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第3章
第12夜 初恋銀河網(3)
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しばらく進むと、薄明かりが見えてきた。その光は、まるで希望の象徴のように思えた。
「先輩、出口です」
俺は小声で告げた。
「ええ、見えるわ」
先輩の声に安堵が混じる。
俺たちは慎重に近づき、換気口のカバーを静かに外した。外は建物の裏手のようだ。人気はなさそうだった。夜の闇が、今は味方のように感じられる。
「降りましょう」
先輩が先、俺が後に続く。地面に降りた瞬間、現実感が戻る。冷たい夜気。逃げ出した。安堵と新たな不安が押し寄せる。
突然、遠くで叫び声。
「あそこだ! 逃がすな!」
「先輩、急ぎましょう!」
俺たちは手を取り合って走り出した。
息を切らし走りながら、思いが渦巻く。先輩を守る。世界を救う。両立できるのか。でも、俺にできることがある。その思いが、疲れた体を奮い立たせる。
「24時間……」
心の中で呟く。
「24時間で、奇跡を起こす」
その言葉が、決意に変わる。
暗い路地を抜け、広い通りに出た。そこには人々の姿があり、日常の喧騒が聞こえてくる。これが地球の風景じゃないなんて信じられるか? 目眩がして、何度も目をこすった。先輩の話が正しければ、俺たちの居るこの場所は系外惑星〈永遠の眠り〉。その平和そのものの光景が、さっきまでの緊迫した状況と対照的で、現実感を失いそうになる。俺たちはその中に紛れ込むように歩を進めた。
街灯の光が先輩の顔を照らす。その表情には不安と決意が入り混じっていた。俺は思わず先輩の手を強く握りしめた。
「先輩、どこへ行けば」
自分の冷静な声に驚く。
「そうね……蛍くんは、もう分かってるでしょ?」
先輩が微笑んだ。その笑顔に、俺は全てを賭ける覚悟を決めた。たとえ世界が敵に回っても、この笑顔を守り抜く。そう心に誓った。
手を取り合い、未知の冒険へ。4光年先の星の命運はどうでもいい。いま手を握る君を守りたい。たった、それだけのこと。それだけのことを賭けた24時間が始まったのだ。
街の喧騒に紛れ、新たな希望へ向かう。周りの人々は何も知らない。その無知が羨ましく、同時に孤独を感じる。
この先に待っているのは、困難か、それとも奇跡か。それはまだ分からない。でも、俺には確信があった。先輩と一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。そう信じて、俺たちは歩み続けた。
夜空を見上げると、星々が瞬いていた。その光は、遥か彼方の異星文明からのメッセージのようにも思えた。俺たちの戦いは、地球とこの星だけでなく、宇宙全体の未来を左右するのかもしれない。その思いが、俺の中で新たな使命感となって燃え上がる。
「行こう、先輩」
俺が握る手に力を込めると先輩がはにかんだ笑顔でうなずいた。目的地はひとつ。俺たちは再び足を速めた。
「先輩、出口です」
俺は小声で告げた。
「ええ、見えるわ」
先輩の声に安堵が混じる。
俺たちは慎重に近づき、換気口のカバーを静かに外した。外は建物の裏手のようだ。人気はなさそうだった。夜の闇が、今は味方のように感じられる。
「降りましょう」
先輩が先、俺が後に続く。地面に降りた瞬間、現実感が戻る。冷たい夜気。逃げ出した。安堵と新たな不安が押し寄せる。
突然、遠くで叫び声。
「あそこだ! 逃がすな!」
「先輩、急ぎましょう!」
俺たちは手を取り合って走り出した。
息を切らし走りながら、思いが渦巻く。先輩を守る。世界を救う。両立できるのか。でも、俺にできることがある。その思いが、疲れた体を奮い立たせる。
「24時間……」
心の中で呟く。
「24時間で、奇跡を起こす」
その言葉が、決意に変わる。
暗い路地を抜け、広い通りに出た。そこには人々の姿があり、日常の喧騒が聞こえてくる。これが地球の風景じゃないなんて信じられるか? 目眩がして、何度も目をこすった。先輩の話が正しければ、俺たちの居るこの場所は系外惑星〈永遠の眠り〉。その平和そのものの光景が、さっきまでの緊迫した状況と対照的で、現実感を失いそうになる。俺たちはその中に紛れ込むように歩を進めた。
街灯の光が先輩の顔を照らす。その表情には不安と決意が入り混じっていた。俺は思わず先輩の手を強く握りしめた。
「先輩、どこへ行けば」
自分の冷静な声に驚く。
「そうね……蛍くんは、もう分かってるでしょ?」
先輩が微笑んだ。その笑顔に、俺は全てを賭ける覚悟を決めた。たとえ世界が敵に回っても、この笑顔を守り抜く。そう心に誓った。
手を取り合い、未知の冒険へ。4光年先の星の命運はどうでもいい。いま手を握る君を守りたい。たった、それだけのこと。それだけのことを賭けた24時間が始まったのだ。
街の喧騒に紛れ、新たな希望へ向かう。周りの人々は何も知らない。その無知が羨ましく、同時に孤独を感じる。
この先に待っているのは、困難か、それとも奇跡か。それはまだ分からない。でも、俺には確信があった。先輩と一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。そう信じて、俺たちは歩み続けた。
夜空を見上げると、星々が瞬いていた。その光は、遥か彼方の異星文明からのメッセージのようにも思えた。俺たちの戦いは、地球とこの星だけでなく、宇宙全体の未来を左右するのかもしれない。その思いが、俺の中で新たな使命感となって燃え上がる。
「行こう、先輩」
俺が握る手に力を込めると先輩がはにかんだ笑顔でうなずいた。目的地はひとつ。俺たちは再び足を速めた。
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