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128★世はコトもなし

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 冒険者ギルトから出たシア達は、有言実行とばかりに色々な屋台を渡り歩いて、今日の夕食をゲットして帰って来た。

 借りている宿屋の室内に入ると、透過術で姿を消してシアの周りで楽しそうに遊んでいた氷神狼《フェンリル》っ子のフジに、一角天馬《ユニコーンペガサス》っ子のミスティーと、朱雀《すざく》っ子のリムが、姿を現してシアに話しかける。

 「まま、フジがもう少し大きくなったら、従魔にしてぇ~………」

 「あっそれはイイ考えですね
  ミスティーは、大きくなったマスターを乗せて歩きたいです
  移動には、是非私の背中を………」 

 「だったら、ワタシは上空からの探索をしましょう
  早く、このちっさい姿を脱出して、一緒に堂々と行動したいです
  従魔って、どうしたらなれますかねぇ?」

 そんな3人?の発言に、ジオンは顎を撫でて言う。

 「確かに、あの冒険者ギルドの中に、チラホラといたな
  従魔とか呼ばれる、使役魔獣が………ただ…アレはなぁ………」

 首輪というカタチで隷属の《契約》で縛られている姿を思い出し、ジオンはちょっと微妙な表情になる。

 「いいんじゃない、それでも
  どうせ、人族が持つ魔術で縛れるような存在じゃないんだから
  最初だけ、カタチを受け入れたようにして………

  面倒になったら、今日みたいに威圧や覇気で押し潰して
  相手にことなかれにさせればイイじゃぁ~ん

  平気平気、みんなもママと一緒に行動したいもんね
  いちいち姿を消してなんて、面倒だからさぁ………」

 と、ライムならたっぷりと躊躇って、隠す方に走るコトを、常識を無視して驀進する方向に話しを進める。
 そして、常識という意味では、ライムとどっこいのシアは、自重という言葉をポイッとしたので、フリードの言葉に頷く。

 実は、この中で1番の常識人はジオンだったりする。
 が、それでも、シアが望むなら、その希望を第1にと思い行動するジオンだったりする。
 所詮は惚れた弱みである………それが、たとえ無自覚であっても、シアについつい甘くなるのだ。

 「そうねぇ~………とは言っても、みんながもう少し成長したらね
  まだまだ、私も体調が万全ってわけじゃないしね

  明日は、冒険者ギルドで薬草や霊薬草の採取依頼受けた後
  あの神殿に行って、癒しの光りを浴びようと思っているの

  流石に、長年毒を盛られ続けた栄養失調の身体は簡単に治癒しないわ
  完治するには、それ相応の時間がかかるもの

  仮にパーフェクトヒールをかけたとしても、今の私は直らないわ
  完治するだけの土台が、この身体にはないから………

  状態は良くなっても、完治にはほど遠いのは判り切っているし
  それに、あそこは探索すればしただけ、なんか出てきそうだし」

 そう言いながら、シアは夕食にと買い込んだ料理と飲み物をテーブルへと置いて行く。
 ずっとシュリングで抱えていたサファイアは、寝籠に降ろされて、ちょっとだけ不服そうにしたが、シアが果物の果汁をスプーンで口に運ぶとニコニコしていた。

 性別も排泄器官も無いが、食べ物を口にするコトは出来るようで、楽しそうにその味を楽しんでいた。
 3種の果実の汁を楽しんだサファイアは、きゃっきゃっと笑い声を響かせる。

 そして、その上機嫌のセイか、寝籠がふよふよと中空を漂う。
 その寝籠が漂うのを見たシアは、昔懐かしのテレビアニメを思い出す。

 (あらあら、まるであのサ○ボーク009の赤ちゃんみたいね
  サファイアってば………上機嫌なのね)

 と、危機感のひとカケラも無い感想を持つ。
 そんなふわふわと浮き上がって移動するサファイアの寝籠の両側には、ミスティーとリムが寄り添っていた。
 フジはちょっと離れたところか、観察していたりする。

 浮かぶ寝籠を問題にしないシアに、ジオンは何も言わず、フリードはふ~んという程度で、気にもしなかったのは確かな事実だった。










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