朝起きるとミミックになっていた ~捕食するためには戦略が必要なんです~

めしめし

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第4章 7階層攻略編

第80話 ギリギリの攻防戦

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このままだと食べられる!
逃げようにもリュウが逃がしてくれる訳がない。
数は減ったとはいえ、獣人たちにも囲まれている。

でもただ食べられるのを待っているのも嫌だ。
出来る限り抵抗してやる。
幸い恒常スキルのおかげで、目は見える、音も聞こえる、動くことだってできる。
おそらくメタルボックスの標準装備であるターボ機能も使えるだろう。
何千万分の一の確率かもしれないが、諦めなければ逃げることができるかもしれない。

リュウが僕に近づく音が聞こえる。
ミミックは基本的には地面を擦って進む。
重量物が引きずられるような音がすると、ミミックが近くにいると認識することができるのだ。

(せっかく仲間になった僕を本当に食べるの?
なんだかんだあったけど、ここまで楽しかった。
僕はリュウに出会えて本当に良かったと思っているんだ。)

僕はリュウの情に訴えることにした。
ちょっとでも隙を見せてくれれば、次の展開が容易になる。
無駄とは分かりつつも、最後まであがいてやる。

(確かに楽しかったなぁ。
嬢ちゃんが来た時の慌てた光もおもろかったわ。
ハルクも嬢ちゃんを連れて行くって言った時、明らかにすねてたよな。
それをなだめるクロコもええ仕事してたわ。)

おっ、リュウが食いついた。
もっと興味を惹かせてやる。

(そうそう、リュウもリリアにモーションをかけてたよね。
リュウってああいう子がタイプ?)

(そんなのあるかい。俺は嬢ちゃんがどこまで知ってて、何をしようとしてたのかを確かめようとしただけや。
光をここに連れてこさせるために、嬢ちゃんも利用してたんや。
光、お前を食うために。)

リュウは僕と目と鼻の距離まで近づいていた。
話には乗ってくれるけど、僕を食べるという目的はブレない。

(これで終いや。じゃあな光。)

リュウは口を大きく開き、僕を食べるために飛びついてきた。

もうだめだ。何も出来ない。

咄嗟に目を閉じた僕に、リュウは大きな口で噛みついた。

ガキン!

…。
……。
………。

あれ?まだ生きてる。
目を開けた僕だったが、目の前は真っ暗な空間に覆われていた。
僕はもう死んだのか?ここはどこだ。

次の瞬間視界がパーッと明るくなり、周りの景色が鮮明になる。
見たことのある景色。
いや、ここはさっきまでいた景色だ。
僕はどこへも行ってはいない。
同じ場所にいるのだ。
じゃあ、さっきまでの暗闇は何?

がキーン!
鈍い金属音と振動と共に視界が急に暗くなる。
そうか!ここはリュウの口の中だ。
リュウが僕に噛みついているのだ。

リュウが僕を食べきれないでいる。
僕の箱、メタルボックスはどうやらリュウが食べるには硬すぎるようなのだ。
何度か噛みついてみるものの、僕の箱はびくともしない。

もしかするとリュウの【食べる】系のスキルレベルは、あまり高くはないのかもしれない。
ミミックにとって食べられないということは、致命的な弱点なのだ。

初めて見せたリュウの隙。
苛立ちを隠せないリュウは、一旦離れて助走距離をとり、口を更に大きく開けて飛びついてきた。

その隙を逃す僕ではない。
僕はリュウの開いた上蓋の内側を狙って、ターボ全開で思い切り体当たりを行った。

不意をつかれたリュウ。
僕の体当たりをかわすことが出来ず、まともに上蓋に体当たりを食らってしまった。

ギシッ。バキッ。
一番弱い所に、メタルボックスの体当たりを受けたリュウの上蓋。
なんと蝶番の一つが壊れ、リュウの上蓋は片方のみでぶら下がっているだけとなった。

蓋がぶら下がっているだけの今の状態ならば、僕のことはもう食べられないだろう。
蓋がしっかり機能していないと、どんな相手でも捕食することなんてできないのだ。
これで一矢報いた!後は上手く逃げ出すだけ。

ただ、やはりそんなに上手くはいかなかった。

ドンッ
僕の側面に爆発音が生じ、僕は吹き飛ばされ地面を転がった。
リュウが僕を目がけて、魔眼スキルの【爆発】を使用したのだ。
僕は前方に倒れたまま身動きが取れない。
口が開かないと僕は舌を使って起き上ることも出来ない。
今の僕は自分の力ではどうすることもできない、ただの箱なのだ。

(光、お前ぇぇ!)

リュウの怒りが爆発している。
それもそのはず、リュウが計画していた作戦を僕がぶち壊したのだ。

ドン、ドン、ドドン!

リュウは連続で僕に魔眼スキル【爆発】を連打する。
メタルボックスには火炎や爆破耐性があるものの、連続で受けると確実にダメージが蓄積していく。

怒っていてもリュウは冷静だ。
箱が開いてしまうかもしれない蓋への攻撃は、一切行ってこないのだ。

僕はリュウの攻撃に対してどうすることもできない。
起き上ることすら出来ない僕に、リュウの攻撃を防ぐ手段はない。

僕はダンジョンに来たばかりの頃のことを思い出した。
クロウラーに同じように前方に倒された時、僕はどうすることも出来ず、ただ敵の攻撃を受けていた。
あの時は敵の攻撃に乗じて起き上ることに成功したが、彼がそれをさせてくれるとは思わない。

(もうお前を食べることは諦めたわ。)

そう言うと、リュウは箱の中から一本の剣を取り出した。
綺麗な装飾が施された高価そうな剣だ。
柄に舌を巻きつけ、剣先を僕に向けたリュウは大きく剣を振りかぶった。

メタルボックスの強度は前方部分に比べ、後方部分はやや強度が落ちる。
リュウは振りかぶった剣を、僕の背中に深々と突き刺した。
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