朝起きるとミミックになっていた ~捕食するためには戦略が必要なんです~

めしめし

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第4章 7階層攻略編

第115話 戦慄!魔人の恐怖

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魔人は悪魔族の中でも最上位に数えられる種族だ。
人族と同じような姿をしている者も多く、他の魔族に比べ小柄で外見上弱々しく見える。
しかし体内に含まれる魔力量は、全種族中トップクラス。
他の種族の追随を一切許さない。

もちろん魔力だけではない。
知能も驚くほど高く、闘いの場でも相手を貶めるための様々な策を用いる。
単純な力もサイクロプスを遥かに凌駕し、防御力はドラゴン並なのだ。
本来は7階層にいる相手ではない。
この場にいること自体がありえないのだ。

僕たちが入り口に到着すると、魔神はすでに目と鼻の距離にいた。
見た目は15歳くらいの少年のようだ。
全身黒い鎧を覆っており、兜は無く長髪を後ろで結んでいる。
ダークグレーの肌の中で光るグリーンの角膜。
角膜を囲む赤い強膜がその不気味さを高めていた。
手にしているのは体には似つかわしくない位の大きな大剣。
その攻撃力の高さが伺える。

しかし、最も驚異的なのは彼を取り巻く黒いオーラだ。
体内に秘められた魔力量を隠そうともせず、体内から漏れ出している。

魔人はまるで散歩でもするかのごとく、真っすぐ、ゆっくりと最西端の部屋に向かって歩いていた。

「行けぇ、お前ら!」
キングの号令で、30匹ものリザードマンが魔人に襲いかかった。
ただ漫然と襲いかかるわけではない。
前衛10名が盾を構えたまま突撃し、ヤリ隊が続いた。
後衛の弓隊と魔法隊が後方から遠距離攻撃を時間差で行い、その後方で部隊長が指示を送っている。

斬!

音と共にリザードマン30匹が、全て真っ二つに切断された。
魔人は特別何かをしたわけでもない。
ただ、剣を横に振っただけ。
たったそれだけの攻撃で、30匹のリザードマンは絶命したのだ。
一体どうやって?

魔人の歩みは止まらない。

「奴は1人だ。囲んでしまえ!」
キングの号令とともに、魔人の周りをリザードマンの集団が囲む。
逃げ場のないようにぐるりと一定の距離を保ちながら2層で囲み、一列目は全員盾を構えた。
防御重視の囲みであるが、後列が配置されていることによって中の敵に攻撃を仕掛けられる。
敵を逃がさずに攻撃をする堅実な囲み方だ。

しかし魔人はまるで障害物がないかのように、一切の歩みを止めることはなかった。

そして一振り。

魔人はその場の空を切るとと同時に、構えた盾ごと1層目・2層目の兵士全てを切り裂いたのだ。
ゴトンと音を立て、リザードマンの胴体から上半身が地面に落下する。
破壊力のある攻撃には到底見えない。
ただその場で剣を振っただけ。
たったそれだけの行動で、次々とリザードマンの数を減らしていったのだ。

「う、打てぃ、打てぇ!」
キングの号令とともに何十、何百もの矢や槍などが一斉に魔人に降り注いだ。

全く避けようともせず、前進を続ける魔人。
矢が刺さり、槍が鎧を貫こうとも同じペースで歩き続けた。
飛び道具の一斉放射が止まった瞬間に、リザードマンの精兵たちが突撃する。
そのすべてが急所狙い、緩急をつけながら魔人に斬りつけたのだ。
それに合わせて剣を振るう魔人。
しかし、リザードマンたちの攻撃の方が遥かに速かった。

斬!

それでも先に地面に転がったのはリザードマンたちの頭。
先に攻撃した精兵たちの攻撃は、全く届いてもいなかったのだ。

さすがのキングも指示を忘れ、魔人に見入っている。
一体何がどうなっているのかが分からないようだ。

歩みを止めない魔人。

さすがにこれ以上接近されたら、僕たちにとってもまずい。
怯えるキングたちを置いて、僕らが先に介入した。

うさぴょんが【岩石】のスキルを使用するまでの間、僕とタケルは【重力操作】を魔人に向けて発動した。

重力の壁が上から魔人を押さえつける。
上からの強い圧力を受けて、魔人の足元の床が崩れ始める。
若干スローになったものの、魔人の歩みは止まらない。

ナースは、僕たちに【スキル強化】を使用し、僕たちのスキル効果を倍増させたのだ。
より強烈な重力操作が魔人の体を襲う。
魔人の歩みは止まり、その場で行動を停止した。

(いっけぇ!)
十分な溜めが終わったうさぴょんの【岩石】スキルが発動。
動きを止めた魔人にありったけの岩石が襲いかかった。
全弾直撃!
辺り一面に砂煙が舞う。
さらに僕らはありったけの飛び道具を、煙の中心に向けて打ち込んだのだ。

煙が腫れて人影が現れる。
さすがにダメージを受けたのか、人影はふらふらと体を揺らしていた。
これなら戦える。僕らの攻撃は魔人にも通用するのだ。
僕らは一連の攻撃に手応えを感じていた。

しかし煙が腫れて現れたのは、瀕死状態となったリザードマン首領キングの姿だった。
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