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愛欲の搭で

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「あ――沢山出来たっ!これで今夜のご飯は困らないねえマイカちゃん!」


「そうだね~!
あとはお酒沢山買ってきて騒ご~!」




用意周到に持参していた風呂敷に、料理を詰め込んだ大量のパックを包み桃子とマイカがホクホクしていた。



「おい……こんなに食べるのかよお前ら」


真理が呆れる。



「ホテルの人が深いタッパーに入れてくれたよ」



由清がシチューを持って来て、桃子が受け取った。



「ありがと~!アンソニー!」



「そんなもんまでお持ち帰りすんのかよっ」



「え――だってこんなに余ってるし、勿体無いじゃん」



「食べて貰った方がホテルの人も助かると思うよね~?
美味しい料理が誰にも食べられないまま処分されるなんて可哀想すぎるわよ!」



マイカは拳を握り力説した。








「出された物は残さない!これが竹下家の家訓よ!」


ドヤ顔で言うマイカに真理は絶句する。



「……そうそう……
かーちゃんにうるさく言われたよな」



何処からか聞き覚えのある声がして、マイカは振り返るが誰も居ない。



「……?何?今の」




その時、大きな花瓶に活けられたアレンジメントフラワーの陰に健人ことライオン丸は隠れていた。



「やっべ――……見付かる所だった……てか何でマイカが居るんだよ……」



「チンパンジー!ここにいたのか」



花の後ろから、綾波が顔を出す。



「あ、兄貴っ!チンパンジーじゃないっすよ!
百獣の王のライオン丸っす!」




「何だこの風呂敷は……」



深緑の唐草模様の風呂敷を頭に巻いた健人を呆れて見る。



「へへ、ちょいと変装です」



「何だか知らんが雑な変装だな……
そうだ、お前、美名を見なかったか?」









「あっ……そういや、姫様見かけないっすねえ……さっきまで居たのに」



綾波は、胸騒ぎを覚えて会場の外へ駆け出すが、ロビーにも、休憩室にも美名の姿はない。



また会場へ戻り、帰り支度をしながら談笑する人々を掻き分けて探すが見当たらない。




「綾波さん、どうしました?」



堺がやって来た。




「美名が……」




「え?」




その時、堺の後ろを庄森と聖恵が通り、綾波は二人の前に立ちはだかった。



「おい……翔大は何処だ」


美名の姿も、翔大の姿も見えない事に綾波は焦っていた。


自分が目を離した隙に、まさか……



「翔大ぁ?……さあな、先に帰ったんじゃねえの?」


庄森が面倒そうに答えるが、隣の聖恵がさっと青くなるのを綾波は見逃さない。








「おいっ!知ってるのか」


聖恵の腕を掴み問い詰める。



「何すんだよ!」



庄森が腕を振り払うと、綾波が胸ぐらを掴み睨み付けた。




「とぼけるな……
翔大が、美名を連れて行ったのか……あ?
答えろ!」




「ふん……知ってたとして教えると思うか?」



庄森がニヤリとすると、綾波が腕をねじ上げる。


「答えないと……ぶちのめすぞ」



ただならぬ雰囲気に、人々がざわつく。



「綾波――何してんのよっ」
「綾ちゃん!」


桃子と三広が飛んで来る。


「綾波!どうしたんだ」


真理と由清も慌ててやって来るが、同時に警備員が現れて綾波が取り押さえられてしまった。




三広が青くなり、駆け寄る。



「綾ちゃん……!」







「離せっ」



綾波が暴れるが、屈強な警備員二人がかりで押さえられて身動きが取れない。



「事情はあちらの部屋で伺います……こちらへ」



「離せ……
こんな事をしている間に美名が……っ……クソ!」



「反抗すると通報しますよ……さあ、来てください」


警備員に連れられて行ってしまった綾波を追いかけようとする三広を、堺が止めた。




「一体どうしたんです?」



「お姉ちゃん……
お姉ちゃんが居ない!」



桃子が、今頃気が付いて顔色を変えた。



「なにぃ――?」


真理が目を剥く。



「……翔大も居ないの?」


由清が不安げに言うと、皆が沈黙した。



「翔大さん……まさかお姉ちゃんを」



桃子が口を覆った。









黙っていた聖恵が口を開いた。



「……翔大さんは……美名さんと一緒です……」




「おい、聖恵!」



庄森が咎めるが、聖恵は首を振り涙を溢す。



「……多分……翔大さんのマンションに向かった……筈です……」



桃子は、ずいっと聖恵に近づき、真っ直ぐに見た。



「翔大さんのマンションて、何処なの?」



「……〇〇区のヴェルベル・プランドール・パラシオンスウィートの9523号室……です」



「ううっ……舌噛みそうな名前っ……
うん、分かった!」



桃子は皆を振り返る。



「お姉ちゃんを助けに行くよ!翔大さんにお灸を据えてやらないと!」



「桃子ちゃん……
無茶はしないで……お、俺が頑張るから」


三広は、顔をひきつらせながら、拳を握る。


「翔大めえ――!重ね重ね許せん!」


真理は歯軋りしている。


「これって……誘拐になるかもね」



由清の言葉に、皆がハッと息を呑む。

今にも揃って走り出そうとする勢いの面々に、マイカが冷静な一言を放った。



「待機組と、捜索組に分かれた方がよくない?」








「そうですね……
取り合えず、僕は警備員さんに事情を話して綾波さんを……
聖恵さん、一緒に来てくれますか」



堺の言葉に聖恵は頷いた。


「俺も行くから」


庄森が言うと、聖恵は微かに笑った。


「じゃあ、綾波さんを解放してもらうよう頼んできます」


堺達は足早にその場を離れた。

残された面々は思案する。


「じゃあ、半分に分かれよう……」



「どうする?」



「こんな時はだな――
ジャーンケーン」

真理が腕を振り上げた。


「バカじゃないのっ?」


直ぐ様桃子に殴られる。


「アウチッ……桃子!お前ちょいと凶暴すぎないか――?」



「ふざけるあんたが悪い!」


「ふざけてねーし!俺は真剣に考えてだな」



言い合う二人を余所に、由清は腕を組み眉を寄せた。



「根本さんは、桃子ちゃんと待機していてください。マイカさんも」



「そうだね、根本さんが居たら目立っちゃうし……私もこの格好だしなあ」


マイカは自分の振袖姿を見て言う。









「万が一、美名ちゃんが綾波さんのマンションに自力で戻る可能性を考えて……そこで待機」



「う――ん……
翔大が……美名ちゃんを離す……かなあ」



「限りなく可能性は低いかもね……
でも、そんな感じにしましょうか」




三人は頷き合った。




その様子を、扉の隙間から健人が見聞きして一人何度も頷いていた。



「ふんふん……成る程……良くわからんけど、とにかく姫様の危機なんだな……
よ――し!ここはライオン丸の出番だ!

俺も出動するぜ!っしゃあっ!」



健人が戦隊ヒーローの変身ポーズの様な動きをするのを、ホテルのボーイが怪訝に見ていた。





――――――








淡い微睡みの中で何処からか聴こえる優しい調べ。

しなやかな指が動く度にポロン、ポロンと頭の中へと旋律が染み渡る。


俯いているその頬には僅かに悲しみが見え隠れする様な……



(……何故?


こんなに綺麗な音を奏でているのに……


そんな目をするの?)




「……美名……」



低くて済んだ囁きが耳を擽った。



白く霞が掛かった様な世界が、次第にはっきりとした色彩を持って美名を目覚めさせる。



視界に飛び込んで来たのは……



黒い翔大の前髪と、その下から覗く深い黒曜石の様な瞳。


そして、背には青いカーテンが見えた。










「気分は……悪くない?」



すぐ目の前に翔大の顔があり、美名は一気に目醒めた。



「う……うん……イタッ」


鳩尾に少し痛みが走った。



翔大の手がそこに触れて撫でて来て、美名は身を固くするが、見つめる目は優しかった。




「ごめんね……美名……痛かったよね」



「しょう君……
ここは……ど……こ?」



「俺の部屋……
いや……二人のお城だよ」


美名は思わず吹き出す。



「しょう君ったら……
おとぎ話じゃあるまいし」



「美名は俺のお姫様だからね……」



真顔で囁いて、美名のお腹を掌で撫でていた翔大は、その手を足首へと滑らせてドレスを捲り上げた。








「や……ダメっ……何を」


両の手首を片手で纏められてしまい、美名は両脚をばたつかせたが、膝を掴まれて開かれ、そこへ翔大の身体が入ってくる。



「暴れないで……」



「や……やだ……っ」



「綺麗だ……すごく」



唇を奪われて、思うがまま咥内を犯される。



「ん――っ……んっん」


必死に首を振り逃げようとするが、翔大の唇も舌も美名を離さない。



意思とは関係なく身体がじわりと熱くなっていき、それが堪らなく嫌だった。



「ドレス……似合ってるよ……」



指が、首筋から胸元に伸びてまさぐってくる。



「ああっ……止めて」



目の前で、翔大の涼やかな瞳が甘く揺れた。



「でも……美名のもっと綺麗な姿を俺は知ってる……」









翔大の指が、胸元のリボンをほどいていく。


「や……やっ」



掴まれて自由にならない腕をよじらせ、体や脚を懸命に動かしても何の抵抗にもならず、翔大は片手で器用にリボンを全部外してしまった。



「脱がすのに面倒なドレスだね……」



「お……お願い……帰して……」



唇が震える。



(ついさっきまで、皆と一緒に、剛さんと居たのに……

何故こんな事になるの?


一緒にステージで歌っていた時には、こんな素振りは全く見せなかったのに。

以前の様に、優しい笑顔で私を見ていたのに――)



今、目の前でドレスのボタンを外して居る翔大は笑っていなかった。








「しょう君……や、止めて」


「美名のその脅える声が……可愛い」



「――!」



翔大はベッドの脇にあるブランデーを掴み、口に含むと美名の顎を持った。


「や……嫌」



首を振る美名の口を抉じ開けて、唇を重ねられると同時に甘く苦い液体が流し込まれる。



「ぐっ……ゲホッ…」



噎せて咳き込む美名の背中を、翔大がそっとさする。



「美名はお酒に弱いよね……可愛いよ」



「ゲホッ……んっ」



翔大はまた唇を押し付け、酒を流し込んで来た。



喉から入った液体は冷たくて熱くて、身体の真っ芯が焼けていく。










「甘くて苦くて……熱いだろ?……俺の……気持ちと同じだよ」



「ゲホッ……ゲホッ」



咳込む毎に、身体が熱くアルコールに蝕まれていく。



翔大は優しい手つきで背中をさするが、咳が止まると、背中から腕を回してドレスをゆっくりと脱がせにかかる。



「――!や……」



美名は身体を捩らせるが、既に全部のボタンが外されていて、青い布はいとも簡単に降ろされて行く。



肩と背中が露になると、翔大は髪を横へ流して唇を付けて来る。




「美名……好きだ」



「や……やっ……私は……剛さ……」



「奴の名前は……聞きたくない」



「あっ」



翔大の手が素早くドレスを更に降ろして、腰まで身体が露になった。









翔大が息を呑む気配がする。


美名は、脱がされたドレスを掴んで身体を隠そうとするが、呆気なく阻止されて組み敷かれた。



下着だけの姿を嘗める様に見られて、美名は顔を逸らす。



「美名が……欲しくて欲しくて……堪らなかった」



翔大の声が震えて居て、思わず振り返ると、その瞳が泣きそうに潤んで居た。



「しょう君……」



「俺は……
何故……あの時……美名を手離したんだろうな……」




「……勝手な事ばかり言わないで」




怒りが込み上げてくる。

(昔、別れのきっかけを作ったのは他ならぬしょう君なのに……


私があの時どれだけ泣いたか、知らない癖に!)









パシン!



美名が平手打ちをすると、小気味良い音が鳴り、翔大の髪が一瞬揺れ、頬が赤くなる。



もう一度打とうと手を振り上げるが、反対に掴まれて口付けされてしまう。



「ん……んん」



唇どころか、顔を食べられてしまいそうな口付けに、美名は必死に抵抗し、胸を叩いたりするが効果がない。


唇を噛もうとするが、避けられてしまう。



「だから……美名のする事はお見通しだって言ったろ?」


翔大は額をくっ付けて、至近距離で優美な笑みを浮かべている。



悔しくて腕に噛み付こうとするが、肩を押さえ付けられてブラを押し上げられ、乳房にキスをされた。


何度も、何度も敏感な突起を唇と舌でなぶられて正気では居られず、甘く叫んでしまい、翔大を益々猛らせてしまう。








「可愛い……美名……っ」

優しい瞳を潤ませて譫言の様に呟くけれど、翔大の押さえ付ける力は凄まじく強く、手と指の動きは素早かった。



乳房をまさぐっていた指はやがて下へ移動してショーツを掴む。



「――!や……止めてっ」


「美名……
じっとして」



「お願い……止めて!や……っ」



「嫌だよ……」



翔大は微笑みながらゆっくりとショーツを降ろして行き、美名の反応を見ている。



「しょう君っ……」



足首まで降ろされて、美名の身体を覆う物は何一つ無い。


脚を閉じようとしたが膝を掴まれて抉じ開けられ、太股に口付けられる。


「や……ダメ!だめぇ――っ」



「綺麗だ……」



チクリと痛みが走る。

脚の付け根の際どい場所に痕を付けられたのだ。








「やっ……そんな処っ……」


「沢山の痕を付けてあげる……」



「嫌……っ」



目の前の美しく淫らな身体を見て、翔大の欲望は破裂しそうに膨らんでいた。


身体じゅうに触れて、自分の痕だらけにしたい。



押さえ付け、首筋から鎖骨、胸の膨らみにかけて痕を付けていくと、触れる度に甘い溜め息を目の前で付かれて身体が熱く猛った。



「だめぇ……もう……よし……てっ」


泣き出しそうな顔で懇願する美名に激しく口づける。



胸を叩かれ、蹴ろうとして脚が身体に当たるが、時折、熱く硬くなった獣に触れて翔大を狂わせた。


「く……っ……美名……逆効果だって……」



「あっ……」



翔大の指が乳房を掴むと、円を描く様に揉まれる。


美名は声にならない叫びを上げて翔大の髪を掴んだ。









翔大は、たまらず指を美名の脚の間に滑り込ませた。

白い身体が仰け反る。



「いやああ――っ……」



「美名……いいんだろ?……分かるよ……こんな風に……」



長い指が花弁を巧みになぞり、溢れる蜜を絡ませながら一番敏感な蕾を探す。



美名は泣きながら両腕で滅茶苦茶に翔大の胸を叩いた。



「いやっ……あっあん……ああっ……」



「入れる前からこんな……堪らないよ……ふふ……」


「や……止めて」



拒否する気持ちを身体は既に裏切り、甘い疼きが止まらない。


――何故、こうして今触れているのが剛さんじゃないの?


目の前の翔大の姿が綾波と重なると、叫んでいた。




「剛さん……
剛さんっ……
助けて――っ!」






――――――








「――!?美名……?」


ホテルの警備員室からようやく解放されてエレベーターに乗り込んだ時、綾波の耳にその叫びが届いた。


聞こえたというよりは、虫の報せに近いかも知れない。


(美名に危機が迫っている――!?)


綾波は歯軋りをした。




桃子とマイカ、三広は綾波のマンションで待機して、綾波と真理、由清と堺は翔大の所へとタクシーで向かった。



ホテルの玄関口で、タクシーが走り去るのを聖恵と庄森が見送った。





「どうすんだよ……これから」



庄森はドレッドヘアーを風に揺らし、聖恵の小さな背中に聞いた。



「もう……おしまいね……私……」



小さな横顔に涙が光った。









「聖恵……」



「私……もう……翔大さんに協力出来ないよ……もう……無理っ……うっ」



「そんなもん、もうどうだっていいだろ……」



「でも……もう……私なんか翔大さんには用済みだわ……
私は……翔大さんの便利な女でしかないんだもの……っ」



「……あんな奴、好きなのやめちまえよ!
他に、もっといい男はいるだろう?」



聖恵が涙目で振り向いて、庄森に笑いかけた。



「サト君……ありがとう……」



「お、おう」


庄森はぶっきらぼうに言って顔を逸らした。



「でも私……
それでも……翔大さんの事がっ……」



肩を震わせ、また俯く聖恵を、庄森は唇を噛んで後ろから見守っていた。



(チクショー……
翔大の奴……!)



その拳は固く握られていた。










健人はそんな二人を影から見ていた。



「ふう――ん……
なんか、兄貴の廻りはややこしや、だねえ……」




大室の名前を出して、美名の部屋を荒らす指示をしてきた男……




フードを被り、サングラスとマスクをかけていて顔は判別出来なかったが……


あの声。


低いけれど通る涼やかな声……



訓練された様な強い声。


今日のパーティーに潜り込んでいた健人は、ある違和感を拭えなかった。



あの声に似た歌声を、この耳で聞いたからだ。




「まさか……あいつ……か?」



健人の目が輝いた時、スマホが鳴る。



「もしもっし!こちらライオン丸!……ああ、そうだ……
今からある場所へ行ってくれんか?
俺も向かうから……
宜しく頼むぜベイベー!」


スマホを胸ポケットにしまいタクシーを見るが、その待ち客の列に閉口した。



綾波達は先に向かっている。




「……ええい!
走った方が早い!
ライオン丸――発進――とうっ!」




健人は袖を捲り、腰を落として片膝と両手の人差し指を地面に付け、前を見据えると一気に走り出した。





――――――――――――




「いやあっ……あんっ……ああっ」



「昔と……弱い所は……変わらない……ね」



「やめてぇ……っ」



「今に……自分からお願いするようになるよ……ふふ」



ベッドの上で翔大に攻められ続け、美名は甘い叫びをあげていた。



「いやっ……いやっ……私……を抱く……のは……」


綾波の一見冷たい、けれど熱情を秘めた瞳が甦る。



『お前を抱くのは俺だけだ……いいな?』



「つ……剛さん……剛さんっ……」



胸が熱くなり、涙が溢れる。



翔大はその涙を唇で掬った。



「……真理には……許したんだろ?」



「――!」



翔大の瞳が歪む。



「真理には許して……俺を拒むのは何故だっ……美名っ!」



「ああっ」



太股を掴みグイと広げると、翔大は其処に顔を埋めて舌で凌辱を始めた。










熱い息と、巧みな動きをする舌は、既に滴る程潤った秘蕾を甘く苛む。


身体中が震えて、力が抜けてまともに物を考えられなくなりそうだった。


喉に流し込まれたアルコールのせいなのか、翔大の愛撫のせいなのか……



思うように動けず声を上げる美名の様を眺めながら、翔大は活発に舌を動かした。



「いやっ……ああ……もう……ダメっ……ああ――!」



舌と同時に指を押し込まれ出し入れされて、弾かれた様に身体を震わせ叫ぶと同時に、ガクリと気を失ってしまった。


翔大は顔を上げて満足そうに笑うと、美名に跨がり頬に触れる。




「今から……
俺を刻み付ける……」



低く囁くと、ベルトを外して放り、ズボンとトランクスを脱ぎ去った。










隆々と増大して焼ける様に熱い血潮を宿した獣は限界まで反り返り、美名の中を掻き回す事を狂いそうに求めていた。



腕の中で、美名は少女の様な寝顔でくったりと無防備に横たわっている。


(美名……
俺の大事な……

ずっと忘れる事の出来なかった人が、今腕の中に居る。

そして、今すぐにでも、その身体を思いのままに愛する事が出来る……)



美しい曲線を眺め、指で触れていく。


翔大は喉をゴクリと鳴らして、太股を掴むと露になった秘蕾に獣を宛がった。


途端に激しい疼きが身体中を駆け巡り、翔大は顔を歪めた。




「う……っ……触れただけなの……に」










爆発してしまいそうになるのを、唇を噛み締めて堪える。



「うっ……くっ」



天を仰ぎ、深呼吸をしてから美名に視線を戻す。


――今まで何度も自分の物にしようとして来た。
けれど、美名に泣かれて、それ以上続ける事が出来ずに、でも心も身体も激しく美名を求め続けて……

諦められずに、色んな手を使って美名を落とそうとした。


怖い思いをさせて、其処につけこめば美名は自分の所へ戻ってくるのではないか、と画策した。


聖恵まで利用して……


脳裏に、別れ際の泣きそうな顔が浮かび、僅かに口の中が苦くなる。



……ここまでして、俺は美名……お前が欲しかった……



「ん……ん」



美名が僅かに動いたが、まだ起きる気配はない。










今なら、美名が泣き出す前の今なら……
無理矢理にでも抱く事が出来る。


またあの顔で泣かれてしまう前に……



本当に、今度こそ嫌われてしまうのだろう。


憎まれて……

泣かれて……



翔大は、獣を入り口に宛がいながら、欲望と理性の間でせめぎあっていた。



だが、美名が僅かに唇を動かして呟いた瞬間、そんな葛藤は消し飛んでしまう。




「……抱……いて……つよ……しさ……ん……」



「――――っ」



翔大は、沸き上がる劣情に任せて、躊躇う事なく自分を沈ませた。



美名の身体がビクンと震え、指先が宙をさ迷った。










「うっ……!美名……っ」


直ぐ様活発に腰を上下させると、中で締め付けられた獣は狂うような快感に悲鳴を上げた。



翔大に揺さぶられ、美名は甘く溜め息を漏らして目を醒ました。



「つよ……しさん?」



トロンとしたその目は、目の前で髪を乱して自分を犯す男を認めると大きく見開かれ、口からは叫びが放たれた。




「あ、あああああっ」



「美名っ……
ハアッ……くっ……
最高……だよ……っ」



快感に顔を歪めて腰を打ち付ける翔大は、狂った獣だった。


理性が崩壊した今、美名が泣きわめいても、もう凌辱を止める事など不可能だった。








美名の視界に見えるのは揺れる天井に、揺れるベッド、翔大の髪。
そして翔大の動きと同じに烈しく揺れる自分の身体。


ユサユサと波を打つ両の膨らみを翔大は狂った様に揉みしだきながら、腰の律動を繰り返す。



「……好きだ……好きだ!」


身体だけは甘く淫らに反応して蕾の中はうち震え、翔大を受け入れていたが、心の中は凍てつく様に冷えていった。




もう、抵抗する力も無い。

叫ぶ事すら出来ずに、ただ翔大の嵐の様な凌辱が終わるのを祈った。




「美名……何か……何か言ってくれよ……」



「……」



翔大は打ち付けながら、悲しげな瞳で見つめてくる。



腰を掴み、獣が抜ける寸前まで引き抜き、また深く突き刺す。
その烈しい方法で犯し続けた。







「うっ……
イ……くっ」



突然、身体中をブルッと震わせると、翔大は長い息を吐きながら美名の上に崩れ落ちた。



火傷しそうに熱い精は、最後のひと雫まで残らず美名の中へと吐き出された。



翔大は激しく息を乱し、美名に口づけると身勝手な囁きを吹き込んだ。




「妊娠すれば……いいんだ……
そうしたら……君を……
お嫁さんに出来るのに……」



「……」



声を失った鳥のように、美名は言葉を発しない。

大きく見開かれたその瞳から、一筋涙が溢れ落ちた。




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