朝起きるとミミックになっていた ~捕食するためには戦略が必要なんです~

めしめし

文字の大きさ
上 下
90 / 120
第4章 7階層攻略編

第90話 新たなミミック

しおりを挟む
最南東エリアに近づくにつれ、オークたちが明らかに増えてきた。
奴らは僕を見ると襲いかかり、僕も奴らを見かけると全て平らげてきた。
オークだけではない。
オークジェネラルも度々現れ、集団を率いて戦いを挑んできた。
おかげて僕は飢えることはなくなった。
彼らの強さは僕の空腹感を十分に満たしてくれたのだ。

最南東端の部屋は、最北西端の部屋と同じ造りのようだ。
いくつも部屋を併せた広さを持ち、出入り口が正面の一か所しかない
部屋の前にはオークジェネラルが数匹門番として立っている。
飢えを凌ぐという目的は達成できたが、この南東端に運び込まれたというレアアイテムも気になる。

ここからでは確認できないが、おそらく奥の部屋には武装されたオークやオークジェネラルが何十匹、何百匹もいるだろう。
おそらく奴らをまとめるオークロード、もしくはオークキングもいるに違いない。

すでに空腹感は満たされている。
わざわざリスクを侵し、オークどもの全てを相手にする必要も無いだろう。
素早く潜入し、レアアイテムやパンドラボックスに関する情報を奪って気付かれないように退散する。
今回は、隠密行動に徹しようと考えた。

幸いオークジェネラルたちは、僕には気付いていないようだ。
僕は一旦最南東端の部屋から離れ、戦略を練ることにした。

一番安全な方法は、宝箱として最南東端の部屋に運び込まれることだろう。
かつてクロコが僕を宝物庫に連れて行ったように、オークたちに僕を運び込ませれば良いのだ。
幸い僕はレアアイテム【獣神の宝玉】を所持している。
オークの勢力圏で宝箱の振りさえしていれば、案外楽に運ばれるはずだ。

僕は最南東端の部屋から少し離れた部屋に移動した。
対象の部屋は他の部屋と造り自体は同じで、財宝や宝箱が至る所に転がっている。
ミミックらしき宝箱も何個もある。

僕はこの場所で待機することを決め、金貨が積み重ねられた出来た山の裏に箱を落ち着かせた。
オークに発見されるまでの間、僕はこの場所で接触を待ち続けることにした。

待ち続けること1時間。
オークが通る気配はない。
まだ、待ち始めたばかりだ。
もう少しすればオークは現れるだろう。

さらに2時間が経過。
やはりオークは現れない。
場所を誤ったのだろうか?だが、ここはオークの勢力圏内だ。
全く現れないということは無いだろう。
もう少し、もう少し待ってみよう。きっとオークが現れるはずだ。

さらに3時間が経過。
オークどころか、他のモンスターたちも現れる様子もない。
先ほどまで満たされていたお腹が少しずつ食べ物を没し始めた。
そろそろ何かを食べないとまた飢餓状態に陥ってしまう。
なぜオークたちは来ないのだ?
僕は少しずつ焦りと苛立ちを感じ始めていた。

ガタッ。
物音がして僕は音の方を振り返った。
僕が振り返った方向に宝箱がある。
宝箱が僕の方へ近づいて来てるのだ。

ミミックだ。
僕はミミックに発見されたらしい。
戦うべきか?
僕は様子を伺いながらも、気持ちはすでに戦闘態勢をとっていた。

だけど何かおかしい。
この宝箱はどこか変なのだ。
よく見てみると、宝箱に漢字で文字が書いてある。
この世界で、漢字を使用するのはプレイヤーだけだ。
とすると、このミミックはプレイヤー!?

僕の体は瞬時に緊張する。
ミミックのプレイヤーと言えば思い起こすのがリュウだ。
リュウに騙され続けてきた僕は、ミミックのプレイヤーに特に抵抗がある。
しかし宝箱に書かれた漢字を読むと、僕の疑いや緊張感は全て消え去ってしまった。

「夜露死苦」

こいつはただの馬鹿だ。
そう言えば、宝箱の色も真紫色。
真紫色の宝箱に白字で大きく「夜露死苦」と書かれているのだ。

まさに昔のヤンキーそのもの。
一体こいつはどんな馬鹿なんだろう?
疑うということより、馬鹿の中身が気になった。

そんな僕の思いをよそに馬鹿は僕の前で立ち止まった。

(あんた、今噂の兄貴なんだろ?)

紫色の口が開いて、馬鹿は僕に話しかけてきた。
噂?僕が?
何だ、何を言ってるんだ?

(今7階層は兄貴の噂で持ちきりだぜ。一匹で軍隊並みの力を持つミミックが現れたってな。)

一体、どこからそんな噂が?
この世界の情報網はよく分からない。

(兄貴もプレイヤーなんだろ?実は俺っちもこう見えてプレイヤーなんだぜ。)

この馬鹿をプレイヤーじゃないと言えるやつがいたら見てみたい。
そもそもこの馬鹿はなんで僕を兄貴と呼んでるんだ?

(実は俺っち。兄貴の強さに惚れ込んでさ、弟子にして欲しいんだよ)

は?何を言ってるんだ。この馬鹿。

(兄貴の強さを「ミミック連絡網」で聞いてさ、俺の兄貴になれる男は兄貴しかいないと思ったんだ。)

何だその「ミミック連絡網」ってのは?

(えっ?兄貴「ミミック連絡網」知らねえの?ステータス画面の端を見てみろよ。
小さく「ミミック連絡網」ってあるだろ?)

ステータス画面にそんなものは無いはず。
僕はステータス画面を開き、「ミミック連絡網」を探す。
あっ、あった。

どうやらミミック限定の情報掲示板のようだ。
チェックすると、ミミックになったプレイヤーたちがめいめいに投稿しているようだ。
リュウも頻繁に投稿している。なんか意外。

(最近は兄貴のことがよく投稿されてるんだぜ。兄貴の活躍を聞くたびに俺っちは弟子入りしたいって思ってたんだ。
そういうわけで、なっ、いいだろ?
弟子にしてくれよ。)

リュウのこともある。
この馬鹿もどこまでが本心かはわからない。
面倒ごとには関わりたくない。
僕は一旦話を変えることにした。

(そんなことより、バ、君はここで何をしてるの?
僕はここでオークを待ってるんだけど、全然現れないんだ。)

(は?擬態も使わず、ここでボーってしてたのはオークを待っていたからってか。
そりゃ駄目だよ兄貴。それじゃいつまで経ってもオークは現れねぇよ。)

えっ、どういうこと?
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

宇宙人へのレポート

廣瀬純一
SF
宇宙人に体を入れ替えられた大学生の男女の話

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【改訂版】 戦艦ミカサを奪還せよ! 【『軍神マルスの娘と呼ばれた女』 2】 - ネイビーの裏切り者 -

take
SF
ノベルアッププラスへの投稿に併せて改訂版に改編中です。 どうぞよろしくお付き合いください!  数百年後の未来。人類は天変地異により滅亡寸前にまで追い込まれ、それまでに彼らが営々と築いてきたものは全て失われた。  わずかに生き残った人々は力を合わせ必死に生き延び、種を繋ぎ、殖やし、いくつかの部族に別れ、栄えていった。その中の一つがやがて巨大な帝国となり、その周囲の、まつろわぬ(服従しない)いくつかの未開な部族や頑なな国との間で争いを繰り返していた。 就役したばかりの帝国の最新鋭戦艦「ミカサ」に関する不穏な情報を得た皇帝直属の特務機関を統べるウリル少将は、一人のエージェントを潜入させる。 その名は、ヤヨイ。 果たして彼女は「ミカサ」の強奪を防ぐことが出来るのか。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...