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第5章 内戦編

第63話 パンが無ければ〇〇を食べればいいじゃない!

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ザワザワザワ…
私を取り囲んでいる街の人たちがざわめき始める。
街の人たちはどんどん増え始め、すでに何百人もの大集団となっていた。
近くの屋台やお店の人も商売そっちのけで私の方に集まってくる。

あんたたち、ちゃんと仕事はしなさいよ。
一体何よ、何が始まるのよ。
オットー、メリーはどこに行ったの?

「キュー?」
子ぎつねのマカロンは私に抱かれたまま、つぶらな瞳で私を見つめている。

「あんたは、あなた様はメリー様で間違いないですよね?」
先ほどの失礼な男が、群衆を代表して私に問いかける。

「先ほど私が何者かを申し上げました、何度もお伝えする必要がありまして?(そうよ、さっきも言ったじゃない?一体何の確認よ。)」

私の発言で群衆たちの興奮は頂点に達した。

「うぉー!やはりメリー様だ!」
「あの小生意気な口の聞き方はメリー様しか出来ねぇぜ!」
「キャー、あの言い方超むかつくぅぅ!」

群衆たちの爆興奮に、圧倒される私。
あんたたち、そんなに何を興奮しているのよ。日本代表がゴールを決めたわけじゃないのよ。
っていうか、さりげに失礼ぶっこいてない?

ひとしきり勝手に盛り上がった後、群衆たちは全員私の前で跪いた。

「私たちはあなた様をお待ちしておりました。」
男が再び話し始める。

男は筋肉隆々のタンクトップ風の姿。明らかに自分の体を意識している。
歳は40前後だろうか?短髪で目つきが鋭く、肌は日焼けで浅黒い。
タンクトップから独特の汗臭さが匂ってくる。
山の男と言うより、どことなく漁師や魚屋っぽい雰囲気がする。
黒っぽいエプロンを着せて、頭に魚〇って書いた鉢巻をつけてやりたい。

「…でして、…だったのです。」

あっ、妄想に集中しすぎてて話聞いてなかったわ。
まぁいいわ。

「…あなたにはこの領の領主になってもらいたいのです。」

は?何を言ってるの?
ちゃんと順を追って説明しなさいよ。
あっ、私が聞いてなかっただけか。

「今の領主は、私たちの生活のことを考えてくれません。
厳しすぎる税と不作で小麦が高騰し、私たちはパンを買うことも出来ないのです。」

貧しくてパンが買えない?
これってあのセリフを言えってこと?
嫌よ。絶対言ってあげないわよ!

そう思った瞬間、急に時間の流れが変化する。
男の動きはスローになり、すぐにぴたっと止まった。
私を除いて時間がストップしてしまったのだ。
その後、毎度毎度の選択肢が現れた。

絶対来ると思ってたわ!あなたワンパターンなのよ!

選択肢にはこう書かれていた。

1.パンが無ければブリオッシュを食べればいいじゃない!
2.パンが無ければ自分で作ればいいじゃない!
3.パンが無ければ米を食べればいいじゃない!

1.はっ、やっぱり出たわねブリオッシュ。そんな高級菓子、私もこの世界では食べたことが無いわ!

2.あなた馬鹿にしてるの?パンの材料が無いって言ってるじゃない。

3.米?米なんてあるの?私はまだこの国では見たことがないわ!
でもあったらこの問題が解決しそうね。ヴェネパール王国に似たようなものはあったけど、米ではないし。

私は3.の米を食べればが気になった。
まさか、この世界に無いものを選択肢が言わないわよね。
そこまで空気の読めない駄女神じゃないはず。でも、これってフラグ?

私はわずかな希望を持って3を選択。
選択すると、時間が再び動き出した。

「パンが無ければ米を食べればいいじゃない!」
私は集まった群衆の前で、米のことを言ってのける。
彼らはポカーンとした顔で私の顔を見ている。予想通りだ。

「メリー様、その『コメ』って何でしょうか?そんな食べ物?見たことも聞いたこともないんですが…?」
タンクトップ男が、恐る恐る私に尋ねる。

やっぱり、この世界には米が無いのね…。
どうしよう…勢いで選んでしまったわ。

「お嬢様それはこれのことですね?」
私の背後からオットーの声が聞こえる。

振り返ると木製の台に乗ったオットーが、片方の腰に手を当てもう一方の手を天高く振り上げている。
その手に握りしめているのは、稲のように見える。
ただその登場の仕方が、昭和のヒーローだ。
その木製の台はどこから持ってきたの?

「こんなこともあろうかと、お嬢様が言うコメを用意していました。」
オットー、あなたどんなことがあると予想していたの?
それにその稲。どこから持ってきたのよ。
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