朝起きるとミミックになっていた ~捕食するためには戦略が必要なんです~

めしめし

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第3章 ダンジョン攻略中編

第58話 戦闘介入

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人族が戦いに加わったことで、ワニ族・悪魔族間の戦いは益々激化した。
ほぼ同時にワニの住処を襲撃したことから人族・魔族の間に何らかの協定が結ばれているのではと思っていたが、どうやら無関係のようだ。

人族は個々の力こそ、2つの種族間では最弱ではあるが、組織力・人員数に関しては両種族を上回る。
人族はリーダーが5人一組ほどの個々の部隊を統率し、戦いながら指示を送っている。
部隊は前衛2人が戦士、中衛に槍もしくは弓を装備した戦士、後衛に魔法系職業の者だ。
主に指示を送っている者は中衛に位置していることが多いようだ。

攻撃手段は前衛2人が攻撃を受けて、中衛・後衛が攻撃するというパターン。
数の有利さを最大限に利用し、多対一の対決に持ち込んでいる。
攻撃対象はワニ族ばかりではない、
悪魔族に対しても攻撃を行い、飛びながら襲ってくる奴らを弓矢や魔法で迎撃している。

全体の部隊を統率しているのは一番後方で指示を飛ばす金色の鎧の男。
40歳前後ぐらいであろうか?
屈強な体格と、鋭い目を持つ歴戦の戦士といった風格を持っている。

金色の鎧の男の指示は、ここから見ていても的確で傷つき倒れた兵士たちの補充の指示を秒単位で送っている。
この男の指示が的確であるためか、現在の3種族の中で最も優勢なのは人族だろう。

ワニ族も負けてはいない。
彼らの強力なしっぽ攻撃は盾の上からでもダメージを与えられるようだ。
この攻撃力の高さで、不利な状況にありながらも耐えきれている。

さらに大ワニの存在も大きい。
金色の戦士のように頻繁に指示を行うタイプでは無いようだが、果敢に戦闘に参加し、多くの戦士や魔族たちを防御の上からでも噛みちぎっている。
自ら率先して行動で示すタイプのリーダーのようだ。

魔族たちもこのままでは終わらないだろう。
現在ここを襲撃しているのは、少数の使い魔のみ。
指示を与えるような者は一匹も存在せず、個々の能力だけで戦っている。
彼らだけで襲撃を決意したとは考えにくい。
おそらく後方に別の部隊が控えている、と考える方が自然だろう。

僕は彼らの戦力を分析しながら、「どうすれば簡単に全滅させられるか、全員を捕食できるか」を考えていた。
今の僕は戦闘のただの傍観者だ。
このまま種族間で潰し合うのを見てから、残った奴らを捕食するのが一番効率的だろう。
しかし、僕は7階層の攻略やダンジョンそのものの攻略を目指している。
この程度の奴らに手こずっている暇などないのだ

しかも百匹以上のモンスターが集まっているこの戦場こそが、最高の狩場。
この機会は一段とパワーアップが出来るチャンスなのだ。

さらに、僕の存在は誰にも気付かれていない。
相手に気付かれず敵を倒す。
暗殺者こそミミックの本分なんだろう。

そのキーとなるのが、超レアスキル【暴食】とレアスキル【相互理解】。
【相互理解】はハルクと連絡を取り合った通信手段の1つ。
会話だけでなく、映像や記憶などを直接相手に送れるのは画期的なスキルだ。

ただ、使用して気づいたが【相互理解】は単なる通信手段ではない。
対象と対象をリンク刺せる働きがあるのだ。

僕の考え通りならば、【相互理解】はかなりのぶっ壊れスキル。
僕とハルクがリンク出来たように、スキル同士も上手く繋げられるはずだ。
もしそれが上手くいくのであれば、【暴食】以上の驚異的なスキルになり得るのだ。

まずは試してみよう。
僕は【暴食】と【落とし穴】を【相互理解】で組み合わせた。
このスキルでくっつけたものは恒久的ではなく、使用するその時だけ有効となるようだ。

僕は人族の1部隊に範囲を指定し、リンクスキル【暴食+落とし穴】を発動した。
かなりのMPとSPが消費される。
単体で使うのとは消費量がまるで違うようだ。

突然音もなく、人族の部隊がいたエリアの床が消失。
部隊の全員がその中に落ちてしまった。
落とされた先は僕の口の中。
落とし穴の先と僕の口がリンクしていたのだ。
僕は躊躇することもなく、一口で全員を平らげた。

周りからは何が起こったのかは分かっていないだろう。
突然部隊ごと消失したのだ。

しかし、自分の戦闘に集中している他の部隊員は気付いてすらいない。
それほど一瞬の出来事だった。

急に消えた部隊員に疑問を感じたのは、黄金鎧の戦士ただ一人だろう。
早速部下に命令して、部隊が消えたエリアを調査のため向かわせたようだ。

おそらく調査員にも分かるはずは無い。
すでに落とし穴も完全に塞がっている。
怪しいところは何一つ無いと思う。ましてや僕が行ったなんて分かるはずがない。

確かに【相互理解】はぶっ壊れスキルだった。
組み合わせ次第で無限の可能性を有するだろう。

僕は再度他の部隊にも【暴食+落とし穴】を使用した。
突然現れた大穴に、なすすべもなく人族の部隊は落下した。
もちろんその先にあるのは、僕の口。
抵抗することもできず、人族の一部隊は僕の中に溶けていった。

ただ、今回はまずかった。
戦っている最中の部隊がそっくりそのまま姿を消したのだ。
状況の異常さに、人族だけでなく悪魔族、ワニ族も気付いたようだ。

戦闘を一時中断し、辺りを見回す他種族たち。
戦闘の継続より、異常さの原因を突き止めることに焦点が移ったらしい。

おそらく僕が行っていることに気付くのには、そう時間がかからないだろう。
ハルクが来る前に、やつらの戦力を削れるだけ削ってやりたい。

最初に僕の方へ向かってきたのは大ワニだ。
ワニたちに他の種族を牽制させ、大ワニ自ら宝箱周囲を見回した。
おそらく何かが潜んでいると思ったのだろう。
一つ一つの宝箱を裏返したり、箱を空けたりと中身をチェックし始めた。

一つの宝箱をチェックし終えたら次の宝箱。
大ワニはその体に似合わない繊細さで、丁寧に宝箱をチェックしていった。
その様子をワニ族だけでなく、多種族も注目していた。

8個の宝箱のうち、すでに6つまでチェックし終わった大ワニ。
レアアイテムが入った宝箱の次は、僕の番だ。
僕は戦闘準備をし始める。

7つ目の宝箱を調べようと宝箱を咥えようとした瞬間、大ワニの左目がポンッという音がして潰れたのだ。
目から大量の血を流す大ワニ。
なんとその宝箱は動き出したのだ。

(もー、兄さんがいらんことをするから!)

僕の頭に関西弁アクセントの声が飛び込んできた。
レアアイテムを収納していた宝箱は、なんとミミックだったのだ。
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