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68.ボルドーの軍部

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「みんな……」

サーシャは眠りながらうなされていた。
突然街を襲われて、庇護していた女たちも家族も殺されたのだ。
サーシャも強がってはいるが、そうとうな恐怖だった事は聞くまでもなかった。

慰めのつもりで頬を触れると、サーシャは俺の手を掴むように手を置いた。

眠っているのに安心したかのような顔に変わっていく。

自分用のベッドも作ってあるが、サーシャは俺の手を離そうとはしてくれなく、しばらく頬に触れたままにしていた。


だが、突然サーシャはムクっと起き上がった。


「……トイレ」

「起きたか……悪いがトイレは外だな」

「仕方ないわね……」

頬に触れた俺の手を振りほどき、洞窟の出口へと歩き始めた。

闇属性の隠蔽を使っている事は流石にいえず、隠蔽を解いた。

「ねぇ、レオ」
「どうした?」
「ついてきて」
「は?」
「いや、なんでもないわ。」

「サーシャ!」
「なに??」

振り返るのが早かったから、何か期待したのかとも思うが……

「服くらい来てでたらどうだ?」

キャミソールを渡すと、少しムスッとした表情でキャミソールを着て出ていった。

怖いから着いてきて欲しいのか?

「ついて行くぞ?」
「だ...大丈夫よ。覗かれても困るし」

たしかに、女の小便を見ようとするほど変態では無い。

風呂でも作ってやって待つとするか。



5分ほどで風呂は完成した。
だが、サーシャは戻ってきていない。

「もしかして、何かあったのか?」

俺は洞窟を出て魔力探知を行った。

数十メートルは慣れたところにサーシャの魔力を感じた。
ただ、この辺りに無数の人間がいる事も探知した為、サーシャの元に向かった。


「レオ?」
「大丈夫か?」
「うん、ボルドーの兵士達がこの辺りまできてるの」
「生きてたのか!?」
「でも、様子がおかしい。その中にペイジンの兵士も混ざってる……」


なるほど……
アルヴィン兄上はボルドーの軍部を掌握していたってことか。
抵抗する者を駆逐する為にボルドーの兵を使って見回ってる。

そんな所だろう。

「やり過ごそうと思って動けなかったのよ」
「なるほどな。とりあえず戻るぞ!」
「え、うん」

サーシャを脇に抱えると、めっちゃ睨んできた

「どうした?」
「ちょっと……雑!」
「なんだよ」
「ちゃんと抱っこしなさいよ」

抱えた方が動きやすいんだが、お姫様抱っこをすると、サーシャは力強くしがみついてきた。

何となくだが、軍部を掌握されていた事が悔しかったから、力強くしがみついてるのだろうと思い、無言で洞窟まで戻った。

入口にはサーシャにバレないように隠蔽の魔法を使った。

「あれ?レオ……さっきまでこんなに湿気がすごかった?」
「あぁ。風呂を作ったんだ。汗をかいたからな」

「えっ……?お風呂……??」

サーシャの目が輝いている。
この世界の女はお風呂が好きらしい。
城を出てわかったが、貴族やククルのような一部のお金を持った奴らしか家に風呂は無いようだ。



「水脈を発見したからな。先に入ってもいいぞ?」
「いいの?まさか、こんな所でお風呂に入れるとは思わなかった!」

アイテムボックスからタオルと石鹸を渡すと嬉しそうにお風呂へと向かっていった。
もちろん、水脈なんてウソだ。
風呂を沸かすための火属性と土属性という事にしておくと、複数属性持ちとは気付かれないだろう。

もちろん、壁を作ってるから見えないようにしているし、お湯も一定の温度にしてる。
お風呂とは別にお湯貯めも作ったから身体を洗うには十分なお湯がある。


「レオ!いる?」
「あぁ、いるぞ」

不安なのか、定期的に声を掛けてくるんだが……

そんなやり取りを何度も繰り返し、サーシャが上がってきた。


「ありがとう、助かったわ」
「おまえ、タオル巻いて出てくんな!服を着ろよ」
「服を洗ったのよ。仕方ないじゃない。」


たしかに風呂場には服や下着が干されていた。
俺が風呂からあがると、サーシャはタオルを畳んで布団の中に入っている。


流石に俺もそこまで貞操なしではない。
その日は我慢して俺も眠りについた。


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