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第5章 内戦編

第49話 えっ没落しましたの?

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「メイドカフェ悪役令嬢」を募集すると、集まった応募者の中にかつての使用人であるシェフのレオとお母様付きのメイドであるマルブリットがいた。

えっ、一体どういうこと?
アンポワネット家で働いていたんじゃないの?

ヴェネパール王国に移り住んだ当初は、ほぼ毎月母もしくは父から手紙が届いていた。
しかし、徐々とその手紙は減り、ここ数か月ほど手紙のやり取りはしていなかった。

もしかしてアンポワネット家に何かがあったの?
私はいても立ってもいられなくなり、レオとマルブリットに応募願書に書かれた連絡先に手紙を書いた。


・・・・・・・・・・・


数日後、私の家にレオとマルブリットが訪れた。
レオとマルブリットは最後に接した1年前よりも著しく痩せ、疲れているような印象を受けた。

「お嬢様…」
マルブリットは私の顔を見るとすぐに大粒の涙を流し始め、その場に座り込んでしまった。
レオも私の顔を見るなりその場に跪き、「おおおっ…」とうめき声をあげながら涙を必死でこらえているようだった。

「マルプリット…」
彼女の親友であるマーサも声が出ない。親友の変わり果てた姿に、ただただ驚いていたのだ。

私は2人の肩を後ろから抱きながら2人を立たせ、そのままリビングへと案内した。


・・・・・・・・・・


ソファーに座る彼らに、オットーはアイゼンベルク産のダージリンをサーブすると、ダージリンのフローラルな香りが部屋中に広がった。
お茶請けには試作中の紅茶クッキー。
紅茶を飲む2人の表情が若干明るくなったように感じられた。

「それで、あなたたちはなぜこんなところにいるの?」
私は前置きを一切置かず、いきなり核心から迫った。

私の言葉にビクッとする2人。
「ゴホッ、ゴホッ」
レオは紅茶が気管に入ったのかむせ始め、マルプリットは口からボロボロとクッキーがこぼれた。

「お、お嬢様、落ち着いてき、聞いてください。」
マルブリットはクッキーを口に含んだままで話しかける。

落ち着くのはまずあなたね。口に物が入ったまましゃべってはいけませんって教わらなかった?

「実はアイゼンベルク家は没落してしまったんです!」

えっ、没落?

「お嬢様が逃げだ…、お隠れになって以来、アイゼンベルク陛下も体調を崩し床に臥せてしまわれました。
そのため、現在王妃様が陛下の代りに公務を行われていますが、元々政治には関わってこなかった方なので上手くはいっていないようです。
そこで王太子殿下であるウイリアム殿下と、ヘンリー殿下が次期国王陛下候補として正式に認定されました。」

ヘンリー殿下、懐かしいわね。私が踏んづけた以来かしら。

「お二人には政治の要職が与えられ、2人の政治力や統率力が試されています。
ただ、2人はとても仲が悪いんです。」

えっ、あの2人いつも仲が良かったわよ?何かの間違いじゃなくて?

「お二人は事あるごとに対立し始め、議会でも激しい口論が繰り広げられているようです。」

へー、あの2人が。変われば変わるものね。

「2人のどちらを国王に擁立するかで貴族が2つに分かれ、完璧主義のウイリアム殿下派と実行力のあるヘンリー殿下派が対立するようになりました。」

よくあるお家騒動にまで発展したのね。昔そんなドラマを観たことがあるわ。
それでどうして私の家は没落したの?

「旦那様はどちらの派閥につかず、中立を保っていました。
そのためお互いの派閥から何度も勧誘や抗議の使者が現れたり、逆に嫌がらせを受けることもありました。」

まるで子供のけんかね…。
でもそれくらいでは没落なんてしないわよね?
そもそもの原因はなんだったの?

「アンポワネット家が没落したのは、お嬢様を守るためだったんです。」

えっ私?
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