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乱暴でもいいから、奪って

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「もう……っ」


 
 しのは焦れたように小さく呟くと、彼の耳を更に引っ張って唇を奪う。

 堺は耳が痛くて涙が出そうだったが、それよりも痛いのは限界まで張り詰めた自分自身だった。ここまで興奮し、硬く大きく猛った事など未だかつてない――と恐ろしくなる程だ。

 しののキスはぎこちないが、堺の恋情を煽り欲をたぎらせるのには効果がありすぎた。

 堺はもう今度こそ踏みとどまる事が出来ない崖っぷちまで追い詰められていた。

 しのの唇を舌で割って侵入して欲のままに咥内をまさぐり、首筋を撫でていた指は今や彼女の乳房を揉みしだいていた。



「ん、んん……ん!」



 長く口付けていた唇を離し、甘く喘ぐしのに堺は苦しげに言う。



「しの……っ……君は……悪い子だ……でも……僕の方がもっと悪い男かも知れないんだよ……っ……それでも……いいの?」






 しのはうっとりとした、と表現すれば良いのだろうか。半開きの瞳に頬は薔薇色、唇の端が絶妙な角度で上がった美しい笑顔を堺に向ける。

 堺の胸の真ん中に人差し指でつつ、と触れると、何とも言えない可愛らしい声で言った。



「悪い男って……どんな?」

「――だ……だから……つまり……」



 意を決してしのに切り出したのに質問で返され、堺は詰まった。

 

――あれ……しのちゃんって未成年……だよね?……つまり、少女じゃないか!……僕って三十を過ぎた大人――の筈なのに……少女にいいように弄ばれてる感があるのは気のせいなのかっ?……てか……僕って本当に三十代の大人の男なのかっ?そりゃ僕は良くコロコロ転ぶけど、自分の年齢を忘れる程には呆けてないぞ!……た……多分……いや……まさか!しのちゃんが年齢を詐称してるとか?……芸能界にはよくある話だっていうし……だ……だって……少女なのに男を掌で転がす魔性……そそそれに……こんなエッチな身体……っ!そうだ……きっとしのちゃんは年齢を誤魔化して――



 頭の中で忙しくそんな事を考えていた堺は、しのにビンタされた。

 


「いっ――!?」

「本当に……堺さんって焦れったい上に……失礼――!」

「ひ――っ!ゴメンねゴメンねゴメンねゴメンね――っ」




 しのの怒りの声にビビり、堺は瞼をギュウと瞑って祈るポーズをする。







「……掌でこ……転がすだとかっ……私……そんなに慣れた女じゃないです……っ!大体が……堺さんのせいで――!」



 しのは怒りを通り越して悲しくなって涙が溢れて来た。

 男性にときめいた事なんて一度も無かった。中学時代、思春期真っ只中のしのは男子生徒からも苛められて、異性への憧れもへったくれもなかったのだ。
  
 オリオンでデビューしてからは男性ファン――ファンと呼んでも良いのだろうか?――握手会のイベントなどではセクハラ紛いの言葉を投げつけられ、悪意がこもった手紙を送りつけられたり、ライヴでもからかいのヤジを飛ばされたり――

 オリオン21のメンバーは恋愛禁止という事になっているが、しのはそもそも恋愛など興味が無かった。男性に対して幻想を抱くという事が皆無だったのだから。

 

――なのに……今日……この人に会った瞬間から私は――




 しのは、目の前で困ってオロオロする堺をまた殴りたくなる気持ちを抑え、溢れた涙を手の甲で拭った。


 

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