにいた。
美名達の姿が見えなくなると、綾波は手の中の紙をクシャリと握り潰して唇を噛んだ。
紙面には見開きで大きな文字が踊っていた。
『人気新人バンドprinces &junkyの歌姫とマネージャーの醜聞』
『歌姫のスゴい男性遍歴』
『 マネージャーはかつて義母と不倫関係にあった男』
――――
タクシーを捕まえ、一同はポキノン編集部に到着した。
編集部ではペコが待ち構えていて、一同を応接室に案内すると
「お茶を用意して来ますから……お待ちくださいね。堺ちゃん、手伝って?」
と言って堺を引っ張り給湯室に行くと棚から来客用のカップをガチャガチャと引っ張り出す。
「お紅茶にしましょうかしらね~
丁度頂いたマドレーヌもあるし……」
「い、いいんですか?
呑気にお茶なんてしてる場合ですか~?」
堺は大きな盆を持ってオロオロする。
ペコは予め沸かしていた湯をカップに入れ、ティーバッグを手際よく落としていく。
「ほら、堺ちゃん、色が出たらティーバッグ救出!」
「は、はいっ」
堺は手伝いながら、尚も狼狽える。
「だから、こんな事をしてていいんですか!?」
ペコは、マドレーヌを一つ堺の口に突っ込んだ。
堺は目を白黒させて口をモゴモゴさせる。
「こういう時こそ落ち着かないと!
アタフタオロオロしても何も解決しないわよ!」
「むぐ……そ、そう……すけど……」
「それにしても……やられたわね……」
ペコは女王様眼鏡を指でずらし、覗いた目を光らせた。
「人気者を陥れようとする輩はこの世の中わんさと居るけど……
一体誰があんな情報を?」
「プリキーの醜聞が出回る事によって世間のイメージダウンのリアクションはある程度避けられないでしょうね……」
堺は深刻に呟く。
「……プリキーは岸コーポレーションのバックアップがあるにしても……
各タイアップが暗礁に乗り上げてしまう可能性もあるわね」
ペコはマドレーヌの箱をビリビリと破いていく。
「確か美名さん……KOSO(コーソー)化粧品のCMが決まってましたよね……
撮影等はまだでしたかね?」
「KOSOのキャラクターは今まで西野未菜だったわ……
美名さんがもし先方から切られたら、西野がキャラクター続投になるわね……」
「まさか……」
堺がゴクリと喉を鳴らすとペコは頷いた。
「そのまさか、の線の可能性が高いわ……
西野未菜……一体何処まで手段を選ばないのかしら」
「この事……美名さんには」
「今は……美名さんの心のケアが大事よ。
西野の事は、また考えましょう……
さて、そろそろ行きましょ?
堺ちゃん、お盆持って転ばないでね?」
「は……は……いっ」
堺は緊張の面持ちで頼りなく返事をした。
――――
応接は、どんよりと重い空気に包まれていたが、堺はここぞとばかりに癒し系の笑顔を振り撒き紅茶を配る。
「あら、ごめんなさいね~お世話をかけて……
まさか、こんな事になって撮影出来なくなるなんて……
申し訳なかったわ……」
志村は溜め息を吐いて俯いた。
「謝らないで下さい!
今日は楽しく仕事が出来ましたし、それで良しとしましょう!
アハハハ」
堺が無理矢理笑い声を上げるが、皆一様に顔をひきつらせた。
「堺ちゃん、見事にスベッたわね」
ペコが苦笑する。
ずっと黙っていた真理が、口を開いた。
「なあ……
これ……どういう事なんだよ」
握りしめていた新聞をテーブルの上に広げ拳を叩きつける。
「こんな……
俺達の事……ある事ない事おもしろおかしく書きやがって――!
何処のどいつかわかったらぶっ飛ばしてやらあ!」
美名は紙面に踊る大きな文字と、自分が綾波とホテルから出てきた瞬間と思われる写真、そして真理と手を繋いで歩く場面の写真を見つめていた。
記事の概要はこうだった。
『今若者から大人まで幅広い世代の人気を急速に集めているプリキーことprinces&junkyだが、バンド内での乱れた恋愛模様が明らかになった。
清純な歌声と可愛らしいルックスのボーカルの美名は、どうやらマネージャーの綾波、同バンドメンバーでベース担当倉田真理、そして硬派なロックバンド『silent wolf』のギターボーカル庵原翔大、と華麗な男性遍歴を送ってきた強者らしい。
そしてある関係者からの情報によると、マネージャーの綾波剛という男は昔、あろう事か義理の母親と男女の関係にあったという。
バンド内での三角関係、四角関係に、綾波の過去のスキャンダラスな恋愛、これはプリキーの音楽の世界観とは似ても似つかない。
この話をファンは一体どう受け止めるのだろうか?』
「綾波は……何処へ行ったんだよこんな時にっ」
苛立ちを隠せない真理を志村はたしなめる様に言った。
「起こってしまった事は仕方ないわ……
それに、綾波君は綾波君の考えがあるんでしょう……」
「綾波は、はまじろうに隠れて俺らの側に居たんだろ?
……美名を一人にした癖に……わけわかんねぇ!」
「真理……落ち着いて」
真理は由清をカッと睨み付けた。
「お前、よくもそんな平然としてられるな――!
バンドがどうなるか分からん時に……!」
由清は僅かに口元を歪めて真理を見た。
「……平然としてるわけじゃないよ」
「平然としてる様にしか見えないぜ!
そうか、お前は元々バンドに乗り気じゃ無かったからな!
……これでプリキーがパアになれば自分が楽になると思ってるんだろ実は――?」
「真理――!」
由清は鋭い声で叫び、真理の胸ぐらを掴んだ。
「お?何だよ……お前もそういう顔をすんだな~」
真理は至近距離で由清と睨み合う。
由清は青ざめながら歯を食い縛る。
「バンドが無くなればいいなんて……
思うわけがないだろ――!
俺にはプリキーが凄く大事なんだよ!
皆の事が全部大事なんだ!」
「……っ」
由清の剣幕に押され、真理は絶句するが、志村が二人の間に入ると、まず真理、次に由清をビンタした。
「し……志村さんっ」
堺が狼狽えて空の盆を持ったまま右往左往する。
「あんた達、二人とも頭に血が昇ってるようね。
本当にちょっと落ち着きなさい。
……悲しい事に、芸能界ではこういう事はよくあるのよ。
私だって……昔はね、騒ぎの渦中に置かれたのよ」
志村は、雪乃の事、大室の事を思い出していた。
ペコもうんうん、と頷いている。
「まあ、変な話……人気者の証拠とも言えるわ。
本人は噂をしてもらいたくても話題にも上らないタレントはワンサカいるからね。
いずれほとぼりが冷める時が来ます……
それまでちょっとキツイけど……」
「あの……」
黙っていた美名が口を開くと皆が注目した。
新聞から目を離さずに、小さな声だがハッキリとした口調で話す。
「私が昔しょう君と付き合ったのも……真理君と付き合ったのも……
剛さんとの事も……
全部事実だけど、悪い事をした訳じゃ……ないと私は思ってます」
真理は立ち上り、美名の手を握り締めて頷いた。
「そうだよそうだよなっ!恋愛なんて皆してる事なのに、こうして記事にされると何か違って見えちまうよな――!
そうさ!悪い事してねーよ美名は!」
「……書く側に、悪意があるからそんな風に見えてしまうのよ」
ペコが紅茶をスプーンで掻き回しながら呟く。
「真理君の言う通り、恋愛するのは悪事じゃない……
だだ、ミュージシャンは個人ではなくて公(おおやけ)の場に立ってメッセを発信する公人ですからね……
一部のファンは、決して貴方達の事を自分と同じ様な人間だ、とは思わないわ……
自分の中で理想のプリキーを作り上げてしまっているファンは、戸惑うでしょうね」
ペコの言葉に、志村は頷いた。
「名前が知れるのはミュージシャンに取って喜ばしい事だけど……
同時にリスクも付きまとうわ……」
「妬みの対象にもなりますからね……」
堺がせつなげに眉を寄せた。
由清は頭の上で手を組み、俯いて黙っている。
美名は、目を潤ませて由清を見た。
「由清君……
ごめんね……
由清君が、いつも私の事を気遣ってくれてるの……よく知ってるよ……
プリキーのリーダーだからって、プレッシャーに時々悩んでる事も……」
「……美名ちゃん」
由清は顔を上げた。
美名は、真理の手を握り返して見つめる。
「真理君……
いつもありがとう……
私、真理君と付き合ってた時、本当に楽しかった……
なのにこんな風に記事に書かれて……真理君にまで迷惑かけて……」
「め、迷惑なんかじゃねーよっ!それに美名は悪くねえし!」
真理も泣きそうになって鼻を啜っている。
「堺さん……ペコさんにも……いつもプリキーの事を気にしていただいて……」
「うううん?
私も堺ちゃんもね、プリキーの皆の作る音に惚れてるのよ!
だから貴方達の為に何かしたくなるのよ!
……こんな風に思わせるミュージシャンに、そうそう会った事はないわよ!
……だから美名さん、負けたらダメよ?」
ペコと堺が頷いている。
美名も頷くが、頬に涙が伝う。
「もう――美名ちゃんっ!泣いたらダメよ――っ
私まで泣いちゃう――」
志村は美名の背中から腕を回して頭を撫でた。
「し……志村さん……私……
ごめんなさ……っ」
「謝らないで……
何か、いい方法はあるはずよ?
美名ちゃんは悪くない、悪くないんだから、自分を責めたらダメよ」
しゃくり上げる美名の頭を撫でながら、志村は子供に言い聞かせる様に優しく言った。
美名は泣きながら笑う。
「もう……志村さんも……皆も……
何故そんなに優しいの? 私……私っ」
話ながらまた嗚咽が込み上げて、言葉を続けるのが困難になる。
「美名ちゃん」
「美名――!」
由清と真理も美名を抱き締めて、四人が抱き合って泣く事になった。
「うぐ……そうよねっ……この世知辛い芸能界にしろ……この世の中……
優しさが欲しいわよねえ……
綺麗事だと言われようと……やっぱり優しさと愛がなければ人は生きていけないのよぉっ……
ぐひっ……ひあああ」
ペコもいつの間にか貰い泣きをして眼鏡を外し堺のシャツで鼻をかんでいる。
「ひいっ……何故っ」
堺は別の意味で泣きそうになっていた。
その時、志村のスマホが鳴った。
「んもうっ!何なのこのいい場面で!」
顔をしかめて電話に出たが、智也からだと分かるとコロッと表情と声色を変えた。
「んまあっ岸さん~!」
「おい……」
真理を始め、皆の目が白くなる。
だが志村は話すうちにその目の色の中に厳しい光をたたえて溜め息を吐いた。
「はい……ええ……そうですか……
仕方ありませんね……
ええ……
とんでもありませんわ?岸さん、ありがとうございました……」
「……岸さん、何を?」
由清が不安げに顔を曇らせた。
志村は俯いて言った。
「今やってるアニメ、ワンクールプリキーの曲を使う契約だったけど……
さ来週放送分から別のミュージシャンの曲にすることになったそうよ……
他に決まりかけていたプロジェクトも中止ですって……まあ、予想はしたけど……ものの見事に……だわね」
「……そうなんですね」
由清が青ざめて頷いた。
「むむ……ちょいネットを見てみっか……」
真理がスマホを出してツイッターを見始めた途端頭を抱えて呻く。
「うお~!
トレンドだぜ……」
「見せて」
美名は微かに震える指で画面をタップしていった。
――――――――――
(>_<。)ウソだろ――!
美名ちゃんはそんなアバズレ違うよね――!?
♯プリキースキャンダル
プリキー……
恋愛禁止じゃないんだな。
今時アイドルだって恋愛禁止で厳しく事務所から縛られたりしてるのに……ずいぶん自由だなW
♯プリキースキャンダル
プリキー好きだったけど見る目変わるわ~
♯美名たん
そりゃ~恋愛くらいするだろ?
皆騒ぎすぎ
♯プリキー美名たん
やつらは夢を見させる側の人間だろうがよ
夢を砕いてどーすんだ
(-_-)♯プリキー
てかマネージャーきめえ♯プリキースキャンダル
美名たんとマネは今でもヤッてんのかな?ハアハア(*´д`*)
♯美名たん
あーあ美人はいいね~
私も翔大と付き合いたい~!♯プリキースキャンダル
美名たんて清純に見えてアバズレ?
たまんね――ww
♯美名たん
「もう見ない方が……」
由清が美名からスマホを取ったが、美名は唇を噛んで涙を溢す。
「美名ちゃん……」
志村が美名の震える背中を擦った。
「……悔し……い……
皆、頑張って来たのに……
こんな 風にプリキーの名前が使われて……
それに……剛さんの事だって……皆何も知らない癖に……っ」
「うおお美名――っ」
真理は涙で顔をグシャグシャにしてオイオイ泣いた。
「……そうね、悔しいわね……悔しいけど……
今暫くできる事はないわよね……
う~んう~ん……でも、何かないかしら……」
志村は目を瞑り、懸命に考えを巡らせた。
「ペコチーフ……
ポキノンのプリキーの記事の掲載は大丈夫ですか?」
堺は小声で聞く。
「もちろん載せるわよっ!私が全責任を取るわ!」
ペコは鼻息荒く言った。
美名も涙を流しながら、懸命に考えていた。
今まで芸能界の騒動を見る度に他人事ながら
"人の噂も七十五日"
だよね、などと思っていたが、まさか自分がその矢面に立つとは思わなかった。
ポキノンのパーティで綾波に
、――ミュージシャンと言えど、恋愛は自然にしたい――
という事を自分が言ったことを思い出す。
今思えば、何と物を知らない言葉だっただろうか。
いくら自分が自然にしたいと思った処で、それをおおらかに許してくれるばかりの優しい世の中では無いのだ。
まさか自分の恋愛がこうして取り沙汰されて大騒ぎになるなど、夢にも考えて居なかった。
つまり、自分は人の前に立って表現をする立場で、少なからずも人々に影響を与える人間なのだという自覚が無かったという事だ。
甘かったのだ。
自分が傷つくだけではない。
周りの人達にだって迷惑がかかる。
(そういえば、桃子とお母さんは大丈夫なのだろうか?
私がこんな噂になって、陰口を言われたり嫌がらせをされたりしないだろうか……
それに 、剛さんのお母様……菊野さんは……
ひょっとして、同じ事務所のクレッシェンドの人達にも影響があるかも知れない……)
しかし、どうしたら良いのだろうか。
悪意に満ちたスクープだが、事実には事実なのだ。
何か反論しようにも、反論も何も、言う事はない。
(だからと言って何もしないでこのまま人々の口が静かになるのを待つしかないなんて……)
美名は頭を抱えて目を閉じてひたすら考えた。
「あ~!
そういや翔大のところは大丈夫なんかな?
でも、あいつアメリカだから影響はねえか……」
真理が呟くと、皆目を剥いた。
「あっアメリカ!?」
「翔大がアメリカ?」
「なんですって――っ!?大室の言ってた事ってそれだったのね?
……うわあああっ
何か悔し――!きーっ!先を越されたわ――!」
「まああ!全米デビュー?これは、ポキノンも黙って見てられないわね!取材よ取材!
ペコはアメリカへ飛ぶわよ――!ほほほ」
皆がざわめく中で、美名は電気が点る様に何かが閃いた。
顔を上げ、一点を見つめて呟く。
「そうだ……しょう君……!」
別れ際の翔大の言葉が甦る。
――『美名、食らい付け!』――
美名は、ガバッと立ち上がり、自分のバッグをひっくり返して中身を全部出した。
皆がいきなりの行動に唖然とする中、美名は手で荷物を掻き分け、白い封筒を取り出した。
翔大が寄越した手紙と小切手だ。
美名は決意を固めた様に唇を結ぶと、ペコに向き直り、真っ直ぐに見ながら小切手を渡す。
「ペコさん……
ここに、これだけの金額の小切手があります」
ペコは眼鏡をずらして金額を二度見したが、美名の言葉に頷いた。
美名は一同一人一人の顔を見てゆっくりと、しかしきっぱりと言った。
「そのお金で……ポキノンさんのお力を借りて、そして皆の力を借りてやりたい事があるんです」
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