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女帝との対面

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「ぞっ……こん……なの?」

「むむっ……そそそ……そうなんだよっ!き、君はねえっ!自分の事をちょっと自覚した方がいいと思うよっ?そんなキラキラした目で見詰められたらどんな男だってーー」

「他の人の事は知らないよ……私が聞いてるのは……貴方は、私にぞっこんなのかって事よ」

「ーー!だっ、だからそう言ってる!」




 しのは飛び出しそうに弾む胸を落ち着かせようと息を吐いてみたが、一向に収まる気配がなかった。
 
 初めてキスして、初めて身体を重ね合わせて、そして初めての好きという気持ちーー

 こんな一辺に初めてがやって来るなど、予想もしていなかったのに。

 君が好きだ、君にぞっこんなんだーーこんな風に誰にも言われた事なんかない。
 
 口にするとなんと滑稽で恥ずかしい言葉なのだろうーーぞっこんだ、君にぞっこんなんだーーと、彼が私に?今日会ったばかりだというのに、それだけ夢中だと言っている。
  
 俯いた堺は頬をピクピクさせ、落ち着きなく目玉をキョロキョロさせるが、しのの瞳とぶつかると慌てて瞼を閉じ、唇をギュッと噛み締める。






「もうっ……また目を逸らすのっ?そんなんじゃ本気に聞こえない!」


  
 しのは堺の顔を両手で挟み、無理矢理こちらを向かせた。



「ーーっ」

「私の方を見て……ちゃんと言って……」




 堺は恐る恐る、といった風に顔をあげるが、しのの真剣な瞳と濡れた花弁の様な唇が目に入ると、益々真っ赤になってしまい、何かウゴウゴ呟きながらそっぽを向く。

 頬に添えられたしのの指に力が込められた。 



「は、恥ずかしいのは私だって同じよっ……そ、それに、さっきあんな事をした癖にーー今更そんなーー」




 (ほらまた……こういう台詞って男性の方が言うものじゃないの?)



 パジャマの下の乳房の谷間にうっすらと汗ばむほどに心臓が烈しく鳴るのは、恋情のせいなのか、煮え切らない彼のせいなのか、区別がつかないーーと焦れてきた時、堺はとうとう覚悟を決めたのか顔をあげ、しのを真正面から見詰めた。








「っ……!」



 今度はしのが照れてしまい、顔を横に背けてしまった。

 何で……どうして……私はオリオンのリーダーのみかしの……物怖じしない、怖いもの知らずで、何でもハッキリ言ってーーそういうキャラで通っているのに……今、この人の顔を見ることが出来ない。恥ずかしくて、不安で、ドキドキしてーー

 君が好きだ、って言われたのにーーなのに不安で怖いなんて、どうして?

 こんなの知らない、分からないーー



 身体じゅうの熱が、血が、顔に集まっているような感覚だった。少しでも動いたら、どうにかなってしまうんじゃないだろうか?

 

「しのーーちゃん、いや……しの」

「……っ……は、はいっ」



 彼が何か重大な事を告げようとしている。察したしのは反射的に返事をし、その場に正座した。




 
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