朝起きるとミミックになっていた ~捕食するためには戦略が必要なんです~

めしめし

文字の大きさ
上 下
23 / 120
第2章 ダンジョン攻略前編

第22話 水中にて

しおりを挟む
マッドクラブに投げられた僕の体は大きな弧を描いて、水面へと吸い込まれていった。

(これってやばくない?)

バッシャーン
大きな水しぶきをあげて、僕の体は池の底へと沈んでいく。
池は思ったほど深くはないようだ。
およそ水底から水面まで3~4メートルくらいだろう。
今は砂が舞い上がっているため視界が悪いが、池の中は意外なほど澄んでいた。
水草が辺り一面に群生し、魚も群れで泳いでいる。
奥の方では大型のタニシのような生物の姿も見えた。
まるでちょっとした水族館だ。
僕はしばし、こののどかな環境を楽しんでいた。

(だめだ、だめだ)
僕はふと我に返った。
僕は今絶体絶命の状況にいる。
マッドクラブに宝箱のまま池の中に放り込まれたのだ。
水圧に阻まれ身動きが取りづらく、口を開けるだけでも一苦労。
幸いにも呼吸はできるようだ。

もちろんマッドクラブは僕を池に投げ捨てただけでは無いだろう。
おそらく僕を探しに来て、ハサミで引きちぎろうとするかもしれない。
ほとんど身動きのとれない僕は、奴らの攻撃をかわすことは出来ないだろう。

一体どうしてこうなった?
僕は奴らの縄張りにうかつに入ってしまったのだ。
チュートリアルも危惧していた縄張り。
僕はまた、慢心していて注意を怠ってしまった。

でも済んだことは仕方がない。
この状況を打破する方法を考えねば。

僕は自身の使えそうなスキルを見るために、ステータス画面を開いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【スキル】
攻撃系
食べるLv8、早食いLv4、舌Lv5、溶解Lv4、体当たりLv6、毒針Lv5、狙い打つLv2、飛びかかるLv3、悪食Lv6、不意打ちLv2、振り回すLv1、格闘Lv3、落とし穴Lv1、投石Lv1、鞭Lv3、斬撃Lv2、呪いLv1

耐性
毒耐性Lv6、溶解耐性Lv2、暗闇耐性Lv1

補助
方向転換Lv5、、鑑定Lv5、擬態Lv4 逃げるLv5、異空間収納Lv1、身体強化Lv1、応急処置Lv1、甘い匂いLv4 

恒常スキル
視覚Lv5、聴覚Lv5、味覚Lv4、這うLv4、意思疎通Lv1、嗅覚Lv1

限定スキル
とらばさみLv4、弓Lv3、マッピングLv1

ミミック固有スキル
魔眼Lv1 重力操作Lv1 おびき寄せるLv1

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


現在考えられる方法は2種類。
①自分で脱出する
②脱出を手伝ってもらう。

①に関しては、水中での移動スキルを持つ生物を食べてそのスキルを得ることだ。
効果のほどは分からないが、相手を呼び込むスキル【おびき寄せるLv1】と【甘い香りLv4 】を使用し、近づいたものを食べる。
移動スキルが獲得できるかどうかは運次第ではあるが、比較的容易に行いうる作戦だろう。

②に関しては、【魔眼Lv1】を使用する。
魔眼の8つのスキルのうちの一つに【チャーム】がある。
このスキルは相手の精神に作用し、一時的に相手を魅了・使役させることができるようだ。
しかし、効果や持続時間についてはよく分かっていない。
ぶっつけ本番の博打的要素の塊だ。

しかし、いずれの作戦を採ろうとマッドクラブに見つかれば終わりだろう。
そのためには出来るだけ素早い行動が求められる。

僕が選んだ作戦は…。

①だ。

効果の分からないスキルをぶっつけ本番で使用するのは、かなり危ない橋を渡る必要がある。

早速僕は【擬態Lv4】で身を隠し、【おびき寄せるLv1】を使用。
僕の体から紫色の光が溢れ、広範囲に広がっていった。

まず反応をしたのが、近くを泳いでいた魚たち。
警戒しながらも僕の周囲に集まってきた。

僕は口を開け、【甘い匂いLv4】を数か所に噴出。
甘い匂いに誘われてか、次々魚たちが僕の口元に近寄ってきたのだ。

バクン。

僕は先頭の3匹の魚たちを口の中に入れた。
瞬時に消化される魚たち。
しかし、残念ながら有効なスキルを獲得することは出来なかった。

何度も同様に繰り返すも移動スキルはおろか、新たなスキルを獲得することも出来なかったのだ。

そこへ僕を捜索しに来たのか、先ほどのマッドクラブが現れた。
一匹のマッドクラブは僕が足を切断したので、この場に来ることは難しかったのかもしれない。

マッドクラブは僕の姿に気づいたらしく、僕の方へ真っすぐ向かってきた。

(どうしよう?)

やつは身動きのとれない僕を、ハサミでしっかりつかみ頭上高く持ち上げた。
マッドクラブははさみ切ろうと、力を込めながら僕の体を締め付ける。
まるで万力で圧縮するかのごとく、ミシミシと音を立てながら宝箱に亀裂が入っていく。

(このままではヤバイ)
僕は舌を伸ばし、僕をつかんでいるマッドクラブのハサミに巻きつけた。
もちろんこれだけでは、マッドクラブの締め付ける力を止めることなんてできない。
僕は巻きつけている下に【溶解Lv4】を使用。

ジュッ
マッドクラブのハサミに香ばしい音が鳴り、マッドクラブのハサミに焦げ目がつく。
しかし、これは諸刃の剣。
僕自身の舌も溶解による大きなダメージを受けていた。

それでも僕を離さないマッドクラブ。
より力を込めて僕を締め続けた。

ミシッミシッ…
僕の体に嫌な音が響く。
もうこれ以上は耐えられない…。

【重力操作Lv1】
僕は自分自身に重力操作のスキルを使用し、箱の重さを5倍と変化させた。

突然箱の重さが増し、片手では持ちきれなくなり地面に落とすマッドクラブ。
僕は再度【重力操作】を使用し、箱の重さを1/10に設定した。

浮力が働き、勢いよく浮かび上がる僕の体。
僕の体はプカプカと水面に漂った。

もちろん、このままでは何の解決もない。
僕は舌をオール代わりにし、岸に向かい勢いよく漕ぎだした。

なんとか向こう岸まで渡り切った僕は、間髪入れずに【逃げるLv5】を使用。
急いで池から離れた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

宇宙人へのレポート

廣瀬純一
SF
宇宙人に体を入れ替えられた大学生の男女の話

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【改訂版】 戦艦ミカサを奪還せよ! 【『軍神マルスの娘と呼ばれた女』 2】 - ネイビーの裏切り者 -

take
SF
ノベルアッププラスへの投稿に併せて改訂版に改編中です。 どうぞよろしくお付き合いください!  数百年後の未来。人類は天変地異により滅亡寸前にまで追い込まれ、それまでに彼らが営々と築いてきたものは全て失われた。  わずかに生き残った人々は力を合わせ必死に生き延び、種を繋ぎ、殖やし、いくつかの部族に別れ、栄えていった。その中の一つがやがて巨大な帝国となり、その周囲の、まつろわぬ(服従しない)いくつかの未開な部族や頑なな国との間で争いを繰り返していた。 就役したばかりの帝国の最新鋭戦艦「ミカサ」に関する不穏な情報を得た皇帝直属の特務機関を統べるウリル少将は、一人のエージェントを潜入させる。 その名は、ヤヨイ。 果たして彼女は「ミカサ」の強奪を防ぐことが出来るのか。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...