6 / 50
第1章
第3夜 朝行寝台車(2)
しおりを挟む 後日、百家神社の宮司とお兄さんのお父さんが今後の話をするという話を聞いた。
宮司さんは百家くんのお祖父ちゃんだ。宮司ってお宮の代表者の事らしい。
彗煉寺ではお兄さんとしばらく話をして、時間になったので帰ることを伝えると、
「あの、君は携帯電話持ってるの?」
「うん、持ってるよ。アドレス交換する?」
「出来たら、そうしてもらえないかと思って」
「いいよ、家族以外でアドレス交換するのはこれで二人目」
私の言葉にクッと笑うと、お兄さんはいぶし銀のような渋い銀色の薄い二つ折りの携帯を取り出した。どっかの携帯会社が限定販売で出していたやつに似てる。
アドレスを交換して携帯をポケットに入れると、その上を大切そうに手で押さえて私を正面から見た。
「ありがとう。今日は会えてよかった」
「私も会えて嬉しかった。じゃあね」
手を振って別れる。
待ち合わせの場所に歩いて行く途中、お母さんとお祖父ちゃんも丁度用事が終わって本堂から出た所だったので声をかける。
「おお、麻美、暑いのにどこにおったんかの。いや~今日は暑いのお」
お祖父ちゃんは首に下げたタオルで顔を拭いている。
「えっと、知り合いに会ったから木陰で話をしてたの」
「知り合い?珍しいのお、アルバイトの道の駅の人か?」
「うん」
「本堂の中は涼しかったし、和菓子とお茶も頂いたよ、麻美も一緒にくれば良かったねって話てたの」
お母さんは帽子を被りながらそう言った。
「え~いいなあ。喉乾いたから自販でジュース買って車に乗るね」
「そうしなさい。ほら、そこの休憩所の右に置いてあるわよ」
緑茶のペットボトルを購入して飲みながら家に帰った。
家に帰ってから、お兄さんから『今日は話を聞いてくれてありがとう』というめメールがきたので。私は『会えて良かった。色々教えてくれてありがとう』と返事を返した。
それから百家くんにもお兄さんに彗煉寺で会った事をメールで知らせると直ぐに電話がかかってきた。
「白狐に東神家の事を注意するように言われたから、祖父ちゃんに東神家の事を相談したんだ。それで祖父ちゃんが動いてくれた。祖父ちゃんも前に向こうにはお祓いを拒否されたけど、ずっと気になってたらしい。この間、東神家に祖父ちゃんが行った時、俺も付いて行ったんだ」
「えっそうなの、どんな感じだった?」
「悪いモノが引き寄せられて来ていた。井戸の障りは家自体に憑いてる感じだな。取り敢えず、外からの邪気は跳ね返し、中の悪いモノは出せない様に護符を貼りつけて、結界石を置いて帰ったけど」
百家くんが先に動いてくれたらしい。頼りになる人だ。お寺でも白狐が私の周りで跳ね回っていたけど、どうやら私がお兄さんに会った事も私が連絡するよりも先に白狐から聞いていたらしい。
白狐はお兄さんが悪いモノに憑かれないように守ってくれているようだ。
「東神家には塙宝も一緒に行った方がいいと白狐が言ってる。来てくれるか?」
「うん、行ってもいいなら行かせてもらうよ。でも、関係者じゃないのに行っても大丈夫かな?」
「白狐はお前は関係者だって言ってるけど、確かに東神家にとっては神社の者じゃないのに来てるのは変に感じるかもしれないから、巫女としてついて来てもらうよ。装束をそれなりにして行けば見た目問題ないだろ。そのつもりだったし」
「え、う、うん?」
正直、そんな事を言われるとも思っていなかったので、ものすごく驚いた。
「今年の年末は巫女さんのアルバイトするんだろ、先に練習出来ていいじゃないか?」
「そんな簡単にいうけど、着付けとか教えてもらえるの?」
「伯母さんに頼んでおくよ。いつもアルバイトの子達にも教えてるから大丈夫。行く前に少し練習すればいいよ。ああ、それに祖父ちゃんが来てくれるならアルバイト代を出すって言ってた」
「えっ、アルバイト代まで貰えるの?」
「そりゃ巫女さんとしてついて来てもらうし、塙宝は俺の神力を上げてくれる相手だから、そのあたりも家で話をしてる」
百家という家がどんな歴史を辿ってきた家なのかよく知らないけど、不思議な力を代々持ち続けてきた一族なのだろうと何となく推測した。でなければ常識から外れたこういう話は普通に受け入れられはしない。
「なんか至れり尽くせりで申し訳ないかんじ」
「お前はちゃんと分かってないけど、俺の貴重な相棒だからな」
「相棒かあ・・・」
「何だよ、そのあんまり嬉しそうじゃない返事は」
「そんなことないよ、聞きなれない響きだから噛み締めてただけ。東神家の事で動いてくれて正直すごく嬉しいし感謝してるよ。ありがとう」
「え、そ、そうか。何だよ、突然。ほんとお前って面白いやつだな」
私がお礼を言うと、百家くんは突然あわあわした。百家くんこそ面白いと思う。
次の日に冷房の効いた部屋で衣装合わせをしようと百家くんが言ってきたので、お母さんには少し早いけど巫女さんのアルバイトの為に着付けを習いに行くと言ったら、コンタクトレンズにしていきなさいと言われた。
ついでに私の適当に切ってある髪の毛をカット用のハサミで揃えてくれた。
「麻美も今度から美容室で髪をちゃんとしてもらおうね。三つ編みもそろそろ卒業かな」
「えっ何で?」
「だってお母さん高校生で三つ編みしてる女の子見たこと無いし、逆にその眼鏡と三つ編み目立ってるよ」
うっと痛い所を突かれた。逆に目立っているとは、それも困る。
「眼鏡はもっと薄いレンズで作れるそうだから今度作りに行こうか、今は可愛い眼鏡もたくさんあるし」
「そんなに私の為に散財しなくていいのに」
「まあっ、娘の為に使わなくていつ使うの?それにその程度は何でもないよ。お母さんにもっと頼ってね」
「・・・ありがとう、お母さん」
そうして、新しい眼鏡は直ぐに作ってもらった。お母さんの行動力は凄いと思う。
眼鏡のレンズは薄く、ちょっとモード系というのか、おしゃれな眼鏡を買ってもらった。眼鏡一つで印象が変わるのでとても驚いた。
前後して百家神社に巫女装束の着付け等を習いに何回か行くことになった。百家くんの伯母さんはとても面白くて優しい人だ。そして、おやつは美味しかった。
宮司さんは百家くんのお祖父ちゃんだ。宮司ってお宮の代表者の事らしい。
彗煉寺ではお兄さんとしばらく話をして、時間になったので帰ることを伝えると、
「あの、君は携帯電話持ってるの?」
「うん、持ってるよ。アドレス交換する?」
「出来たら、そうしてもらえないかと思って」
「いいよ、家族以外でアドレス交換するのはこれで二人目」
私の言葉にクッと笑うと、お兄さんはいぶし銀のような渋い銀色の薄い二つ折りの携帯を取り出した。どっかの携帯会社が限定販売で出していたやつに似てる。
アドレスを交換して携帯をポケットに入れると、その上を大切そうに手で押さえて私を正面から見た。
「ありがとう。今日は会えてよかった」
「私も会えて嬉しかった。じゃあね」
手を振って別れる。
待ち合わせの場所に歩いて行く途中、お母さんとお祖父ちゃんも丁度用事が終わって本堂から出た所だったので声をかける。
「おお、麻美、暑いのにどこにおったんかの。いや~今日は暑いのお」
お祖父ちゃんは首に下げたタオルで顔を拭いている。
「えっと、知り合いに会ったから木陰で話をしてたの」
「知り合い?珍しいのお、アルバイトの道の駅の人か?」
「うん」
「本堂の中は涼しかったし、和菓子とお茶も頂いたよ、麻美も一緒にくれば良かったねって話てたの」
お母さんは帽子を被りながらそう言った。
「え~いいなあ。喉乾いたから自販でジュース買って車に乗るね」
「そうしなさい。ほら、そこの休憩所の右に置いてあるわよ」
緑茶のペットボトルを購入して飲みながら家に帰った。
家に帰ってから、お兄さんから『今日は話を聞いてくれてありがとう』というめメールがきたので。私は『会えて良かった。色々教えてくれてありがとう』と返事を返した。
それから百家くんにもお兄さんに彗煉寺で会った事をメールで知らせると直ぐに電話がかかってきた。
「白狐に東神家の事を注意するように言われたから、祖父ちゃんに東神家の事を相談したんだ。それで祖父ちゃんが動いてくれた。祖父ちゃんも前に向こうにはお祓いを拒否されたけど、ずっと気になってたらしい。この間、東神家に祖父ちゃんが行った時、俺も付いて行ったんだ」
「えっそうなの、どんな感じだった?」
「悪いモノが引き寄せられて来ていた。井戸の障りは家自体に憑いてる感じだな。取り敢えず、外からの邪気は跳ね返し、中の悪いモノは出せない様に護符を貼りつけて、結界石を置いて帰ったけど」
百家くんが先に動いてくれたらしい。頼りになる人だ。お寺でも白狐が私の周りで跳ね回っていたけど、どうやら私がお兄さんに会った事も私が連絡するよりも先に白狐から聞いていたらしい。
白狐はお兄さんが悪いモノに憑かれないように守ってくれているようだ。
「東神家には塙宝も一緒に行った方がいいと白狐が言ってる。来てくれるか?」
「うん、行ってもいいなら行かせてもらうよ。でも、関係者じゃないのに行っても大丈夫かな?」
「白狐はお前は関係者だって言ってるけど、確かに東神家にとっては神社の者じゃないのに来てるのは変に感じるかもしれないから、巫女としてついて来てもらうよ。装束をそれなりにして行けば見た目問題ないだろ。そのつもりだったし」
「え、う、うん?」
正直、そんな事を言われるとも思っていなかったので、ものすごく驚いた。
「今年の年末は巫女さんのアルバイトするんだろ、先に練習出来ていいじゃないか?」
「そんな簡単にいうけど、着付けとか教えてもらえるの?」
「伯母さんに頼んでおくよ。いつもアルバイトの子達にも教えてるから大丈夫。行く前に少し練習すればいいよ。ああ、それに祖父ちゃんが来てくれるならアルバイト代を出すって言ってた」
「えっ、アルバイト代まで貰えるの?」
「そりゃ巫女さんとしてついて来てもらうし、塙宝は俺の神力を上げてくれる相手だから、そのあたりも家で話をしてる」
百家という家がどんな歴史を辿ってきた家なのかよく知らないけど、不思議な力を代々持ち続けてきた一族なのだろうと何となく推測した。でなければ常識から外れたこういう話は普通に受け入れられはしない。
「なんか至れり尽くせりで申し訳ないかんじ」
「お前はちゃんと分かってないけど、俺の貴重な相棒だからな」
「相棒かあ・・・」
「何だよ、そのあんまり嬉しそうじゃない返事は」
「そんなことないよ、聞きなれない響きだから噛み締めてただけ。東神家の事で動いてくれて正直すごく嬉しいし感謝してるよ。ありがとう」
「え、そ、そうか。何だよ、突然。ほんとお前って面白いやつだな」
私がお礼を言うと、百家くんは突然あわあわした。百家くんこそ面白いと思う。
次の日に冷房の効いた部屋で衣装合わせをしようと百家くんが言ってきたので、お母さんには少し早いけど巫女さんのアルバイトの為に着付けを習いに行くと言ったら、コンタクトレンズにしていきなさいと言われた。
ついでに私の適当に切ってある髪の毛をカット用のハサミで揃えてくれた。
「麻美も今度から美容室で髪をちゃんとしてもらおうね。三つ編みもそろそろ卒業かな」
「えっ何で?」
「だってお母さん高校生で三つ編みしてる女の子見たこと無いし、逆にその眼鏡と三つ編み目立ってるよ」
うっと痛い所を突かれた。逆に目立っているとは、それも困る。
「眼鏡はもっと薄いレンズで作れるそうだから今度作りに行こうか、今は可愛い眼鏡もたくさんあるし」
「そんなに私の為に散財しなくていいのに」
「まあっ、娘の為に使わなくていつ使うの?それにその程度は何でもないよ。お母さんにもっと頼ってね」
「・・・ありがとう、お母さん」
そうして、新しい眼鏡は直ぐに作ってもらった。お母さんの行動力は凄いと思う。
眼鏡のレンズは薄く、ちょっとモード系というのか、おしゃれな眼鏡を買ってもらった。眼鏡一つで印象が変わるのでとても驚いた。
前後して百家神社に巫女装束の着付け等を習いに何回か行くことになった。百家くんの伯母さんはとても面白くて優しい人だ。そして、おやつは美味しかった。
26
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
シン・おてんばプロレスの女神たち ~衝撃のO1クライマックス開幕~
ちひろ
青春
おてんばプロレスにゆかりのOGらが大集結。謎の覆面レスラーも加わって、宇宙で一番強い女を決めるべく、天下分け目の一戦が始まった。青春派プロレスノベル『おてんばプロレスの女神たち』の決定版。
Cutie Skip ★
月琴そう🌱*
青春
少年期の友情が破綻してしまった小学生も最後の年。瑞月と恵風はそれぞれに原因を察しながら、自分たちの元を離れた結日を呼び戻すことをしなかった。それまでの男、男、女の三人から男女一対一となり、思春期の繊細な障害を乗り越えて、ふたりは腹心の友という間柄になる。それは一方的に離れて行った結日を、再び振り向かせるほどだった。
自分が置き去りにした後悔を掘り起こし、結日は瑞月とよりを戻そうと企むが、想いが強いあまりそれは少し怪しげな方向へ。
高校生になり、瑞月は恵風に友情とは別の想いを打ち明けるが、それに対して慎重な恵風。学校生活での様々な出会いや出来事が、煮え切らない恵風の気付きとなり瑞月の想いが実る。
学校では瑞月と恵風の微笑ましい関係に嫉妬を膨らます、瑞月のクラスメイトの虹生と旺汰。虹生と旺汰は結日の想いを知り、”自分たちのやり方”で協力を図る。
どんな荒波が自分にぶち当たろうとも、瑞月はへこたれやしない。恵風のそばを離れない。離れてはいけないのだ。なぜなら恵風は人間以外をも恋に落とす強力なフェロモンの持ち主であると、自身が身を持って気付いてしまったからである。恵風の幸せ、そして自分のためにもその引力には誰も巻き込んではいけない。
一方、恵風の片割れである結日にも、得体の知れないものが備わっているようだ。瑞月との友情を二度と手放そうとしないその執念は、周りが翻弄するほどだ。一度は手放したがそれは幼い頃から育てもの。自分たちの友情を将来の義兄弟関係と位置付け遠慮を知らない。
こどもの頃の風景を練り込んだ、幼なじみの男女、同性の友情と恋愛の風景。
表紙:むにさん
如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
ユキ・almighty
綾羽 ミカ
青春
新宿区の高校に通う益田ユキは、どこから見てもただの優等生だった。
黒髪を綺麗にまとめ、制服の襟元を正し、図書館ではいつも詩集や古典文学を読んでいる。
クラスメートからは「おしとやかで物静かな子」と評され、教師たちからも模範的な生徒として目をかけられていた。
しかし、それは彼女の一面でしかない。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる