朝起きるとミミックになっていた ~捕食するためには戦略が必要なんです~

めしめし

文字の大きさ
上 下
26 / 120
第2章 ダンジョン攻略前編

第25話 中途半端なフェミニズム

しおりを挟む
盗賊を全て平らげた僕は、早速取得したスキルやアイテムを確認する。



《獲得スキル》

【奪うLV7】対象の所持している物を強引に奪う。その際にダメージを追加できる。

【罠回避Lv2】仕掛けられた罠の存在に気づいたり、罠にかかっても避けることができる。

【マッピングLv1】探索者が行った場所の地形等をオートでマップに書き込むことが出来る。

《進化したスキル》

 《意思疎通Lv2》→Lv3 



《獲得アイテム》

【タジムの曲刀】名工タジム作の曲刀。

【魔石の指輪】使用すると魔力が回復する。使いすぎると壊れてしまう。

【8000ルクア】この世界の通貨、金額に応じて魅力値が加算される。



今回の戦闘での戦利品は大きい。

新スキルの【奪う】は初めからLv7とレベルも高く効果も大きい。即戦力で使えるレベルだろう。

【マッピング】も限定スキルではないので、宝箱の中身を奪われたとしても使い続けることができそうだ。

宝箱の中に入れるアイテムも充実してきた。

特に魔石の指輪やタジムの曲刀は、冒険者にとっても魅力のあるアイテムだろう。



ただ、人間を食べてしまったことへの罪悪感は強い。

前回は襲われたから仕方なく食べた。

しかし、今回は自分の目的のために食べたのだ。

食べたことには変わらないのだが、この差は非常に大きい。



人間に戻るために人間を食べる。

このゲームの創作者は本当に性格が悪い。

例えゲームの世界、実在しない人物たちと頭では理解していても、簡単に割り切れるものではない。

すべてのことがリアル過ぎる。

食べようとした時の盗賊バカの表情は、しっかりと僕の脳裏に焼き付いて離れない。



しかし、だからといって他に方法があるわけではない。

食べなければ先に進むことが出来ないのだ。

罪悪感だけはしっかりと持っておこう。

今僕が出来ることはこれが全てだった。



改めてアバターポイントを確認してみる。

現在のポイントは14,500P。

僕は次なる狩りのため、アバターリストを開いた。



まずは戦闘で受けた傷の補修のため、補修キットを2,000Pで購入 。

今まで使っていた弓を売却し、ボウガンを購入した。(5000P)



僕は【応急処置Lv1】と【補修キット】を使用し、次なる獲物がくるのを待ち続けた。



10時間ほど待っただろうか?



通路の近くから近くを歩く数名の声と足音が聞こえてきた。

今度は若手の冒険者のようだ。

男性の声に交じって女性の声も聞こえる。



僕は【擬態Lv4】と【意思疎通Lv3】を使用し、耳を傾け息を殺し彼らの動向を探った。

今度の冒険者は慎重なタイプらしい。通路に到達後も壁や床を入念にチェックしながら、ゆっくり小部屋へと向かってきた。



彼らは4人のパーティ。

大きな盾と鎧に身を包んだ戦士風の男。

筋肉隆々で鋭い眼光を持った部動議の男。

十字架を首に下げ、聖職衣を身に着けた細身の男。

中世の魔女のような尖がった帽子と、黒衣が特徴的な魔法使い風の女。

これぞバランスのとれた冒険者というべきパーティーだ。



武闘家は通路にしかけたいくつもの罠に気づき、発動する前に無効化していった。

罠があると知りながらも、宝箱を目指して向かってくる。

よほど腕に自信があるのだろうか、僕の警戒心は更に強くなっていった。



宝箱を目の前にして、武闘家はその場にしゃがみ込んだ。

僕を触りながら、チェックを行う武闘家。

急に立ち上がった武闘家は、右足を天高く大きく振り上げた。



一体何をするつもりか、僕はその右足に注目した。

すると、その右足は加速しながら僕の頭へ振り下ろされたのだ。



ガンッ

鈍い音が鳴り、僕は上蓋に鈍い痛みを感じる。

武闘家は渾身の踵落としを、僕に浴びせてきたのだ。



何故僕がミミックだと判断したのかは分からない。

武闘家の反応を見て他のパーティーメンバーは戦闘態勢に入っている。



僕は大きく口を開け、毒針Lv5をそれぞれの冒険者に向けて発射した。

余裕を持ってかわす武闘家。

盾ではじく戦士。

空間に青白い盾を作成し、毒針をはじく僧侶と魔法使い。

おそらく彼らは、前回戦った盗賊のリーダーと同レベルの強さを持っているだろう。



盾で身を隠しながら突進してくる戦士。

僕は【とらばさみLv4】を彼の足元に設置し、動きを止めようとした。

しかし、とらばさみに引っかかっているにも関わらず、彼の勢いは止められない。

僕に近づきざまに、大きな剣を振り下ろす。



僕が間一髪かわした方向に、武闘家が構えていた。

武闘家の強烈な蹴りを受けて、僕は数メートルほど後方に飛ばされた。

後方に倒れた僕に、真っ赤な炎の塊が飛んでくる。



バンッ!

僕は避けることも出来ず、炎を塊をまともに受けてしまった。

金属製の宝箱に焦げ臭い匂いが漂う。

見事なまでの連携攻撃。

僕は単純に感心していた。



さて、どう戦おう。

確かにすごい連続攻撃ではあるが、僕に大きなダメージを与えるまでには至らない。

それほどまでにスタンダード宝箱の耐久力は半端ないのだ。



彼らは僕に取って丁度いい練習相手。

せっかくだから色々と試してみよう。



今僕が使えるスキルは以下の通り。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



【スキル】

攻撃系

食べるLv8、早食いLv4、舌Lv5、溶解Lv4、体当たりLv6、毒針Lv5、狙い打つLv2、飛びかかるLv3、悪食Lv6、不意打ちLv2、振り回すLv1、格闘Lv3、落とし穴Lv1、投石Lv1、鞭Lv3、斬撃Lv2、呪いLv1、奪うLv7、



耐性

毒耐性Lv6、溶解耐性Lv2、暗闇耐性Lv1



補助

方向転換Lv5、、鑑定Lv5、擬態Lv4 逃げるLv5、異空間収納Lv1、身体強化Lv1、応急処置Lv1、甘い匂いLv4 、罠回避Lv2、マッピングLv1



恒常スキル

視覚Lv5、聴覚Lv5、味覚Lv4、這うLv4、意思疎通Lv3、嗅覚Lv1



限定スキル

とらばさみLv4、弓Lv3(ボウガン)、マッピングLv1、斬撃Lv1(タジムの曲刀)



ミミック固有スキル

魔眼Lv2【魅了】【千里眼】【石化】【吸収】【威圧】【傀儡】【変化】【爆破】【毒】【汚染】【凍結】

重力操作Lv1 おびき寄せるLv1



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





僕は【不意打ちLv2】と【奪うLv7】を使用。

戦士の意識の外から現れた僕の舌が彼の胸に直撃!

意表を突かれた攻撃に、戦士は後方へ弾き飛ばされながら音を立てて倒れた。

それと同時に僕は彼の盾を奪っていた。

もう彼は盾を使えないだろう。

僕は盾を口の中に放り込んだ。



戦士の元に駆け寄る僧侶。

彼の胸に手を当てると、何やら唱え始めた。

青白い光が僧侶の手と戦士の胸を包むと、戦士は何事もなかったように立ち上がった。



おそらく回復魔法のようなものだろう。

ダメージを与えても回復させられるのはやっかいだ。

まず最初に倒さなければならないのは僧侶かもしれない。



僕は僧侶に向かって【弓Lv3(ボウガン)】を3連発。

するとその前に戦士が立ちはだかり、僕の矢を大剣で払おうとした。

しかし、そのうちの2本が彼の腹部へと突き刺さる。

彼はその場に膝をついた。



再度ボウガンを僧侶に狙おうとした僕に、武闘家がさせじと突進。

僕は【重力操作Lv1】で自分の重さを5倍にし、【体当たりLv5】を使用した。

まともにぶつかった武闘家は、まるでトラックと正面衝突したように回転しながら吹き飛ばされた。

僕の体に彼の骨が砕ける感触が伝わる。



重篤性を感じた僧侶は彼の元に駆け寄るも、僕は彼の足に【とらばさみLv5】を使用。

彼は大きな音を立てて前方へ倒れた。



彼らを助けようと突進してくる戦士。

その後ろから魔法使いが、僕めがけていくつも炎の玉を繰り出してきた。



僕は戦士の足に舌を絡め、強く後方へと引っ張った。

バランスを崩され転倒する戦士。

僕は彼の足を舌でつかんで持ち上げ、飛んでくる炎の玉に向けて放り投げた。



ドゥ!ドン

炎の玉の全弾直撃を受けた戦士。

焦げ臭い匂いが小部屋に広がる。

大きなうめき声を上げた彼は、そのまま起き上がることは無かった。



僕はとらばさみを外そうともがいている僧侶に、ゆっくりと近づいた。

僕に杖を向け何かを唱え始めた僧侶の杖を、僕は【奪うLv7】で奪い取り宝箱へと収納した。

怯えながら十字架を握りしめる僧侶を、僕は無慈悲にも【食べるLv8】で平らげてしまった。



さらにすでに虫の息になっていた武闘家に近づき、同じく口の中へ。

残った戦士も同様に一口で平らげた。



次々と仲間たちが食べられる光景に、呆然と立ち尽くす魔法使い。

しかし、僕は彼女を食べるつもりは無かった。

ダンジョンに来て一番初めに出会った女の子の印象が僕には大きかったのだ。

助けようとしてもその思いが伝わらず、彼女は敵として再会した。

僕は葛藤を抱えたまま、結局その女の子を食べてしまったのだ。



甘いかもしれない、また襲われるかもしれない。

僕にはどうしてもこれ以上女の子は食べられる気がしない。



僕は絨毯へと戻り、そのまま箱の蓋を閉め、何事も無かったかのように動きを止めた。



(何でよ?何で私だけ生かすのよ?)



彼女の声が聞こえた気がした。

これは【意思疎通Lv3】の効果なのか?



もちろん僕は言葉を発せられない。

彼女が去るまで僕はずっと動かず、その場所にとどまっていた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

宇宙人へのレポート

廣瀬純一
SF
宇宙人に体を入れ替えられた大学生の男女の話

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【改訂版】 戦艦ミカサを奪還せよ! 【『軍神マルスの娘と呼ばれた女』 2】 - ネイビーの裏切り者 -

take
SF
ノベルアッププラスへの投稿に併せて改訂版に改編中です。 どうぞよろしくお付き合いください!  数百年後の未来。人類は天変地異により滅亡寸前にまで追い込まれ、それまでに彼らが営々と築いてきたものは全て失われた。  わずかに生き残った人々は力を合わせ必死に生き延び、種を繋ぎ、殖やし、いくつかの部族に別れ、栄えていった。その中の一つがやがて巨大な帝国となり、その周囲の、まつろわぬ(服従しない)いくつかの未開な部族や頑なな国との間で争いを繰り返していた。 就役したばかりの帝国の最新鋭戦艦「ミカサ」に関する不穏な情報を得た皇帝直属の特務機関を統べるウリル少将は、一人のエージェントを潜入させる。 その名は、ヤヨイ。 果たして彼女は「ミカサ」の強奪を防ぐことが出来るのか。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...