42 / 120
第2章 ダンジョン攻略前編
第41話 見殺し
しおりを挟む
自力で見えない敵の洗脳攻撃を打ち破ったかと思われたシーフ。
しかし、無情にも獣たちに殺されてしまった。
2体の獣に噛みつかれた彼は、大量の血を流しながら息絶えてしまった。
おぼろげながら見えない敵のしようとしていることが見えてきた。
今までの死者の傾向を見ると、①自殺 ②大量の出血 ③種族は問わない。
見えない敵は、何らかの理由でこれらの死体を大量に作っている。
何の目的があるかは知れないが、糞野郎には違いない。
さすがに目の前でシーフが斬殺されるのを見て、抑えきれなくなったハルクが獣に突進していった。
驚いた獣たちだったが、獣ならではの反応の速さですぐに戦闘態勢に切り替えた。
恐らく見えない敵も気付いただろう。
ハルクに【千里眼】を使って何らかのアクションを起こすはず。
僕はその魔力が流れるタイミングを待って、こちらも【千里眼】で相手の正体を探ってやろう。
そのチャンスは一瞬だった。
ハルクが獣の首をつかんで床に叩きつけた瞬間、魔力の流れの乱れを感じた。
僕は、その流れの元の方向を狙って【千里眼】を使用。
するとローブをまとったガイコツの姿が見えた。
おそらく奴がハルクの言っていたガイコツだろう。
周りの壁が現在の壁の造りに酷似しているので、おそらく同フロア内にいるのだろう。
やや壁の間の間隔が広いので、どこかの部屋にいるのかもしれない。
【鑑定Lv7】を使ってやろうと思ったが、気付かれて僕の【千里眼】を遮断されてしまった。
具体的な場所まではつかめなかったが、ガイコツの奴はこのフロアにいるのだ。
早くハルクに知らせてやろう。
僕は最後の一匹の獣の首をつかんでいるハルクの元に寄った。
しかし、ハルクは僕と目を合わそうともせず、生き残っていたもう二人の冒険者の方を指さした。
生き残っていたはずの二人の戦士は、剣を胸に槍を腹部に刺して息絶えていた。
ハルクは無言のまま進行方向に向かって歩き始めた。
僕は無言でその後を追いかけるしかなかった。
僕とハルクはお互いに言葉を交わさないまま、黙々とダンジョンの探索を行った。
今までのような連携はない。
敵を見つけたとしても、それぞれで対処していく。
何度か声をかけようと思ったが、何て話しかけていいのか分からない。
こういう時の対応は現実世界でも苦手だった。
・・・
僕が15歳になった時、友達の両親が離婚をした。
彼は両親のことが大好きだったので、最後まで離婚をすることに反対していた。
しかし、子供がいくら抵抗しても現実は変わるわけはない。
努力もむなしく、彼の両親は離婚をしたのだ。
彼を巡っての親権問題はさらにひどかったようだ。
どちらが彼を引き取るかが難航したのだ。
父親も母親も彼を引き取るつもりは無かった。
相手に親権をなすりつけようとしていたのだ。
愛していたはずの両親から育てることを拒否された友達。
明るく人気者だった友達の姿は、もうどこにも無かった。
僕は彼を慰めようと思ったが、なんと声をかけていいのか分からなかった。
彼の境遇を考えるとかける言葉が見つからなかったのだ。
いつしか僕は彼を避けるようになっていた。
彼と一緒にいる時間が、僕には苦痛でしかなかった。
彼も僕の態度に気付き、僕に近寄ってくることはなくなった。
僕たちは会話をすることはなく中学校を卒業し、二度と会うことは無かった。
・・・
僕とハルクは友達ではない。
会ってそれほど時間も経っていない。
気まずければ関係を切ればよい。
お互い不仲のまま一緒にいる必要なんてないのだ。
ただ、ハルクと離れるのはどこか引っかかる。
なぜか彼と離れてはいけない気がする。
ダンジョンを攻略するには彼の力が必要となると、僕の勘がそう告げる。
彼は僕よりも強い、力がある。
でも、それだけではない気がするのだ。
僕は先行するハルクを呼び止め、冒険者パーティーを見殺しにしたことを詫びた。
「オデ、オデ…。あんなことあっだら黙っていられねぇんだ。おめぇも考えがあるだども、オデは我慢できんねぇ」
僕は彼にハルクの好きなようにしたらいいと告げ、お互いの戦い方には深く干渉しないように取り決めた。
僕はハルクに千里眼でみたガイコツの印象、ガイコツがいたエリアについて話した。
「オデ、その場所知ってる。こっからズァ―ッと行った所にある部屋だ。オデがおかしくされたどもその部屋だ。」
意外にも僕が見た部屋の印象を話すだけで、彼は場所を特定できたようだ。
もうすでに場所を移動しているのかもしれない。
ただ、このままダンジョンを探してもジリ貧だろう。
千里眼を持つ彼にとって僕とハルクの情報は筒抜けだろう。
遠距離攻撃を受けてしまうリスクもある。
それならこちらから攻撃をしかけよう。
注意深い奴のことだ。すでに移動しているかもしれない。
しかし、恐らくその可能性は低いだろう。
ガイコツは何らかの研究をしているようだ。
頻繁に場所を変更するとその研究が遅れてしまう。
僕が【千里眼】を持っていることは知っているはずなので、たとえ場所を変えても察知されることは目に見えている。
それよりは準備を整えて迎え撃つ方が得策だ。
罠もいくつも用意されているだろう。
アドバンテージはガイコツの方にあるのだ。
それでもここでガイコツを倒しておかねばならない気がする。
奴とは何か因縁めいたものを感じる。
僕はマップで位置を確認し、ガイコツがいるであろう部屋に向けて進み始めた。
しかし、無情にも獣たちに殺されてしまった。
2体の獣に噛みつかれた彼は、大量の血を流しながら息絶えてしまった。
おぼろげながら見えない敵のしようとしていることが見えてきた。
今までの死者の傾向を見ると、①自殺 ②大量の出血 ③種族は問わない。
見えない敵は、何らかの理由でこれらの死体を大量に作っている。
何の目的があるかは知れないが、糞野郎には違いない。
さすがに目の前でシーフが斬殺されるのを見て、抑えきれなくなったハルクが獣に突進していった。
驚いた獣たちだったが、獣ならではの反応の速さですぐに戦闘態勢に切り替えた。
恐らく見えない敵も気付いただろう。
ハルクに【千里眼】を使って何らかのアクションを起こすはず。
僕はその魔力が流れるタイミングを待って、こちらも【千里眼】で相手の正体を探ってやろう。
そのチャンスは一瞬だった。
ハルクが獣の首をつかんで床に叩きつけた瞬間、魔力の流れの乱れを感じた。
僕は、その流れの元の方向を狙って【千里眼】を使用。
するとローブをまとったガイコツの姿が見えた。
おそらく奴がハルクの言っていたガイコツだろう。
周りの壁が現在の壁の造りに酷似しているので、おそらく同フロア内にいるのだろう。
やや壁の間の間隔が広いので、どこかの部屋にいるのかもしれない。
【鑑定Lv7】を使ってやろうと思ったが、気付かれて僕の【千里眼】を遮断されてしまった。
具体的な場所まではつかめなかったが、ガイコツの奴はこのフロアにいるのだ。
早くハルクに知らせてやろう。
僕は最後の一匹の獣の首をつかんでいるハルクの元に寄った。
しかし、ハルクは僕と目を合わそうともせず、生き残っていたもう二人の冒険者の方を指さした。
生き残っていたはずの二人の戦士は、剣を胸に槍を腹部に刺して息絶えていた。
ハルクは無言のまま進行方向に向かって歩き始めた。
僕は無言でその後を追いかけるしかなかった。
僕とハルクはお互いに言葉を交わさないまま、黙々とダンジョンの探索を行った。
今までのような連携はない。
敵を見つけたとしても、それぞれで対処していく。
何度か声をかけようと思ったが、何て話しかけていいのか分からない。
こういう時の対応は現実世界でも苦手だった。
・・・
僕が15歳になった時、友達の両親が離婚をした。
彼は両親のことが大好きだったので、最後まで離婚をすることに反対していた。
しかし、子供がいくら抵抗しても現実は変わるわけはない。
努力もむなしく、彼の両親は離婚をしたのだ。
彼を巡っての親権問題はさらにひどかったようだ。
どちらが彼を引き取るかが難航したのだ。
父親も母親も彼を引き取るつもりは無かった。
相手に親権をなすりつけようとしていたのだ。
愛していたはずの両親から育てることを拒否された友達。
明るく人気者だった友達の姿は、もうどこにも無かった。
僕は彼を慰めようと思ったが、なんと声をかけていいのか分からなかった。
彼の境遇を考えるとかける言葉が見つからなかったのだ。
いつしか僕は彼を避けるようになっていた。
彼と一緒にいる時間が、僕には苦痛でしかなかった。
彼も僕の態度に気付き、僕に近寄ってくることはなくなった。
僕たちは会話をすることはなく中学校を卒業し、二度と会うことは無かった。
・・・
僕とハルクは友達ではない。
会ってそれほど時間も経っていない。
気まずければ関係を切ればよい。
お互い不仲のまま一緒にいる必要なんてないのだ。
ただ、ハルクと離れるのはどこか引っかかる。
なぜか彼と離れてはいけない気がする。
ダンジョンを攻略するには彼の力が必要となると、僕の勘がそう告げる。
彼は僕よりも強い、力がある。
でも、それだけではない気がするのだ。
僕は先行するハルクを呼び止め、冒険者パーティーを見殺しにしたことを詫びた。
「オデ、オデ…。あんなことあっだら黙っていられねぇんだ。おめぇも考えがあるだども、オデは我慢できんねぇ」
僕は彼にハルクの好きなようにしたらいいと告げ、お互いの戦い方には深く干渉しないように取り決めた。
僕はハルクに千里眼でみたガイコツの印象、ガイコツがいたエリアについて話した。
「オデ、その場所知ってる。こっからズァ―ッと行った所にある部屋だ。オデがおかしくされたどもその部屋だ。」
意外にも僕が見た部屋の印象を話すだけで、彼は場所を特定できたようだ。
もうすでに場所を移動しているのかもしれない。
ただ、このままダンジョンを探してもジリ貧だろう。
千里眼を持つ彼にとって僕とハルクの情報は筒抜けだろう。
遠距離攻撃を受けてしまうリスクもある。
それならこちらから攻撃をしかけよう。
注意深い奴のことだ。すでに移動しているかもしれない。
しかし、恐らくその可能性は低いだろう。
ガイコツは何らかの研究をしているようだ。
頻繁に場所を変更するとその研究が遅れてしまう。
僕が【千里眼】を持っていることは知っているはずなので、たとえ場所を変えても察知されることは目に見えている。
それよりは準備を整えて迎え撃つ方が得策だ。
罠もいくつも用意されているだろう。
アドバンテージはガイコツの方にあるのだ。
それでもここでガイコツを倒しておかねばならない気がする。
奴とは何か因縁めいたものを感じる。
僕はマップで位置を確認し、ガイコツがいるであろう部屋に向けて進み始めた。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
【改訂版】 戦艦ミカサを奪還せよ! 【『軍神マルスの娘と呼ばれた女』 2】 - ネイビーの裏切り者 -
take
SF
ノベルアッププラスへの投稿に併せて改訂版に改編中です。
どうぞよろしくお付き合いください!
数百年後の未来。人類は天変地異により滅亡寸前にまで追い込まれ、それまでに彼らが営々と築いてきたものは全て失われた。
わずかに生き残った人々は力を合わせ必死に生き延び、種を繋ぎ、殖やし、いくつかの部族に別れ、栄えていった。その中の一つがやがて巨大な帝国となり、その周囲の、まつろわぬ(服従しない)いくつかの未開な部族や頑なな国との間で争いを繰り返していた。
就役したばかりの帝国の最新鋭戦艦「ミカサ」に関する不穏な情報を得た皇帝直属の特務機関を統べるウリル少将は、一人のエージェントを潜入させる。
その名は、ヤヨイ。
果たして彼女は「ミカサ」の強奪を防ぐことが出来るのか。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる