78 / 120
第4章 7階層攻略編
第78話 たとえ邪魔をされても
しおりを挟む僕を売ったり、闘いの邪魔をしたりと僕に不利な状況を作ろうとするリュウ。
リュウの狙いは、僕の戦い方やスキルを見ることではない。
僕を消耗させることが目的なのだ。
しかも出来るだけ自分の力を使わず、相手にそれを強いる。
この7階層に来てからも、思い当たる節がところどころあった。
獣神の宝玉を異世界収納に保管させ、そのレアスキルと補正効果を封じたのはその一貫だろう。
そして今は有利に戦っていた僕に、攻撃をしかけてきたのだ。
攻撃といっても直接攻撃をするのではなく、相手が有利に働くように間接的な攻撃がほとんどだ。
重力操作で動きを封じたかと思えば、敵の攻撃を避けた僕目がけて、魔眼で僕を突き飛ばす。
バランスを崩した僕に、獣人たちの攻撃が容赦なく襲いかかった。
今まで楽にかわせていた攻撃が、僕に被弾し始めたのだ。
もちろんリュウがずっと攻撃をしている訳ではない。
しかし、リュウに攻撃をされるかもしれないという警戒が、僕の判断を鈍らせ、動作が一歩遅れるようになってきたのだ。
おまけに族長が遠距離から槍を投げつけてくる。
かわすだけなら訳はないが、威力が桁違いだ。
まともに食らってしまえば、僕とてただで済む訳ではないのだ。
このまま戦闘が長引けば長引くだけ、僕が不利になるだろう。
そのためには魔力やスキルポイントの消費が大きいレアスキルで、短期間で殲滅させてしまわなければならない。
僕は獣人たちに囲まれる前に【逃げるLv6 】を使用。
僕の体は獣人たちの囲みから少し離れたところに瞬時に移動した。
僕を見失った獣人たちだが、リュウは僕の位置が分かっていた。
僕がいる方へ、炎系の魔法をぶっ放した。
これは僕を攻撃するための魔法ではない。
僕の位置を獣人に知らせるものだ。
獣人たちが炎の行く先を見ると、その場所には僕がいる。
獣人たちは全員、僕がいるエリアに向かって走り出した。
もちろん僕は逃げるためだけに、スキルをつかったのではない。
大きなスキルを使用するにはある程度の「タメ」が必要となるのだ。
僕はスキルの中から、【落とし穴】と【暴食】、【相互理解】を組み合わせた。
相互理解もまたぶっ壊れスキルの1つで、スキルの効果を広範囲に広げる硬化を持っている。
僕は襲いかかる獣人たちに向けてスキルを発動させた。
ぐぅぅぅっ
スキルと魔力の減りが早い。
レアスキル同士を組み合わせるので、その消費量は計り知れないのだ。
獣人たちの足元に何十・何百もの落とし穴が現れた。
突然足元現れた落とし穴に、落下する獣人たち。
その落とし穴は異空間を抜けて、僕の口へと繋がっている。
つまり、落とし穴に落ちた者はすべて僕に食べられるのだ。
一回の攻撃で戦力の1/3を失った獣人たち。
その殲滅力に、やつらも恐怖を感じているらしい。
戦意を失いつつある奴らに、族長の檄が飛ぶ。
雄たけびをあげながら、再度やつらは闘争心を取り戻したようだ。
結局全滅させないとこの闘いは終らないのか。
僕は次なる大型スキルを準備し始めた。
魔眼スキルの1つである【爆発】は現在の僕のレベルだと殺傷能力は低い。
あくまで攻撃のつなぎにするためのスキルだ。
しかし、その爆発エネルギーを【物理無視】で爆発させずに抑え込んだらどうなるだろうか?
そのエネルギーの上に更なる爆発エネルギーを加え、徐々に凝縮していく。
その際に【相互理解】を使用し、広範囲化した爆破エネルギーを一点に集中させるのだ。
そうすることで、高エネルギーが瞬時に生成できる。
後は、タイミングを見図り上手く爆発させる。
おそらくミサイル並の威力になるだろう。
僕は魔眼スキルと【相互理解】【物理無視】をフル活用し、高濃度の爆発エネルギーを圧縮させる。
僕の目の前に球体状の爆破エネルギーの塊が出来た。
獣人たちが来る前に、これを出来る限り量産させる。
獣人たちが間近に迫ってきた。
僕は完成した一つの爆発玉(たった今命名)を獣人たちに向かって投げつけた。
爆発玉が地面に触れた瞬間、激しい爆風と爆発音が轟き、獣人たちの一個小隊約30人ほどが跡形もなく吹き飛んだのだ。
激しすぎる威力。大理石の床に大きなクレータが生じ、その威力を物語っている。
爆発玉はまだまだ残っている。
僕は獣人たちの集団に向かって、連続で爆発玉を投げつけた。獣人たちの阿鼻叫喚の叫びが、部屋中に響き渡る。
いつの間にか獣人たちの人数はもう30人ほどしか残っていなかった。
ほとんどの獣人たちが僕の攻撃で死に絶えてしまったのだ。
最後の一個を舌に巻きつけて、獣人たちに向かって投げようとした。
しかし、急に爆発玉が重くなり、僕は思わず最後の1個を床に落としてしまったのだ。
リュウの【重力操作】!
気付いた時はすでに遅し。爆発玉は僕のすぐ下で爆発した。
爆心地のど真ん中にいる僕はかわすことが出来なかった。
まともに爆発を受けた僕は、数メートルも先に吹き飛ばされ床を転がった。
流石のメタルボックスも、爆発のダメージには耐えきれなかったようだ。
箱の前面から下部にかけて大きく損傷した。
幸いなことに上蓋は破損せずに残っている。
以前、上蓋が破損した際には攻撃が制限されて苦しめられたのだ。
僕は急いで起き上がって獣人たちへの攻撃を再開しようとした。
しかし、起き上った僕の前にいたのはリュウだった。
安全圏で傍観したり、僕に攻撃を仕掛けていたリュウが今僕の目の前にいるのだ。
こいつは敵だ。
僕を陥れようとしている。
僕は即座に攻撃態勢をとった。
もうリュウには騙されないぞ。
僕は彼を許すことなんてできない。
(おー、光、なんとか生き残ってんな。やっぱ光強いわ。
俺の負けや。降参するわ。)
リュウは舌を上にあげ、蓋を全開にしながら僕に寄ってきた。
なんだこのポーズは、降参のポーズなのか?
僕は呆気にとられたその瞬間、リュウは僕の上蓋を舌でつかみ、そのままバタンと僕の蓋を閉めたのだ。
リュウ、一体何を!?
カチリ。
リュウは僕の鍵穴に何かを突っ込んだ。
(光、今までありがとうな。でもこれでお別れや。)
何を言っているんだ?
あ、開かない!
僕の箱は蓋が閉まったまま開かない。
まるで蓋がロックされたみたいに。
必死で蓋を開けようともがく僕。
しかし、何度頑張っても蓋はびくともしないのだ。
(光、開かへんやろ?これが俺のレアスキル「鍵」や。)
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
【改訂版】 戦艦ミカサを奪還せよ! 【『軍神マルスの娘と呼ばれた女』 2】 - ネイビーの裏切り者 -
take
SF
ノベルアッププラスへの投稿に併せて改訂版に改編中です。
どうぞよろしくお付き合いください!
数百年後の未来。人類は天変地異により滅亡寸前にまで追い込まれ、それまでに彼らが営々と築いてきたものは全て失われた。
わずかに生き残った人々は力を合わせ必死に生き延び、種を繋ぎ、殖やし、いくつかの部族に別れ、栄えていった。その中の一つがやがて巨大な帝国となり、その周囲の、まつろわぬ(服従しない)いくつかの未開な部族や頑なな国との間で争いを繰り返していた。
就役したばかりの帝国の最新鋭戦艦「ミカサ」に関する不穏な情報を得た皇帝直属の特務機関を統べるウリル少将は、一人のエージェントを潜入させる。
その名は、ヤヨイ。
果たして彼女は「ミカサ」の強奪を防ぐことが出来るのか。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる