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16.レオンハルトの出発

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1人の時間もたまには悪くない。
そう思うのは、思春期に差し掛かってきているからなのかもしれない。

孤児院で育った時はこの年頃の時はかまって欲しくて、先生を困らせたりしていた。
1種の反抗期だったのかもしれない。

1人でいることも悪くないと思うのは1種の反抗期なのかもしれないが、父上は絶対的な存在。
セリシアは亡くなっている。
ソフィア姉さんは嫁いでしまった。

だが。
そんな時間は少ない。
ドアがノックされて、お盆を持った女性が入ってきた。

「レオ、ケーキを作ったから食べる?」
「うん、ありがとうアンナお義母さん」

たまにお菓子を作ってくれる身近な存在になったアンナお義母さん。

身重のソフィア姉さんの助けをする為にアンナお義母さんも忙しいのだが、それでも俺の事を目にかけてくれている。
そんな人に反抗なんて出来るわけがない。

「アンナ様。私、紅茶を入れますね」
「ありがとうエレナ。貴女の分もちゃんと作ってるわよ」
「ありがとうございます!」

「いや、なんでエレナがいるんだよ?」
「レオ様が寂しいかと思って来てみたらアンナ様がお部屋に入るのが見えたので。」
「いつもレオの様子を見に来てくれてありがとうねエレナ。レオったら、長年侍女を勤めていたカミラが結婚していなくなってから、侍女を置こうとしなくて困ってたのよ」

「第3騎士隊が侍女の役割をしてくれてるから。新しい侍女なんていらないでしょ」
「貴方は皇子なのよ?」
「所詮、能力のない要らない皇子なんだよ」
「そんな事ないわよ?セリシアだって、ソフィアだって。私にとっても大切な家族なのよ?エレナだって気にしてくれてるじゃない」
「私は...レオ様に見つけて頂いて、今がありますから。お世話をする事は当然です」
「あら?普通、女の子は男の子とお風呂に一緒に入ったりしないわよ?」
「え?マリベルママもソフィア様もレオ様は特別だって……」
「レオとは仲良くしてちょうだいね?とっても優しい子なの。ちょっと甘えん坊さんだけどね?」

「アンナお義母さん……」

「あら、ごめんなさい。私はそろそろソフィアの所に行くわね。エレナ、宜しくね」
「はい!」

ケーキを食べ終えても、エレナは俺の部屋に居座ってる。
魔術書を読んでるんだが、自分の部屋で読めといいたくなるけど……

「レオ様、この魔術書には魔術式が書かれているんです。魔術式には魔力が流れているから魔力が尽きたら消えてしまうのですが、瞬間的に魔力を発動させる事って出来ないんでしょうか?」

「どうゆうことだ?」

「例えば、この前のワイルドボアは強靭なおでこと角で攻撃します。レオ様のようにデタラメに倒せる人って少なく、どうしても攻撃を躱す必要があるんです。なので、魔術式を踏んだらドカンってなる物ってつくれないんでしょうか?」

「要は設置型の魔術式か。魔力を放出させないようにする必要があるな。」

「はい、その様にすると冒険者になった国民の助けになるんじゃないかと思って……」
「なるほどな……調べてみるか」
「はいっ!」

その日は遅くまでエレナが俺の部屋にいた。

そして

「マリベル何やってる?」
「エレナが帰ってこないので様子を見に来ました」
「見ての通り、俺のベッドを占拠して寝てるぞ」
「レオンハルト様もご一緒に寝ては?」
「いや、まぁ...マリベルはどうするんだよ?」
「私は警護を……」
「いや、警護はいいから、エレナと一緒に……」

帰れよ。と言いたかった

「一緒に寝ても良いのですね!ありがとうございます!では、私とエレナでレオンハルト様を挟みましょう」

そう言って、常人には見えないスピードで服を脱いでベッドに入った。

「レオンハルト様もお入りください」
「おい、」
「ベッドの横に立って……私にも白くて苦い物を?」

エレナの野郎……黒歴史をマリベルにも言いやがったな!

「いや、それは……」
「なら、お入りください!」

結局、2人に挟まれて眠ることになった。


エレナは魔術式の研究を理由に俺の部屋にくるようになった。

そして、それから3年。
俺とエレナの成人の儀が行われた。

ソフィア姉さんの時のような挨拶はなく、教会で父上やアンナお義母さん、ソフィア姉さんに見守られて祈りを捧げた。

そして……

「レオンハルトよ、お前も成人になったのだ。皇族としての責務を果たすため、お前も世間を知る必要がある。帝位争いは街の復興がメインで行われている。危険は少ない。国内を見て回るのだ」


父上の皇帝としての言葉。

俺に皇族としての指示を出す事は初めてかもしれない。

いや、これは自由になるチャンスか?

「かしこまりました。父上」
「ふむ。では、3日後に旅立つように手筈をとっておく。」


3日?

そんなに待つ必要もない。
これは自由になるチャンスだ。

俺はソフィア姉さんと姉さんに手を繋がれている姪っ子のフィリスを眺めてからその日の内に帝都を出ることにした。



その翌日。
部屋に来たエレナはレオンハルトがいない事に気が付きマリベルへ報告をした。

本来、同行する予定だった近衛騎士団第2騎士隊の面々も準備を始めていたが、同行から捜索へと命令が変更されていた。

そして、魔法師団の部屋

「エレナ。お前もレオンハルト様の捜索に向かいなさい。合流したらそのまま同行しなさい。」
「マリベルママ……でも魔法師団が……」
「魔法師団は大丈夫よ?レオは……弟は寂しがり屋だからエレナも傍についていてあげて?」
「わかりました、ソフィア様」
「そうね...西。レオは西に向かったわ」
「わかるのですか?」
「姉の直感かしらね?」

それを聞いたマリベルは。

「エレナ西に向かいなさい。合流しても迷惑をおかけしないようにね」
「大丈夫……私は迷惑をかけないから」
「エレナは魔法とレオンハルト様のこと以外だと抜けてるから心配だよ」
「エレナは大丈夫よ、マリベルこそ過保護なんじゃない?...まっ、エレナ。弟をよろしくね」

こうして、金髪の美少女魔導士のエレナはレオンハルトを追っていくのだった。

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