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十六歳の誕生日
②
しおりを挟む「あぁ……かっけぇ……目とか綺麗すぎだろ」
永山咲27歳。
乙女ゲームが大好きな独身女である。
勤める会社は中堅よりも少し下で、平凡ながらも穏やかな勤務環境で日中は過ごしている。
家に帰ると、専ら乙女ゲーム。
現実世界にはない愛とハッピーエンドをくれるゲームの世界は、まるで砂漠のオアシスのようで、この時だけは彼氏がいないことを忘れられた。
思えば高校生……いや、中三から乙女ゲームをしている気がするが、私の気のせいだろう。
神聖なるグランド王国には現実の記憶など持ち込めないのだ。
「ふふぅ……ふふふ」
奇妙な笑い声を上げても一人暮らしだから平気。
本当に彼氏がいなくてよかった。
「もう少し……あと少し……」
私の想定では、ゲームのストーリークリアまであと僅か。
最後はヒロインが悪役令嬢とバトルする場面のようだ。
緊張からか思わず汗が額に浮かぶ。
プルルルル……プルル!
「は?」
突然スマホの画面が切り替わり、母の名前が表示される。
何とも間が悪い。
プルル!プルル!
「くそがぁ」
無視したらしたで再度かかってくるような気がしたので、私は仕方なく電話に出る。
「ああ、お母さん。うん……大丈夫。え?無理無理、仕事で忙しいから帰れないって……うん。うん……はい、じゃあね」
電話を切ると、私はほっと息をはいた。
気持ちを切り替えるように目を見開く。
「さて、ラウンド2といきましょうか」
スマホに指を走らせ、ゲーム画面へと移す。
幸いなことにゲームは一時停止されており、タップすれば再生されるようだ。
放たれた弓矢のような速さで、画面に指を叩きつける。
「……ん?あれ?動かない……」
しかし画面は停止されたままで、一向に動き出す気配がない。
「おかしいな……仕方ない。もう一度立ち上げて」
と一度アプリを閉じようとするも、全く反応せず、どうやらスマホの電源を切ることもできないようだった。
「はぁ?故障?嘘でしょ……こんないい所で……」
絶望に打ちひしがれた私はスマホを机の上に置き、そのままベッドにダイブした。
「もう寝よ。どうせ明日は休日だし……はぁ……」
ゲームに熱中していて疲れていたのか、目を閉じると直ぐに強烈な睡魔が襲ってくる。
ピコン。
……ん?何か音がしたかしら……?
いや、もういいや。寝よ。
そのまま私の意識は深い闇の中に消えていった。
永山咲27歳。
乙女ゲームが大好きな独身女である。
勤める会社は中堅よりも少し下で、平凡ながらも穏やかな勤務環境で日中は過ごしている。
家に帰ると、専ら乙女ゲーム。
現実世界にはない愛とハッピーエンドをくれるゲームの世界は、まるで砂漠のオアシスのようで、この時だけは彼氏がいないことを忘れられた。
思えば高校生……いや、中三から乙女ゲームをしている気がするが、私の気のせいだろう。
神聖なるグランド王国には現実の記憶など持ち込めないのだ。
「ふふぅ……ふふふ」
奇妙な笑い声を上げても一人暮らしだから平気。
本当に彼氏がいなくてよかった。
「もう少し……あと少し……」
私の想定では、ゲームのストーリークリアまであと僅か。
最後はヒロインが悪役令嬢とバトルする場面のようだ。
緊張からか思わず汗が額に浮かぶ。
プルルルル……プルル!
「は?」
突然スマホの画面が切り替わり、母の名前が表示される。
何とも間が悪い。
プルル!プルル!
「くそがぁ」
無視したらしたで再度かかってくるような気がしたので、私は仕方なく電話に出る。
「ああ、お母さん。うん……大丈夫。え?無理無理、仕事で忙しいから帰れないって……うん。うん……はい、じゃあね」
電話を切ると、私はほっと息をはいた。
気持ちを切り替えるように目を見開く。
「さて、ラウンド2といきましょうか」
スマホに指を走らせ、ゲーム画面へと移す。
幸いなことにゲームは一時停止されており、タップすれば再生されるようだ。
放たれた弓矢のような速さで、画面に指を叩きつける。
「……ん?あれ?動かない……」
しかし画面は停止されたままで、一向に動き出す気配がない。
「おかしいな……仕方ない。もう一度立ち上げて」
と一度アプリを閉じようとするも、全く反応せず、どうやらスマホの電源を切ることもできないようだった。
「はぁ?故障?嘘でしょ……こんないい所で……」
絶望に打ちひしがれた私はスマホを机の上に置き、そのままベッドにダイブした。
「もう寝よ。どうせ明日は休日だし……はぁ……」
ゲームに熱中していて疲れていたのか、目を閉じると直ぐに強烈な睡魔が襲ってくる。
ピコン。
……ん?何か音がしたかしら……?
いや、もういいや。寝よ。
そのまま私の意識は深い闇の中に消えていった。
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