朝起きるとミミックになっていた ~捕食するためには戦略が必要なんです~

めしめし

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第2章 ダンジョン攻略前編

第49話 ハルク

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僕の攻撃をまともに受けたハルクは、その場に膝をついた。
ハルクにも確実にダメージを与えていたのだ。

僕は膝をついたハルクに追い打ちをかける。
舌を硬化させ鞭のようにハルクを連続で打ち付けた。

僕の物理攻撃は、【獣神の宝玉】の補正効果でパワーアップされている。
他の相手だったら、一発で倒せる攻撃を何度もヒットさせているのだ。
さすがのハルクもこれには耐えられないだろう。
一旦ハルクの意識を失わせてから、その後でリッチを倒せば問題はない。

僕はとどめとばかり舌を大きく振り上げ、ハルクに向かって振り下ろした。
しかし、僕の補正効果がついた攻撃もハルクにあっさりと受け止められてしまう。
ハルクは僕の舌をつかみ、何事もなかったかのように無造作に立ち上がった。

ハルクは僕の舌を引っ張りながら僕の体ごと持ち上げ、吊り下げられた僕を頭上高くでぶんぶんと振り回し始めたのだ。

景色が目まぐるしいスピードで移り変わる。
強烈なGと痛みを感じながらも、僕にはどうすることも出来ない。
箱がきしみ、舌が悲鳴をあげていても僕はただただぶん回された。

ハルクは振り回すのを止め、その勢いのまま僕を壁に向かって投げつけた。
もう一度、【方向転換】でカウンターアタックをしてやる。
僕は壁に当たる直前に【方向転換Lv8】を使用し、ハルクに向かってカウンターで体当たりを仕掛けようとした。

しかし、振り回され視界がぼやけた僕は、ハルクに照準を合わせることができない。
【方向転換】が間に合わず、僕は激しい炸裂音を立てながら壁に激突した。
壁の一部が砕け、破壊された石片が地面にパラパラと崩れ落ちる。
壁に勢いよく叩きつけられた僕は、大きく前方にはじかれてしまった。
前のめりに倒れ、気絶しそうな痛みが全身をかけめぐる。
全身が砕けるほどの衝撃。まともに当たった箱の背中部分が大破してしまった。

かろうじて起き上がるも、衝撃で視界が朦朧としている。
ハルクは悲しそうな顔をしながらも、僕に向かってゆっくり歩き始めた。
このままでは確実に倒される。
ここは一旦引き返した方が良いのではないか?

僕はテレポートを使用し、エリア外に避難しようとした。
しかし、テレポートは発動しない。僕は依然この部屋の中にいた。

「あーだめだめ。君は今私の結界の中にいるんだよ。テレポートは使えないかな。」

どうやら簡単には逃がしてくれないらしい。
ますます僕は追い詰められていった。

その間にも接近してくるハルク。すでに目と鼻の先ほどの距離にいた。
間合いに入ったハルクは、再度拳を振り上げた。

単調な攻撃を繰り返すハルク。
僕はハルクの攻撃をかわすと同時に、彼の右腕にワイヤーを巻きつけた。
ハルクの腕をねじ切ろうとしたのだ。

僕は力を込め、ワイヤーを締め付ける。
細い鋼の糸がハルクの太い腕に食い込んでいった。
しかし、ハルクが腕に力を入れたと同時に、ワイヤーはプツンと切れてしまった。

こうなることは予想通り、僕は間髪入れずハルクとリッチそれぞれに【毒針Lv6】を吹きつけた。
ハルクは避けきれず右腕に毒針が刺さる。一方のリッチは僕の毒針をあっさりとかわしたのだ。

「意外と冷静なんだね。まさか私にも攻撃をしかけてくるとは。」
リッチは突然の攻撃にも驚いた様子もない。

毒針が当たったハルクの右腕周辺は紫色に変色し始めた。
ハルクは毒針を抜き、傷口を強く吸い始めた。

恐らく自分で毒抜きをしようとしているのだろう。
しかし、確実に効いている。
僕はわずかな勝機を感じ、今度は右足を狙って連続で毒針を発射した。

かわそうとするも避けきれず、いくつもの毒針がハルクの右足に突き刺さる。
急いで毒針を抜き血抜きをするも、ハルクの右足は大きく腫れ、毒々しい色となっていた。

ようやく巡ってきたチャンス。
僕はハルクに近寄り右足を狙って【呪いLv6】を使用。
ハルクの右足が内部から爆発を起こす。

足を押さえ痛みに苦しむハルク。

僕は再度【毒針Lv6】をハルクの右太ももに狙って発射した。
しかし、当たる直前に透明の壁のようなものが現れて、僕の毒針をはじき返す。

奴だ。

「いい加減にしたまえ。それ以上右足に攻撃を受けると、彼の足が使い物にならなくなるじゃないか。」

リッチはハルクを守るため、僕の攻撃を防いだのだ。

どうやらリッチにとってもハルクは重要な存在らしい。
おそらく7階層攻略のために必要なのだろう。

傍観をしていたリッチが僕の方に向かってくる。
リッチは頭上で手をかざすと、そのエリアの空間にひずみが生じた。
そのひずみからブラックホールのようなうごめく空間が現れ、リッチはその中に片手を突っ込んだ。
リッチが空間の中から手を戻すと、その手には骸骨の頭を形どった杖が握られていた。
恐らく奴が使ったものは異空間収納の一種だろう。
彼は僕に向けて、杖を構えた。

何かの攻撃をしてくる。
僕は、考えるよりも早く回避行動を行った。

リッチの杖が一瞬光ると同時に、僕がいた空間は地面ごとえぐれていた。
先に動いていなければ、おそらくまともに受けていただろう。
判断をミスすれば、一瞬でやられてしまう。

ようやく痛みから回復し、立ち上がったハルク。
ハルクもまた僕の方に向かって歩き始めた。
しかし、足をかばいながら歩くハルク。
毒針の効果は十分なようだ。

リッチの攻撃を避けながら、僕はハルクをある一点へと誘導する。
時折、飛び道具をリッチに返しながら、僕は気付かれないようにそのエリアに向かう。
実はハルクと戦っている間、僕はある計画を実行していたのだ。

ハルクが目的地点に到達した瞬間。ハルクの体が突然消える。
彼は僕が仕掛けた落とし穴に落ちたのだ。

「落とし穴?無意味なことを」
リッチはあざけるような笑みを浮かべたが、僕の作戦はこれで終わりではない。

【結界Lv2】

僕はハルクごと落とし穴全体に結界を張った。。
ハルクは狭い空間の中で身動きがとれなくなったのだ。

「何故私の結界の中で、結界が使えるのだ!!」
事態に気付いたリッチは、僕に杖を向けて念じ始めた。

リッチが攻撃に転じるよりも早く、僕は結界の上からハルクを一口で平らげた。
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